孔子学院院長、六四天安門事件の虐殺への言及避ける カナダ議会の公聴会で

2021/05/08
更新: 2021/05/08

カナダ・オタワにあるカールトン大学の孔子学院のジャスティン・リー(Justin Li)院長は5月3日、同国議会で開催された「カナダ・中国関係に関する特別委員会(CACN)」の公聴会に出席し、中国政府のために活動しているとの指摘を否定した。さらに、六四天安門事件について質問されたが、明言を避けた。

リー氏は「中国には何も報告しない。カナダやカールトン大学にのみ報告している」と中国共産党政権の指示を受けていないと主張した。

保守党のガーネット・ジュヌイス(Garnett Genuis)議員は、1989年6月に起きた中国の民主化運動「天安門事件」で多数の死者が出ていることについて感想を求めたところ、リー氏は「カールトン大学での私の仕事は中国と関係がないと思う」と言葉を濁した。

議員から質問に答えるよう促されたリー氏は、「(天安門事件の死者)人数を検証するための専門的な知識やスキルを持ち合わせていない」と述べた。

ジュヌイス議員はさらに、「リーさん、あなたは当時中国に住んでいた。中国政府が平和的な抗議者に対して発砲を許可したことは間違っていると思うか?」と問い詰めた。

それでも、リー氏は彼の質問に直接答えず、「私の友人も知人も被害に遭っていない」と述べた。

孔子学院と中国の関係について、リー氏は「北京の本部から資金援助を受けている」と答えた。

中国共産党政権は近年、国際社会で発言権を獲得するため、ソフトパワーによる他国社会への浸透工作に力を入れている。孔子学院はその象徴的な存在となっている。同学院の資金や教師、教材は中国共産党政権によって提供されている。

中国語教育の普及を名目にした孔子学院は、スパイ活動を働き、中国共産党の主張に基づいたプロパガンダを展開している。また、法輪功信仰団体、ウイグル人、チベット仏教徒への迫害および1989年天安門事件の大虐殺など中国政府が敏感とする話題の検閲を行っている。

カナダ安全情報局の元高官マイケル・ジュノー(Michel Juneau-Katsuya)氏は4月19日、「中国はカナダに統戦部のフロント機関を作り、情報収集を行っている」とCACNに明かした。 

同氏によると、孔子学院はその「フロント機関」の1つであり、中国共産党のスパイ活動の「サテライトオフィス」であると指摘した。

米国とカナダの政治家は、中国共産党のスパイ活動の隠れ蓑として孔子学院を利用していると非難している。

孔子学院は中国政府の「スパイ機関」

ポンペオ前米国務長官はかつて、孔子学院が米国内の大学などで中国共産党の政治宣伝や有害な影響力の強化に使われているとして、大使館などと同様の外交使節団に指定するよう求めた。

リー氏は公聴会で、自身は「中国共産党と接触していない」と主張した。しかし、中国機関紙「人民日報」の公式サイトである「人民網」に掲載された記事では、リー氏はかつて中国外務省国際機関局の幹部だったと紹介している。

カナダ安全情報局長官であったスティーブン・ハーパー元首相やジャスティン・トルドー首相の国家安全保障顧問を務めたリチャード・ファデン(Richard Fadden)氏は3日、CACNの公聴会で証言し、「カナダの政治家はカナダにいる中国工作員の活動に対して警戒し続けなければならない」と指摘した。

ファデン氏はまた、「銃を使用しないこれらの活動は気づかれないのだ。カナダの最大の問題は、一般市民が今、脅威にさらされていると理解していないことだ」と述べた。

カナダの経済、国家安全保障、防衛に与える中国の脅威を10段階で評価すれば、ファデン氏は、「レベル8に近い」との考えを示した。

彼はまた、「私たちの懸念をよそに、中国当局は目標に向かって突き進んでいる」と述べた。

カナダはすでに孔子学院を拒絶している

現在、カナダ各地の大学や教育当局は相次ぎ孔子学院との提携を中止した。

オンタリオ州にあるマックマスター大学は2013年、孔子学院との提携を終了した。また、トロント教育委員会は2014年に孔子学院の開設計画を中止した。 

2019年2月、ニューブランズウィック州は2022年の契約満了をもって孔子学院との提携を終了すると発表した。

同州のドミニック・カーディ(Dominic Cardy)州教育大臣は、カナダ放送協会(CBC)のインタビューで、「孔子学院の教師は中国共産党が賛同する内容しか教えず、また共産党の独断専行を学校に取り入れることを懸念し、同学院との提携を中断した」と理由を述べた。

同氏は、その上に「人類史上、中国共産党政府は他のどの政権よりも多くの命を奪ってきた。孔子学院の使命は、そんな中国共産党政府のために友好的でハッピーな顔を作ることだ」と指摘した。

(大紀元日本ウェブ編集部)