インドを拠点とする亡命政府の新たな報告書によると、中国の統治によってチベットの人々の生活が改善し、チベットは常に中国に帰属するという同国の主張は現実を歪曲させ歴史的事実を無視しているという。
中国の建国記念日前日に当たる9月30日に発表された亡命政府の報告書は、中国政府が5月に発表した白書「1951年以降のチベット:解放、開発、繁栄(Tibet Since 1951: Liberation Development and Prosperity)」に反論した。
「解放の70年ではなく実際には抑圧と弾圧の70年だ」 と亡命者であるチベットのペンパ・ツェリン(Penpa Tsering)大統領は報告書の発表イベントで述べている。「過去70年間、中国政府はインフラ開発と発展の名の下にチベット国内のチベット人を常に支配してきた」。
さらに、中国は「武力を行使し人々に恐怖を植え付ける圧政」 を確立することによってのみチベットの支配を維持してきたと、亡命政府は 「チベット:占領と抑圧の70年 (Tibet: 70 Years of Occupation and Oppression)」 と題する報告書の中で指摘している。
「現在、安全保障化の増加や監視の強化、開発を口実にすることによりチベット人を統制しようとしており、これらすべてがチベットを中国に統合するための政治的ツールとして使用されている」と、亡命政府は述べている。
チベットにおける中国の統治は、「植民地主義の基本的な特徴をすべて備えている」と亡命政府は指摘する。「他の植民地政権と同様に、中国文化とイデオロギーの優越性と美徳、そして『遅れている他者』としてのチベット人という考えに依存している」。
報告書によると、チベットが常に中国の一部であったという中国政府の主張は、チベットの国家的、精神的指導者であるダライ・ラマと、何世紀も前に中国を征服していたモンゴル帝国と満州帝国の支配者たちとのつながりから来ているにすぎない。
「中国の主張とは裏腹に、チベットは歴史的には中国の一部ではなかったが、1949年から1951年にわたる人民解放軍のチベット侵攻により武力によって占領された。チベットが『解放された』という主張は、チベットに対する不法占拠を合法化することを目的とした口実の一部である」と亡命政府は述べている。
中国は同国の白書において、「チベットの人々は法律に従って国と地域を支配する権利を享受している」とし、中国の統治下でチベットは「社会の調和と安定のおかげで急速かつ持続的な成長を遂げている」と主張している。
しかし、中国は長年にわたりチベットの人々が自らのビジョンとニーズに基づいて自国を発展させる権利と自由を否定してきたという。「占領以来、中国はチベットで略奪を繰り返している。チベットの材木を伐採しチベットの鉱物資源を採掘し、チベットの河川をせき止め、迂回させている」。
亡命政府の主張では、チベット人は中国の支援を喜んでいる少数民族として常に中国政府に感謝の意を表さなければならず、「服従を示さないことは、恩知らずの表れとみなされるだけではなく、強制と再教育で是正される必要のある政治犯罪ともみなされる」。
いっぽう、チベット語を保護し、チベット語の使用を促進しているという中国政府の主張は教育現場で中国語の授業を義務付ける教育政策と矛盾しており、中国語能力のない卒業生は専門職でますます取り残されている。
「中国政府が実施している教育政策は、チベット語の使用を制限するだけでなくチベット人のアイデンティティを根絶することを目的としている」とツェリン氏はいう。
亡命政府の報告書によると、中国がチベットを封建的かつ後進的な統治から 「平和的に解放した」と繰り返す主張は、中国の征服と占領がもたらす暴力と矛盾している。
「現実には中国の台頭は全く平和的なものではない。むしろ暴力的でありチベット、東トルキスタン、南モンゴル、そして現在は香港でも弾圧が強まっている」と亡命政府は述べた。
(Indo-Pacific Defence Forum)
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