印太地域の連携強化 自衛隊、5月にフランス陸軍と米海兵隊と九州で離島防衛訓練

2021/04/24
更新: 2021/04/24

岸信夫防衛大臣は4月23日の閣議後の記者会見で、5月11日から17日の日程で、フランス陸軍、米海兵隊とともに九州で離島防衛訓練を行うことを発表した。3国は自由で開かれたインド太平洋を維持するとの価値観を共有している。これに挑戦する活発な動きを続ける中国を牽制する狙いがある。

岸防衛相は、陸上自衛隊などは長崎県佐世保市の相浦駐屯地、宮崎県えびの市と鹿児島県湧水町にまたがる霧島演習場で共同訓練を実施すると発表した。自衛隊からは、島しょ部が侵攻された場合に上陸作戦を行う専門部隊「水陸機動団」が参加する。

3国の地上軍が参加する大規模な軍事演習が日本国内で行われるのは初めて。

東シナ海や南シナ海での中国軍や準軍事力とされる海警局が、日本を含む周辺国に圧力を与えている。同月4日には、中国海軍の空母「遼寧」打撃群6隻が沖縄本島と宮古島の間を南下した。こうした状況から、日本政府は日米防衛協力体制に欧州諸国など他国も関わるよう積極的な働きかけを行なっている。

岸防衛相は記者会見で、「フランスは、インド太平洋地域に常続的な軍事プレゼンスを有するヨーロッパ唯一の国であり『自由で開かれたインド太平洋』のビジョンを共有する同志国でもある」「一連の共同訓練を通じて、自衛隊、アメリカ軍、フランス軍の連携を強化するとともに、島しょ防衛にかかる自衛隊の戦術技量をさらに向上させたい」と語った。

共同通信によれば、岸防衛相はこの会見前日、都内で開かれた自民党議員の会合で、中国公船による尖閣諸島を含む領海侵入を繰り返し施政権を切り崩す試み「サラミ・スライス作戦」に言及、「中国は少しずつ侵略を進める」と述べた。さらに、武力を辞さない台湾統一への野心についても触れ、中国共産党の覇権行動に危機感をあらわにした。

岸防衛相は1月、仏パルリ軍事大臣とテレビ会談を行った。「自由で開かれたインド太平洋」の維持・強化に向け、早期の2プラス2開催を含め、防衛協力・交流を引き続き活発に進めていくことで一致した。

日本有力シンクタンク・日本国際問題研究所は2月に発表した年次報告書で、欧州は「米中間の覇権競争の激化と対中認識の悪化でインド太平洋地域への関心が高まっている」という。ドイツ、フランス、英国、オランダなどは地域戦略的関与を打ち出している。欧州連合(EU)もまた4月19日、同地域戦略計画を発表した。中国の覇権に対抗して、安全保障や通商などの分野を通じてEUの政治関与を含めた同地域での影響力を高めるとしている。

4月上旬には、インド洋ベンガル湾で多国間海軍訓練ラ・ペルーズ21が実施された。海上自衛隊は、このフランス、米国、オーストラリア、インドとの共同訓練のなかで「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けて連携強化と相互運用能力向上の目的があると発表した。

米バイデン政権で初めて対面会談を行なった外国首脳である菅義偉首相は、日米首脳会談で、中国の脅威に対抗するため団結することを確認した。日米は、安全性の高い第5世代移動通信ネットワーク「5G」の推進や、半導体など重要物資の供給網(サプライチェーン)構築に関する協力拡大でも合意した。

(佐渡道世)

関連特集: 日本の防衛力