インド太平洋の安全保障 【エルドリッヂ氏独占インタビュー】

日本の第100代首相に求められること

2021/09/16
更新: 2021/09/16

迫りくる中国共産党の脅威と、長引く新型コロナウイルス感染症による数々の影響。来るべき選挙を前にして、日本の政治家が解決すべき課題は山積みだ。これらの困難に立ち向かう、日本の第100代首相にはなにが求められているのか。そして専門家が指摘する、政治家選びで絶対に外せないポイントとは。


ーー今年中に総選挙が予定されているが、注目すべき点はあるか。

総選挙では、台湾を支持しているか否かについて、すべての候補者が立場を表明すべきだと考えている。台湾を支持していないと答えた政治家を選ぶべきではない。なぜなら、台湾の有事は日本の有事だ。台湾を支持していない政治家が国会に行けば、その議員は日本を守る意思がないことを対外的に示すことになる。

今回の選挙では、台湾支持の国会議員を増やすべきだと思う。中国の人権問題と宗教弾圧など、それらの問題を批判できる政治家を誕生させなければならない。

ーーなぜ中国にものを言える政治家が重要なのか。

今回の選挙で選ばれた国会議員は、解散がなければ4年の任期がある。この4年間は中国が台湾に対して行動を起こす可能性が最も高い期間だと思う。あくまで私の分析だが、中国は宇宙空間での能力や、宇宙での攻撃手段に非常に力を入れており、人工衛星を破壊する能力を持つに至っていると言われている。いっぽう、米国とその同盟国は人工衛星を防衛する能力を軽視してきた。西側諸国が自国の衛星を防衛するシステムを配備するのは早くても2026年になるため、2026年までが中国によって有利な状態だと言える。

近代戦争は衛星なしでは戦えない。GPS、通信機器は必須だ。人工衛星を破壊しさえすれば、中国は台湾を攻撃できる。防衛システムが配備されていない段階で攻撃すると思う。

中国共産党は台湾をめぐる安全保障体制が不完全なうちに攻撃を仕掛けたいと考えている。台湾は多国間の軍事演習に参加していないし、日米の防災訓練すら参加していない。また、QUAD(日米豪印の戦略的対話)に招かれていない。台湾もいずれは参加できるようになり、一定の抑止力を持つに至るが、抑止力が十分でないうちに中国は攻撃を仕掛けるだろう。その時期こそ、日本の今回の総選挙で選出される国会議員の任期(2025年11月まで)と重なる。台湾を守る意思がない国会議員が選出されれば大変な事態になる。したがって、今回の選挙は極めて重要なのだ。

9月9日、宜蘭の海軍基地で行われた沱江級コルベットの就航式に出席する台湾の蔡英文総統 (Photo by SAM YEH/AFP via Getty Images) 

ーーこの緊張感は日本国内ではあまり感じられない。

中国共産党の脅威を語る者は極端に少ない。中国共産党の衛星破壊攻撃や、電磁パルス攻撃(EMP)、サイバー攻撃を受ければひとたまりもない。見えない、聞こえない、そして行動ができないという三重苦だ。そのため、もし中国共産党が台湾を侵攻すれば、本当の意味の現代戦争になると思う。台湾有事になると世界規模の問題になり、今までになかった次元の話になると思う。

ーー日本の首相に求められていることについて。

このような危機的状況を見据えて、日本の次期首相には5つのことが求められていると思う。

一つ目は、問題を先送りしないこと。日本では先送りすることで問題が消えると思われがちだが、むしろ山積してしまう。先送りしない政治ができる首相でなければならない。

二つ目は、防衛予算を倍増すること。現在の日本の防衛費はGDPの1%だが、それを倍にする必要がある。これは首相の任期内に達成すべき目標だ。私は一気に達成したほうがいいと思うが、できない場合は任期内に徐々に比率を高めなければならない。

日本が防衛費を高めるか否か。このことはアメリカにとって、日本の本気度を試すリトマス試験紙となる。

三つ目は、中国への経済依存を無くすこと。台湾をはじめ、フィリピン、QUADのメンバーであるインドなどを生産地として連携し、サプライチェーンを確保していく。

四つ目は、中国にいうべきことをいうこと。遠慮なく、日本の立場を主張し、必要な場合、行動をとる。

五つ目は、地方創生を行うこと。地方が元気にならなければ、日本も元気になれない。だから地方を忘れてはいけない。むしろ地方が日本の原動力であると言える。地方創生には台湾を巻き込み、姉妹都市や貿易を発展すれば、日本と台湾の関係強化にもつながる。

(聞き手・王文亮)


ロバート・D・エルドリッヂ

1968年米国ニュージャージー州生まれ。政治学博士。米リンチバーグ大学卒業後、神戸大学大学院で日米関係史を研究する。大阪大学大学院准教授(公共政策)を経て、在沖アメリカ海兵隊政治顧問としてトモダチ作戦の立案に携わる。著書は『沖縄問題の起源』(名古屋大学出版会、2003年)など多数。

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。