4月28日、大紀元コメンテーターの秦鵬氏、米外交政策提言組織「現在の危険委員会・中国(Committee on the Present Danger : China、CPDC)のメンバーである林暁旭博士、中国海軍司令部元参謀(中佐階級)の姚誠氏が、大紀元の時事番組「新聞大家談」に出演し、中国当局が台湾を侵攻する場合、日米など各国の対応について意見を交換した。
米元顧問「台湾が最大の危機にある」
米国のハーバード・マクマスター元大統領補佐官(国家安全保障担当)は4月上旬、台湾海峡情勢について、台湾は「最大の危機(maximum danger)」にさらされていると発言した。同氏は、中国共産党の党大会や北京冬季オリンピックを控える2022年以降が「最も重要な時期だ」とした。
中国海軍司令部元参謀の姚氏は番組で、マクマスター氏の考えについて賛同し「今の情勢では、台湾海峡周辺の緊張感がますます強まっていることがわかる」「習近平氏は公の場で、今まで複数回『空想をやめて、戦いに備えよう』と発言した。中国共産党は今、平和に台湾を統一できないと認識しているため、武力による台湾統一を進むに違いない」と述べた。
姚氏は、中国当局の台湾侵攻における日本の介入について分析した。
「中国当局は台湾を侵攻した後に台湾全島を封鎖し、全面的な支配を達成すると計画している。しかし、日本が介入し、中国軍と対峙すれば、中国は大陸から離れている台湾の東部地域・海域を封鎖できなくなるので、当初の計画が台無しになる」
「日本の菅首相は、自衛隊が台湾を守る戦いに参加すると明言していないが、台湾海峡の平和と安定を注視すると発言した。これは、中国当局に対するけん制で、台湾問題をめぐって日本の存在感をアピールしていると考える。日本としては、台湾東部の空域・海域における中国側の制圧を必ず阻止しなければならないと考えているだろう」
姚氏は4月25日、YouTube上に投稿した動画で、日本は「必ず台湾の保衛戦に参与する」との見方を示した。中国軍が台湾を完全に支配し、第一列島線を突破すれば、エネルギー資源を中東などに頼っている日本にとって、インド洋から南シナ海、台湾のバシー海峡などの輸送ルートが断絶される恐れがある。また、台湾が攻め落とされると、中国当局の次の軍事作戦の目標は日本だと姚氏は警告した。
いっぽう、同氏は、150機の米製F-35ステルス戦闘機や世界最高レベルの静粛性を誇る「そうりゅう型」潜水艦などを保有する自衛隊の戦闘力を前に、中国当局は台湾侵攻に踏み出せない可能性があるとした。
「それでも中国当局は今、台湾侵攻の準備をしており、軍事行動を始めるきっかけを探っている」と姚氏は番組の中で述べた。
台湾に長春型の食糧封鎖か
米国防総省が昨年発表した「中国の軍事力・安全保障の進展に関する年次報告書 2020」は、台湾侵攻に関する中国軍の複数の軍事作戦モデルをリストアップした。リストの最初に、中国軍による空と海の台湾封鎖・包囲を挙げた。中国軍は、封鎖措置を通して台湾への重要物資の輸入を遮断し、台湾政府に降伏を迫る狙いだ。
この封鎖措置は「長春モデル」または「北平(北京)モデル」と呼ばれる。20世紀前半に中国で起きた国共内戦で、中国共産党はこの長期的な食糧・物資封鎖作戦を通して、長春と北京を守っていた国民党の国民革命軍(国軍)に投降させた。有名な長春包囲戦で、国軍の兵士だけでなく、数多くの市民が餓死した。
秦鵬氏は、「日米などの外部要因を除けば、現在、中国当局は台湾を封鎖し包囲する軍事力を持っている。中国軍が持つステルス戦闘機J-20の数は、2025年に300機に達する。また、同年には国産空母も4隻になるなどから、中国側の軍事力だけで見る場合、中国は台湾海峡を封鎖できると言える」と述べた。
秦氏は、中国軍が封鎖作戦を展開する上で最大の障壁は日米豪の介入だと示した。
米「現在の危険委員会・中国」のメンバー、林暁旭氏は、4月中旬に行われた日米首脳会談の共同声明を挙げ、台湾有事の場合、「日本は必ず介入する」との見解を示した。しかし、日本は直接に軍事作戦を展開するというより、台湾への物資支援など後方支援に回る可能性が大きいと述べた。
林氏は中国軍にとって、台湾封鎖作戦は「かなり難しい任務だ」と指摘した。同氏は「封鎖は時間がかかるため、その間、日米さらにオーストラリアが軍事介入するだろう。したがって、中国当局にとって台湾を封鎖するのは至難の業だ」と述べ、秦鵬氏と同様の見方を示した。
軍国主義に進む中国と台湾奇襲
近年、中国の軍拡が止まらず、国防費が急増している。米国など西側諸国は、習近平国家主席が独裁体制を強化しながら、軍国主義に走る恐れがあると懸念している。
米メディア「ポリティコ」によると、4月末、米軍の大将9人が共同書簡で、米情報機関に対して、中国とロシアの悪意ある行動・活動をより多く公表するよう呼びかけた。この共同書簡の発起人は、インド太平洋軍司令官のフィリップ・デービッドソン海軍大将(4月30日退任)だ。米宇宙軍司令官のジョン・レイモンド空軍大将、欧州やアフリカなどの米特殊作戦軍の司令官が共同書簡に署名した。米軍の四つ星階級を持つ大将11人のうち、9人が署名したのは極めて異例だ。
林暁旭氏は、「米軍のトップらが、中国側の軍事脅威に対して強い懸念を抱いていることを反映した。大将らは共同書簡という形で、バイデン政権に対して中国問題により強硬的な姿勢を示すよう圧力をかけ、米国民の世論を喚起する狙いがある」と分析。
林氏はまた、9人の大将が送った書簡は、台湾情勢、中国共産党政権の軍国主義などの問題で、米軍は妥協しないという態度を示したとした。
いっぽう、姚誠氏は、中国当局が不意を打ち、台湾を突然攻撃する可能性があると警告した。
「西側諸国は、中国軍の力を軽視しているところがある。台湾の包囲と封鎖は、軍事作戦の一部だ。封鎖がうまく行かなければ、中国当局はほかの作戦計画で台湾を攻撃するだろう。いったん、中国軍が台湾を占領すれば、米軍などは介入するのが難しくなる」
中国軍は現在、台湾の南部と北部に近い海域でそれぞれ軍事演習を行っている。姚氏は「大規模な軍事演習を直接軍事行動に変えれば、すぐに奇襲できる。台湾の面積は大きくないので、武力侵攻する際、大規模な兵力は必要としない。中国空軍空挺部隊の1つの軍団(方面隊に相当)の兵力と海軍陸戦隊の70隻余りの軍艦、300機余りのヘリコプターで、台湾の港や空港などを攻め落とせる」
同氏は、「中国当局が台湾に奇襲をかけた場合、欧米が対応するまでに時間がかかることを最も心配している。また、欧米諸国が台湾を『すぐに助けに行く』との発言がリップサービスで、実際には行動を起こさない恐れもある」と指摘した。
姚氏によると、中国軍の一部の退役将校は48時間以内なら、中国軍は台湾を占領できると主張している。
「台湾国軍の兵力は20万人未満だ。台湾を守りたいならば、欧米各国は事前に作戦を立て、素早く対応しなければならない。でなければ間に合わない」
(翻訳編集・張哲)