ブリュッセル自由大学(VUB)は来年、中国政府の対外宣伝組織とされる孔子学院を閉鎖する。同学院の理事は今年10月、中国のスパイ容疑がもたれ、ベルギー当局からビザ更新の却下と入国禁止処分を受けた。
現地紙によると、ブリュッセル自由大学は2020年6月に孔子学院との長期契約を終了させることを理事会で決定した。自由な研究への侵害を理由に挙げた。中国教育部から資金提供を受ける孔子学院は、2006年、VUBに設置された。
「ブリュッセル自由大学が協力する組織は、自由な研究という基本原則に従う必要がある」と、 同校のキャロライン・パウウェル(Caroline Pauwels)理事長は声明で述べた。
今回の閉鎖決定は、ベルギー国家安全局が、同大孔子学院の責任者である宋新寧氏を国家安全保障に対する脅威だと見なし、就労ビザの更新を許可しなかったことが影響しているとみられる。声明では、「最近の報道」と記したのみで、名前は出ていない。
現地紙「デ・モルゲン」10月の報道によると、同国に10年以上在住している宋氏はベルギーで国際的な人脈を築き、ビジネスマンや中国人留学生経由で情報を収集する諜報活動を行っていたという。記事によると、宋氏には7月、シェンゲン協定加盟国の欧州26カ国への入国を8年間禁止する措置が下った。
孔子学院は過去15年間で、134カ国の教育機関に500カ所以上設置された。中国政府は現地大学に資金や教材を提供する。孔子学院を管理する中国教育省傘下の国家漢語国際推進指導小組弁公室(漢弁)のトップは、元副首相、党中央統一戦線工作部の部長を歴任した劉延東氏が務めている。中国国務院(内閣に相当)は公式に、孔子学院は対外宣伝として「核心価値である社会主義を基礎とした教育を広めるため」と説明している。
中国教育部が孔子学院の教材を審査している。教材は法輪功迫害、六四天安門事件など共産党に不都合な内容に触れていない。
こうした背景を踏まえ、「学問の自由」に対する懸念から、ニュージーランド、オーストラリア、米国、スウェーデン、カナダなどの大学、高校は孔子学院の閉鎖を決定した。
日本には、早稲田大学、立命館大学、桜美林大学、工学院大学、武蔵野大学など15大学に孔子学院、長野県日中友好協会、神戸東洋医療学院に孔子課堂(クラス)が設置されている。現在、閉鎖を決定した機関はない。
(翻訳編集・佐渡道世)
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