オピニオン <オピニオン>

真実省2.0の到来

2021/06/01
更新: 2021/06/01

ワシントン・タイムズによると、米国土安全保障省のマヨルカス長官は、アメリカの子供たちのために、嘘と真実を見分け、「偽情報」を見抜くツールの開発を検討しているという。

同省の広報担当者は詳細の説明を避けつつも、今後数週間内に、より多くの情報が「明らかになるだろう」と述べた。

まずは、マヨルカス長官自らが事実確認(ファクト・チェック)することを勧めたい。彼が「国境は閉鎖されている」と繰り返し主張していた頃、大勢の人々が国境を越える様子がニュースに流れていた。子供たちは彼を信じるべきか、それとも自分の「嘘つきの目」を信じるべきなのか?

アメリカの政府が子供たちに対して、何を信じ、誰を信用すべきかを教えようとしている。多くの人は、思想信条や政党に関わらず、これに抵抗を感じるだろう。なぜならば、これは全体主義国家がする事だからだ。我々は、これをプロパガンダと呼ぶ。

ジョージ・オーウェルの小説『1984年』に登場する「ニュースピーク」(新言語)と「真実省」が現実となりつつある。ポリティカル・コレクトネス(政治的な正しさ)やキャンセル・カルチャー、woke(社会的正義に対する敏感さ)が幅を利かせる今、人々は話すべき言葉と話してはならない言葉を慎重に選ぶようになった。少しでも言葉を誤れば、「不道徳」の汚名を着せられる。そういう意味で、アメリカの「ニュースピーク」は、ほぼ実現している。

小説の「真実省」とはプロパガンダを広める政府機関を指す。政府の都合に合わせて歴史を改ざんし、真実を定義することも任務の一つである。その結果、言葉に矛盾が生じることもあるが、これも政府の目的に沿っていれば問題はない。世論を誘導するためなら、真実から乖離しても構わないのである。

今や我々の「真実」は主観的かつ相対的で、個人的なものとなった。テレビは偏ったストーリーに基づく特定の意見のみを伝え、客観的なニュース報道は少なく、公平性もない。あなたにはあなたの、私には私の「真実」がある。だから、たとえそれらが矛盾していても、お互いがそれに満足していれば問題はない。真実か嘘かは、もはや重要ではないのである。この欠陥的な概念が、我々の文化を衰退させている。

真実は我々を自由にする。しかし、それを正しく定義し、認識することができなければ、我々は束縛されるだろう。マヨルカス長官がジョージ・オーウェルの小説を読み直し、子供たちを洗脳する計画を中止するよう強く希望する。

(文・John Calvin Thomas/翻訳編集・郭丹丹)


執筆者:ジョン・カルバン・トーマス

多数の新聞社に寄稿するコラムニストでラジオのコメンテーター。彼の最新の著作は『America’s Expiration Date: The Fall of Empires and Superpowers and the Future of the United States』。

※寄稿文は執筆者の見解を示すものです。

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。
関連特集: オピニオン