オーストラリア議会上院は1日、深刻な人権侵害を犯した個人や組織に制裁を課す人権侵害制裁法案を全会一致で可決した。2日には下院に送付して審議を行い、年内の施行を目指す。新疆ウイグル自治区などで人権侵害を繰り返す中国共産党を念頭に置いたものと見られている。
人権侵害制裁法案は国際的に「マグニツキー法」とも呼ばれている。同法案が可決されれば、オーストラリア政府は人権侵害を行った個人や団体の資産を凍結し、入国を拒否することが可能となる。同法対象はサイバー攻撃を行う者や海外の汚職高官も含まれる。
同国で「マグニツキー法」の議論が加速したのは今年8月、ペイン外相が米国やEUと足並みをそろえると発言してからだ。当時、中国共産党による新疆ウイグル自治区での人権侵害に対し、法整備を終えていた米国が英国とEUと共に制裁措置を発動させた。
「マグニツキー法」の制定のため、オーストラリアは国内法の改正を行い、政府が制裁を課すことができる範囲を拡大させた。この法案が可決されれば、オーストラリアの制裁法体制は、米国、英国、欧州連合(EU)、カナダなど他の民主主義国と同等の効力を揃えることになる。
ペイン外相は、同法制定で「オーストラリアが国際的な懸念事項について同盟国と同じような行動を取ることができる」と述べた。そして「私たちの経済システムから、悪質な行為に加担した者やその受益者を切り離すことは必要不可欠だ」と強調した。
米国で「マグニツキー法」の成立を推進した実業家のビル・ブラウダー氏は1日、「オーストラリアにとって歴史的な一日となった。人権侵害者や汚職政治家に対する締め付けはさらに強くなった」とツイッター上でコメントした。
国際人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」の現地責任者エレーヌ・ピアソン氏は声明のなかで、「マグニツキー法」の可決は「重要なステップ」であり、「深刻な人権侵害を行うことの代償を引き上げた」と述べた。
※表記を一部修正いたしました。
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