中国共産党が「前例がないほどの厳格な措置」で六四天安門事件の追悼集会を阻止

2021/06/04
更新: 2021/06/04

北京の天安門広場で発生した悲劇「六四天安門事件」から32年を経た今もなお、自由と民主主義を求めて平和的に抗議する人民に対する中国共産党の残忍な弾圧は続いている。さらに、抑圧と検閲という形態を成して香港からチベット自治区に至るまでの地域で蔓延している。

1989年6月4日未明、デモ鎮圧命令を受けた中国人民解放軍や警察部隊の進行を阻止しようとした推定数千人の学生、活動家、北京住民などが紫禁城(現「故宮博物院」)に隣接する広場で虐殺された。

天安門広場を中心に数週間前から発生していた民主化運動が国中の都市に波及したことで戒厳令が布告され、デモ鎮圧のために動員された中国人民解放軍により他数千人もの抗議者が逮捕された。

1921年に創設された中国共産党の建党100周年に向けて、中国政府は国民の意識から六四天安門事件を遠ざけようと努力しているにも関わらず天安門の汚点は同政権にこびり付いたままである。

ニューデリーに所在する中国研究所(ICS)の諮問委員会委員長を務め、同時にブルッキングス研究所の名誉フェローでもあるシブシャンカル・メノン(Shivshankar Menon)研究員が2021年5月にインドのオンライン雑誌「ザ・ワイヤー(The Wire)」で発表した分析記事には、「一党独裁国家である中国政府があらゆる手段を講じてこの日北京で起こった事件の記憶を抑制かつ抹消しようと躍起になっているにも関わらず、六四天安門事件は今も人民の心に生きている」と記されている。

2021年5月にニューズウィーク誌が報じたところでは、香港で毎年開かれていた六四天安門事件の追悼集会を中国政府は「前例がないほどの厳格な措置」を講じて阻止すると考えられていた。

1990年に初めて開催されてから毎年恒例となっていた追悼集会は、昨年も新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を理由に不許可となったことから、中国政府は2年連続で追悼集会を認めない決定を下したことになる。2020年6月下旬に香港で抜本的な国家安全法(香港国家安全維持法)が施行されてから今回の追悼集会が初の行事となるはずであった。

ニューズウィーク誌の記事には、「香港とマカオは六四天安門事件の追悼集会が許可されていた唯一の中国都市であった」および「6月4日の『64』を指すさまざまな隠語すらも検閲対象となっている中国本土では同事件が話題に上ることは滅多にない」と記されている。

ニューズウィーク誌は香港に拠点を置くオンライン・ニュースポータル「香港01」が報道した内容を参照して、無許可の追悼集会に出席した人物はすべて「非愛国者」と見なされそれが香港議員の場合はその場で議員資格が剥奪される。

サウスチャイナ・モーニング・ポスト(South China Morning Post)紙が伝えたところでは、2021年5月上旬、2020年の追悼集会に参加したとして訴追された黄之鋒(Joshua Wong)民主化活動家と他3人の香港地方議員に4か月から10か月の禁錮刑が言い渡された。2020年には例年のごとくヴィクトリア公園で開催された追悼集会に数千人に及ぶ参加者が集まったが、禁止勧告と公式警告を無視して集会を組織して参加した罪で合計24人が訴追されていた。

香港フリープレス(HKFP)の報道では、追悼集会を組織した香港市民支援愛国民主運動連合会が六四天安門事件32周年を追悼して「どこに居てもよいのでロウソクを灯す」ことを住民等に奨励している。5月中旬に同連合会に所属する4人が毎年恒例の追悼マラソンを組織したが、サウスチャイナ・モーニング・ポスト紙によると、規模を縮小して行われた同行事では警察の存在感だけがやたらと目立ち撮影を担当した公共放送局「香港電台(RTHK)」は後に内容が不適切として同マラソンの映像を削除している。

1997年の香港返還時に英中両国が署名した英中共同声明により、50年間は内政について「高度な自治」を維持できることが保証されていた人口750万人の香港は、2019半ばに民主化運動が勃発して以来、ますます強まる中国政府からの抑圧の対象となっていた。

国家安全法の施行に加え、2021年3月には、共産党の言いなりに議案を採択する「ゴム印議会」と化した全国人民代表大会(NPC/全人代)常務委員会が香港の選挙制度改正案を承認した。これは、民主主義の抑制と「愛国者治港(愛国者による香港統治)」を狙ったものである。しかも、2021年9月まで延期されていた香港立法会選挙が再度延期された。

観測筋によると、六四天安門事件の追悼集会弾圧は、7月1日に北京での開催が予定されている共産党創立100周年記念大会を視野に入れたものである。

1989年6月に発生した流血の武力弾圧の記憶により、記念大会に向けて中国共産党が上辺を飾って広めた宣伝文句に「ケチ」が付く。インド政府の国家安全保障問題担当顧問や外相を務めた経歴を持つメノン研究員は、「建党100周年にあたって中国共産党はまた歴史を捏造するつもりだ」と述べている。

たとえば、2021年5月、中国国営報道機関は中国の区域自治区としてチベットの「民主主義と繁栄に向けた発展」を宣伝する記事を掲載したが、同記事では70年前に中国人民解放軍がチベットを侵略して全土を制圧した事実については触れられていない。

中国共産党が同地域の天然資源を搾取しながら、チベット自治区の民族言語、習慣、宗教の根絶を企んでいるとして、チベット族だけでなく、人権団体や民主主義国家の諸政府から批判の声が上がっている。最近当選したチベット亡命政府「ガンデンポタン(中央チベット政権/CTA)」のペンパ・ツェリン(Penpa Tsering)政治最高指導者(シキョン)の発言によると、これは差し迫った「文化的大虐殺」の脅威となっている。

2021年5月にツェリン政治最高指導者はロイター通信に対して、「今中国の行為に立ち向かわなければ、すべてが中国政府に奪われる」とし、「何とかしてこれを食い止めなければならない」と述べている。

(Indo-Pacific Defence Forum)