台湾統一への野心を高める中国共産党にとって、世界をリードする台湾の半導体事業が統一への更なる動機付けになる可能性がある。米調査会社ICインサイツが13日、世界の半導体市場を分析する報告の中で指摘した。中国は、統一で社会的混乱による短期的な損害を差し引いても、優れた半導体事業を支配するという長期的な利益を選ぶ可能性があるとの見解だ。
台湾には、半導体の受託生産世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)をはじめ、世界最大かつ最先端の半導体事業が揃う。長引くウイルス流行による世界的な半導体不足は、台湾の経済的・戦略的重要性を際立たせている。
ICインサイツの調査によると、10ナノ(10億分の1)メートル以下の半導体を製造できるのは、台湾と韓国だけだという。台湾は半導体製造市場の最大シェア(63%)を占め、残りの37%は韓国のサムスンだ。
また、中国と台湾のシェアを合わせると、世界のIC生産能力の約37%を占め、北米の約3倍になる。
そして、台湾のIC(集積回路)生産能力の約80%はファウンドリーに特化している。 台湾のファウンドリー専業はTSMC、UMC、Powerchip、Vanguardなどが揃い、今年中には、世界のファウンドリー専業市場全体の約80%を占めると予測されている。
調査者によると、中国は台湾の持つ世界トップレベルのIC製造能力を非常に羨んでいるという。世界最大の半導体輸入国である中国は、半導体産業のバリューチェーン(価値連鎖)の最下位に位置している。
昨年12月、米国は中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)と国内最大のファウンドリーである中芯国際集成電路製造(SMIC)を取引制限リストに加えた。
ICインサイツによれば、中国には、将来の電子社会の需要に応えられるような先端ICデバイスを製造する能力が不足している。このため、長期的なニーズに応じた半導体事業を獲得するために、手段を選ばず台湾を統一することで、この問題の解決を図る可能性があるという。
10月初め、中国の習近平国家主席は「主権の維持」のために統一を実現すると宣言した。共産党政権は、統一のための武力行使の可能性を排除していない。台湾の蔡英文総統は「全力で阻止する」と対抗姿勢を見せた。
「中国が軍事的手段によって台湾を占領しようとすれば、台湾経済に混乱が生じ、中国経済も大きな打撃を受けるだろう」。しかし、「世界最大規模の最先端IC生産能力を支配下に置くという長期的な利益」のために、中国は短期的な経済的損失を受け入れるかもしれない、とICインサイツは分析する。
TSMCは10月14日、長期的な半導体需要に対応するため、熊本県に2024年に新工場を開設する計画を発表した。同社は、アリゾナ州フェニックス近郊に120億米ドル規模の工場を建設している。米国の技術製品が外国のサプライチェーンに依存するのを軽減できるよう支援するという。
欧州委員会貿易総局長は同じ日に開かれたオンラインの会議で、欧州連合と台湾は価値観を共有する自然なパートナーだと述べ、半導体事業の協力について言及した。欧州委員会は20日、台湾との関係強化を推進する報告書を賛成多数で可決した。
TSMCの株価は15日、第3四半期に予想上回る利益を計上したことにより、3%以上上昇した。
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