台湾・台北に所在する国防安全研究院によると、台湾近辺を頻繁に飛行する中国人民解放軍の軍機による威嚇行為は、中国共産党が支配権の獲得を企む台湾の住民に影響を与えようとする「認知戦」の様相を呈している。
政府資金により設立されたシンクタンクのサイバーセキュリティ部門を率いる曾怡碩博士はボイス・オブ・アメリカ(VOA)に対して、「究極の目標は頭脳を操作することにある。つまり、(中国政府は)台湾国民の意識や考え方を変えることで、行動の変化に繋がることを望んでいる」と説明している。
一部諸国は地域の緊張の高まりを受け、中国共産党に対し脅迫戦術を止め、台湾の自治を尊重することを求める声明を発表している。
2021年1月23日と24日には、数十機に上る中国人民解放軍の軍用機が台湾防空識別圏に侵入した。オンライン雑誌のザ・ディプロマット誌が報じたところでは、防空識別圏とは国の領空とは別に設定されている空域であるため、中国機が飛行した範囲が必ずしも台湾の領土に含まれるとは限らない。しかし、挑発的な中国人民解放軍の飛行作戦により、台湾側は戦闘機のスクランブル(緊急発進)を余儀なくされている。
異例の数の軍用機による台湾防空識別圏侵入が発生したのは、ジョー・バイデン米大統領の就任式から3日後のことである。従来通り、米国国務省は中国人民解放軍による台湾威嚇を非難する声明を発表した。
米政権は声明で、「米国は台湾国民の希望と最善の利益に沿うように、台湾海峡両岸関係(両岸関係)の平和的解決を支援する」と述べている。
2021年2月、米国国務省のネッド・プライス報道官は、台湾に対する威嚇戦術を停止するよう中国共産党に要請している。
ロイター通信によるとプライス報道官は、「台湾への軍事的、外交的、経済的な圧力の停止を要請する。代わりに民主的に選出された台湾代表者と有意義な対話を行うことを中国政府に要求する」と語ったと伝えている。
アナリスト等によると、中国共産党は台湾の蔡英文政権が正式な独立宣言に向けて動いているとして警戒を強めており、最近では中華人民共和国国防部(国防省)の吴謙報道官が「台湾独立は戦争を意味する」と発言している。
BBCニュースは、米国国防総省のジョン・カービー報道官は中国側の「戦争」という言葉を「残念な発言」と表現し、国防総省は「台湾を巡る緊張が衝突に至らなければならないような理由は全く見当たらない」と付け加えている。しかし、蔡総統率いる台湾首脳陣は常日頃から、台湾は70年以上も前に中国本土から離れて台北に政府を移転し、正式名称「中華民国」という独立国家として歴史を築いてきたため、今更独立宣言をする必要はないと述べている。
中国の内戦終結後の1949年以来、中国本土と台湾は別々の政府により統治されてきたが、中国共産党は台湾の国際的な活動をことごとく邪魔立てしてきた。中国大陸、マカオ、香港、台湾は中華民族の統一国家であるとする「1つの中国」原則に基づき、中国共産党は台湾の独立に反対している。
台北に所在する国立政治大学でメディア政治を専門に扱う黃兆年助教授がボイス・オブ・アメリカに語ったところでは、中国共産党は軍事的な威嚇だけでなく、蔡政権の失脚と非合法化を目的とした攻撃的な宣伝工作を展開している。
黃助教授は、「国営報道機関の勢力を海外にまで拡大し、本の題名にもあるように『レンタルボートで大海に漕ぎ出す』という戦略で(信頼性の高い)海外報道機関を買収することで、中国共産党は世界的な宣伝工作を展開している」とし、場合によっては、中国政府の機嫌を取るためなら報道内容を歪めることも厭わない「親中派の実業家に海外報道機関を買収させる」と説明している。
こうした企みにも屈することなく、蔡総統は引き続き台湾の主権を主張し、諸外国との外交関係確立を推進していくと述べている。
ロイター通信によると、2021年1月に同総統は、「台湾が『善を促進する勢力』であること、台湾が世界においてかけがえのない存在であること、そして国際社会に貢献できる国家であることを当国は引き続き国際社会で実証していく」と述べている。
(Indo-Pacific Defense Forum)
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