世界貿易機関(WTO)は10月20日、第8回目の対中貿易政策審査会合を開催した。WTOが中国の貿易政策を審議するのは2018以降初めて。米国を中心とする加盟国は、中国共産党の公約不履行、国有企業への補助金問題など「競争環境を歪める」産業政策を批判した。
今年は、中国がWTOに加盟してから20周年にあたる。中国政府は相変わらず国際貿易の恩恵を受けるだけで、WTO加盟時の約束を守っていないと懸念されている。
約束を果たせなかった20年
会議では、米国のデビッド・ビスビー在ジュネーブ代理公使が講演を行った。講演原稿は米通商代表部のウェブサイトに掲載されている。
ビスビー氏は冒頭で「2018年に行った対中審査会合において、米国は冒頭の発言で国際貿易システムにおける中国の役割の重要性と、中国(共産党)がもたらすユニークで根本的な課題を率直に指摘した」と述べ、「これらの課題は、今も私たちの前に存在している」と強調した。
「20年前に中国がWTOに加盟した際、WTO加盟国は中国に対し、加盟議定書に基づき、開放的で市場志向の国際貿易システムに反する政策や慣行を恒久的に廃止することを期待していた。その期待が裏切られただけでなく、中国(共産党)は変化の兆しすら見せていない。それどころか、中国政府は、国家主導の非市場的政策や慣行を強化し、米国やその他の地域の労働者や企業に不利益をもたらしている」と批判した。
ビスビー氏は、「中国の貿易体制に対する米国の最も根本的な懸念は、中国(共産党)の産業政策である」と指摘した。
「中国の産業政策は、様々な支援策を通じて、外国の商品やサービス、外国の製造業者やサービス・プロバイダとの競争条件を歪めている。これらの措置には、市場アクセスの制限、投資制限、深刻かつ持続的な過剰生産能力につながる大規模な補助金が含まれている」
「その他の不公正な貿易慣行としては、国有企業やその他の中国企業に対する優遇措置、差別的な規制要件、独自の国家規格、データ制限、不十分な知的財産権保護、サイバー窃盗、競争法の濫用などが挙げられる。中国(共産党)は、これらの手段を用いて、世界市場における支配的な地位を確保し、米国経済に悪影響を与えている」
米政府からの強い圧力があっても、「中国(共産党)は、問題が指摘されればそのやり方を変えることはあっても、基本的な方針を変えない傾向がある。中国での意味のある改革はまだ見えてこない」とビスビー氏は言った。
経済的脅迫
ビスビー氏は会議で、中国(共産党)の「経済的脅迫」という戦略を指摘した。
例えば、WTO加盟国が異議を唱えるなどして中国(共産党)を怒らせた場合、中国(共産党)は経済的影響力を行使し、相手国に「過ちを正す」よう圧力をかける。脅しにはさまざまな形があり、多くのWTO加盟国が中国(共産党)からこの種の脅迫を経験したことがあるという。
ビスビー氏は、「中国の不公正な貿易慣行によって労働者や企業が被害を受けているWTO加盟国は米国だけではない。 私たちが力を合わせ、声を上げることで、健全な競争を可能にする、真に公正な国際貿易の構築ができる」と締めくくった。
日豪からの懸念と指摘
ロイター通信が情報筋の話として伝えたところによると、今回の会合では、他のWTO加盟国も、中国政府に対してより公正な市場競争と透明性実現のための改革推進を求めた。
オーストラリアは、中国の貿易政策がWTOの公約とますます矛盾しているとし、中国が20年前にWTOに加盟した際に与えられた「特別かつ異なる待遇(S&D)」を放棄するよう求めた。
日本は、中国の透明性の欠如について懸念を示し、貿易歪曲措置や国有企業への補助金に対処するよう求めた。
(翻訳編集・王君宜)
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