【独占インタビュー(2/2)】高市早苗氏 大胆にお金を使い成長投資 世界に示す日本の底力

2021/09/04
更新: 2021/09/04

9月後半の自民党総裁選に出馬する考えを示す高市早苗前総務大臣。コロナ禍で傷んだ日本経済の立て直しを図るために、財政出動金融緩和成長戦略といった「3本の矢」を提唱したアベノミクスから、進化版となる「危機管理分野の成長投資」を掲げる。大紀元はこのほど、高市氏に単独インタビューした。日本の保守的価値観を継承する国会議員として定評のある高市氏にその考えの根本を伺った。

日本の力を信じている

ーーコロナ禍もあり、世界情勢は混迷を極めている。いっぽう、日本は成熟した民主主義国家として高く評価されている。今後十年、数十年の発展についてどのようにお考えか。

私は日本と日本人の力を信じている。日本のすばらしさを子供たちにも知ってもらいたい。日本には世界に負けない技術がたくさんある。例えば、産業ロボットは世界一である。工業素材の技術も素晴らしい。電子顕微鏡も世界一である。日本には高い技術力と高度な教育を受けた人材がいるので、日本はまだまだ成長できると思う。

どのような成長をするのかについては、アベノミクスをさらに少し工夫してみたい。アベノミクスは、大胆な金融緩和と機動的な財政出動、そして民間活力を引き出す成長戦略から成り立っていた。私は、三つ目の成長戦略に大胆にお金を掛けたいと考える。大胆な危機管理投資及び成長投資に置き換えたい。

現在、世界全体でデジタル化が急速に進行し、電気消費量が急増している。10年後には電気使用量が現在の30倍になるとの報告もある。そのような情勢において、日本が世界に先駆けて省電力化の研究をしっかり行うことが大切だ。

必需品サプライチェーンを国産化

昨今、中国や韓国にデータセンターを置いていいのかという議論があるが、これは日本人が情報の取扱いに神経質になっていることの証拠だと思う。経済安全保障上の話になるが、データセンターが全部日本に戻ってきた場合、消費電力が莫大になる。そこで、省電力化の研究を世界に先駆けて行えば、世界に輸出できる技術になる。そうすると、危機管理投資で始めたものが、成長投資となり、税収で帰って来る。

世界中が気候変動に見舞われており、日本の災害も年々激甚化している。将来的には現在の土木建築技術では対応しきれないような災害が発生する恐れもあり、農業も変化を迫られるかもしれない。災害の激甚化に対応するため、各種防災事業に大胆に投資をしていくことが急務ではないだろうか。

さらに、農地や牧地、流域全体の生態系を保護し、気候変動に対応しうる街づくりを行うグリーンインフラ技術も注目を集めている。海外でも進められているが、日本でよいモデルを創れば気候が近いアジア諸国に輸出することができる。

高市早苗前総務相は、危機管理投資の重要性を説いた(清雲/大紀元)

太陽光パネルも問題だ。初期モデルが約10年後に耐用年数を迎える。パネルをどう処理するのか。廃棄は毎年行われているが、有毒物質の問題や、感電の恐れもあるため、処理が非常に困難だ。効率的な処分方法の研究に取り組めば、太陽光発電を多用している国々に技術を輸出することができる。また、コロナ禍収束後のアクリル板の処分にも同じことが言える。

新型コロナウイルスの感染拡大に際し、必需品が日本国内で調達できないことの大変さを思い知らされた。マスクや消毒液、人工呼吸器、注射器のような物資が次々に供給不足に陥った。おまけに半導体の供給も不足した。衛生用品や医療用品、生活必需品、そして産業に必須な物資は国産体制を整えたい。サプライチェーンの弱さを思い知らされた。今後はエボラ出血熱のような、より強力な病原体の伝播も否定できないので、国産体制と医療提供体制をしっかりと立て直すことが大切だと考えている。

考えの根本は親に教えられてきたこと

ーー日本人としての伝統的価値観をどのように今日まで保ってきたのか。

私は最初の選挙に出るときから、訴えてきたことはほとんど変わっていない。国の究極の使命は国民の生命と財産を守り抜くこと、領土・領海・領空・資源を守り抜くこと、国家の主権と名誉を守り抜くことである。これを果たすために国はあらゆる手段を取る必要がある。そして真っ先に思い浮かぶのはリスクの最小化だ。リスクを早く最小化することが大切であり、議員立法でも取り組んできた。

私の考え方の根本は、昔ながらの家庭で教えられてきたことにある。父はメーカー、母は奈良県警に勤務していたごく普通の共働き家庭。親からは、毎日ご先祖様に感謝することを小さいときから言われていた。毎朝炊きあがったばかりのごはんとお水やお茶をお仏壇に供える。夜には母がカチカチになったご飯をお茶漬けにして食べていた。ご飯粒を一つも無駄にせず、ご先祖様に感謝しながらお下がりをいただくこと。そして、命の連続性に対する感謝もある。多くのご先祖様がいるからこそ自分がいる。だから他人の命も同じように大切に扱う、自分の体も大切にしたい。そして他人に迷惑を掛けないこと。先生を尊敬すること。陰で悪口を言わず、本人に直接言うときも相手の気持ちを考えること。ごく普通のことばかり。親から言われてきたことが、私の物差しになっているように思う。

日本国民へのメッセージ

日本の皆様、多くの困難の中にいらっしゃると思います。新型コロナウイルス感染症だけではなく、重病や事故や事件や災害で大切なご家族を失った方に心からお悔やみを申し上げます。また、社会経済活動を維持するため、そして医療提供を維持するために一生懸命働いている皆様に感謝を申し上げます。今は困難な時代ですが、一緒に頑張ってまいりましょう。日本を再び立て直すために、私も懸命に働きます。皆さん、ともに頑張っていきましょう。

(聞き手・王文亮)

 

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。