中国、「大躍進政策」で半導体会社が急増 過熱化との見方

2020/10/02
更新: 2020/10/02

米政府が中国ハイテク企業などへの半導体禁輸措置を強化する中、中国当局は半導体産業への投資を促し、大規模な補助金の給付を含む「大躍進政策」を打ち出した結果、昨年から新たに半導体メーカー約2万社が設立された。専門家は、中国半導体産業の「過熱化」に警鐘を鳴らしている。

香港英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポスト(SCMP)は9月28日、中国国内では今年1~8月期に、9335社の企業が新たに半導体産業に参入したと報道した。昨年同期と比べて、120%増えたという。また、昨年1年間で約1万社の半導体企業が新たに設立された。現在、中国本土では、ほぼすべての省と大都市の政府は半導体産業を地元の主要産業と位置付けている。

SCMPによると、米政府が中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)などに対して、米国の技術に関する半導体やソフトウエアなどの輸出を禁止して以降、各地で半導体産業の投資ブームが起きている。当局は、半導体産業を発展させるため、補助金・税制優遇措置のほかに、企業の株式上場や資金調達などにも「ゴーサインを出している」という。

中国国家発展改革委員会、工業情報化部(省)など4つの政府機関は9月22日、共同声明を発表し、5G(次世代移動通信システム)や半導体などの中核的技術分野を含む戦略重点産業への投資を強化すると示した。

広東省の深セン市半導体業協会事務局長、常軍鋒氏はSCMPに対して、半導体産業の投資ブームは、今や不動産投資を上回ったと話した。

SCMPによると、一部の専門家は、半導体産業の行き過ぎた投資ブームは、1950年代の「大躍進政策」のように失敗に終わると懸念している。新参入した企業の多くは半導体チップの研究と生産の経験がないからだという。専門家は、中国当局の極端な振興政策は、資本と労力を浪費して効率を無視していると批判した。

中国国内では、一部の新半導体メーカーが、すでに経営難に追い込まれているという。中国紙「中国経営報」9月19日付によるとと、2017年11月に創立された武漢弘芯半導体製造有限公司は、資金調達難に陥り、倒産寸前の状況だという。設立当時、総投資額1280億元(約1兆9905億円)で大きく注目された。また、陝西省、江蘇省などの各地でも半導体メーカー5社が、倒産または操業停止となった。この6社はすべて2015年以降に設立された。

半導体調達「自立不可能」

台湾シンクタンク、台湾智庫の董立文諮問委員は大紀元に対して、中国当局が半導体産業を強化し、欧米に頼らず、国内供給体制の確立を目指していることについて、「非常に難しい」との見方を示した。

「中国当局は今まで、時間をかけて半導体産業の人材を育成するのではなく、各国から技術を窃盗し、技術者を引き抜くことに多くの時間を費やしてきた」と董氏は指摘した。米中は現在、貿易戦だけでなく、ハイテク分野でも激しく対立している。米政府が現在、中国最大の半導体ファウンドリである中芯国際集成電路製造(SMIC)に制裁措置を課すことを検討している。「中国側も、米中ハイテク戦争がしばらく続くと認識しているため、急いで国内の半導体産業を発展させようとしている」

董氏は、半導体チップ、ウエハーなどは、数学、物理、化学などの多くの科学基礎教育に関わり、技術革新の環境も必須であるとした。同氏は、中国当局が科学教育を重視してこなかった上、外国からの技術窃盗も難しくなった今、国内半導体調達で自立を目指すのは「不可能だ」とした。

「特に今、半導体製造技術がどんどん新しくなり、半導体の微細化も速く進んでいる。米政府が中国のSMICを制裁すれば、中国企業は海外の最先端技術に追いつかなくなるだろう。軍事上でも、米中間の緊張感が高まっている。半導体などの技術力低下で、中国軍はすぐに設備の老朽化問題に直面し、航空業や他のハイテク産業も大きな打撃を受けるだろう」

董氏は、米中対立の長期化で、中国が「一夜のうちに文化大革命の当時に再び戻る可能性がある」との見方を示した。

(翻訳編集・張哲)