日本、ベトナムとのサイバー防衛協力に乗り出すことで中国を牽制

2021/12/15
更新: 2021/12/15

ますます攻撃性を増す中国の主張に対する懸念が高まる中、日本とベトナムは速やかな軍事関係強化を目的として、2021年11月下旬に「サイバーセキュリティ分野での協力に関する覚書」を締結した。

記者会見に臨んだ岸信夫防衛相は、特定の国を名指しことはなかったものの、暗に中国を指しながら、「サイバーセキュリティ分野での協力に関する覚書」は既存の国際秩序と相容れないインド太平洋地域での活動に対する「強い切迫感」に対処することを目的としたものと説明し、ベトナムのファン・バン・ザン(Phan Van Giang)国防相との日越防衛相会談では「新たな段階に入った日越防衛協力」の下で取り組みを進めていくことで一致したと述べている。 

近年、オーストラリアや米国などの提携諸国とのサイバー防衛協力の強化に注力している日本は、2021年4月にはNATO(北大西洋条約機構)サイバー防衛協力センター(CCDCOE)が主催するサイバー防衛演習「ロックド・シールズ2021」に初参加した。また、インドネシアやシンガポールとのサイバーセキュリティ交渉も実施している。 

日本防衛省が発表したところでは、中国の行為が同地域でより攻撃的になるにつれ、サイバー攻撃は中国による安保脅威の高まりの一要因となっている。これは米国や地域の他の同盟諸国に共通した懸念でもある。 

中国では釣魚群島と呼ばれる尖閣諸島は日本が実効支配しているが、その領有権を主張する中国の海警局船舶が諸島周辺への侵入を繰り返していることで、日本政府は度々抗議を申し立てている。

日本当局によると、中国船舶は日本領海に当たる同諸島周辺に日常的に侵入して時には日本漁船を脅かしている。 岸防衛相の発言によると、日越防衛相会談で同防衛相は、日本の海域と空域の近くにおける中国人民解放軍空軍とロシア航空宇宙軍による共同軍事活動に対する懸念にも言及している。 

同防衛相の説明では、最近、中国のH-6大型爆撃機2機とロシアのTu-95戦略爆撃機2機が日本海から東シナ海、更には太平洋にかけて共同飛行を実施したことで、航空自衛隊(JASDF)が戦闘機をスクランブル(緊急発進)するという事態が発生した。 同防衛相の説明によると、2019年にも2度中露両国の戦闘機が日本近辺を長距離飛行している。

岸防衛相は会談の席で、東シナ海と南シナ海で攻撃性を増す中国の活動に言及し、「力による一方的な現状変更の試みにより緊張を高める」行為に対して日本が強く反対すると表明した。 同防衛相はまた、日本は「自由で民主的な」インド太平洋地域を保護し、米国や「志を同じくして普遍的な価値観を共有する他諸国」と協力していくことに注力すると述べている。 

今回の「サイバーセキュリティ分野での協力に関する覚書」が調印される2ヵ月前には、「日越防衛装備品・技術移転協定」が締結されている。これにより、日本がベトナムに防衛機器や技術を移転できるようになる。装備や機器の移転の詳細は現在協議中であるが、これには海軍艦艇も含まれると考えられている。 

ベトナムは日本政府が防衛装備品・技術移転協定を締結した11番目の国となる。これは日本が同時に自国の防衛産業も推進しようとしていることの表れである。また、長年の同盟国である米国以外とも軍事協力体制を確立することを目指す日本はオーストラリア、インドネシア、フィリピン、英国とも同様の協定を締結している。 

Indo-Pacific Defence Forum