中国は2019年、太平洋の島嶼諸国からの輸入額が33億ドル(約3638億円)にのぼり、同地域の鉱物、木材、水産物などの輸出資源の半分以上を占めている。地域の環境問題を引き起こすだけでなく、中国共産党がこれを機に影響力を拡大することも懸念されている。英紙ガーディアンが5月30日報じた。
中国は太平洋諸国の最大輸出相手国であり、2019年には同地域から鉱物480万トン、木材480万トン、水産物7.2万トンを輸入し、2位の日本の鉱物410万トン、木材37万トン、水産物2.4万トンを大きく上回る。
伐採産業では、パプアニューギニアやソロモン諸島などが、年間を通じて木材の90%以上を中国に輸出している。この地域では違法伐採が横行し、自然環境に深刻な脅威を与えている。
漁業に関しては、2016年に太平洋で操業している船舶を調査したところ、中国籍船の数が他国を大きく上回ることがわかった。当時、中国の操業船数は290隻で、全体の4分の1以上を占め、太平洋諸国の240隻よりも多かった。沿岸漁業の乱獲が深刻化し、一部の漁業資源は絶滅寸前まで減少している。
鉱業分野では、ソロモン諸島は鉱物の90%以上を中国に輸出しており、パプアニューギニアの対中輸出額は全体の約30%を占めている。オーストラリアはこの地域の鉱業に深く関わっているが、鉱物資源の輸入量は中国に比べてはるかに少ない。
豪シンクタンク「ローウィー研究所(Lowy Institute)」のシェーン・マクロード(Shane McLeod)研究員はガーディアン紙に対し、オーストラリアの鉱山会社は豪政府の規制と監査を受けており、環境に悪影響を及ぼすプロジェクトを避けていると述べた。しかし、海外で活動する中国企業はそのような環境規制を受けておらず、環境問題への対処には不確実性が高いと指摘した。
マクロード氏は、「地理的な近さと経済活性化の必要性から、中国は南太平洋の主要な顧客となっている。例えば、中国企業が投資したパプアニューギニアのラム・ニッケル鉱山は、中国に直接原料を供給している。地球の反対側から運ぶ必要はない」と語った。
同紙の分析によると、中国共産党は太平洋地域における地政学的優位性を利用し、同地域の資源を支配・略奪し、同地域の環境問題を深刻化させている。それと同時に、中国共産党は経済的なつながりを利用して南太平洋諸国と関係強化を図り、影響力を拡大し、米国やオーストラリアなど西側諸国に対抗しようとしているという。
中国共産党の挑発、豪の北の玄関先で
昨年11月、中国商務部とパプアニューギニア政府は、中国の巨大経済圏構想「一帯一路」に関する覚書を交わし、西部州のダル島に2億米ドル規模の「統合型多目的漁業工業団地」を建設することを発表した。ダル島は、最も近いオーストラリアの島からわずか50km、豪本土からは200kmしか離れていない。
中国の、この「漁業」プロジェクトの投資について、魚の豊富ではないオーストラリアに近い戦略的な場所では、疑問視する声が上がっている。多くのオーストラリア人は、このプロジェクトが将来、中国の海軍基地に発展することを懸念している。
独紙フランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥングは昨年4月21日、「豪沖に漁港を建設する中国の挑発」と題した記事で、豪政府はこの挑発に対抗する措置を計画していると報じた。豪北部ダーウィンに駐留する米海兵隊の増員要請や、豪政府がパプアニューギニアのマヌス(Manus)島の海軍基地拡張を決定したという。
同紙はまた、オーストラリア戦略政策研究所(ASPI)の研究員であるジェフ・ウォール(Jeff Wall)氏の発言を引用し、中国の西太平洋地域への進出を阻止するために、豪政府は削減した同地域への開発援助を再拡大する方法を検討すべきだと述べた。
(翻訳編集・王君宜)
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