米国のリンカーン大統領は、かつて「人民に事実を知らせることが、国家を安全にする」と語った。この言葉は、米国のニュージアム(報道博物館)に刻まれている。しかし、言論の自由および真実を報道することを抑制する中国共産党の専制政権は、中国本土のメディアを厳しくコントロールするだけでなく、更に言論抑制の黒い手を自由社会にも伸ばしている。
まず台湾で起きた実例から言及しよう。
1.自由社会のメディアも宣伝道具に変えられる?
2010年8月、台湾法輪功弁護士団は史上初めて、訪台した省長クラスの中国共産党(中共)高官を台湾高等裁判所検察署に告発した。刑事告発の対象は、代表団を率いて台湾を訪問した広東省長・黄華華。告発理由は、彼が「大量虐殺罪」を犯し「人権規約」に違反したことに加えて、彼らが法輪功迫害を停止するよう要求するためである。広東省は法輪功弾圧が最もひどい省の一つだ。その手段も残酷で、迫害で死亡した法輪功学習者は、証明されているだけで当時すでに75人に達している。傷を受け、障害を負った人も数えきれない。黄華華は広州市委員会書記に就任した時から、複数回にわたり自ら指揮を執って命令を下し、迫害の実施を采配した。甚だしきに至っては、台湾のある法輪功学習者が親族訪問で中国本土に帰った時、不当に拘束されたのである[1]。
台湾はずっと「人権立国」を公言し、2009年には国際人権規約法案および同施行法法案を通過させた。このような酷い人権迫害事件の告発、さらには訪台した中共高官への告発は初めてのケースであり、本来ならメディアが重視すべきことであった。しかし、台湾の四大新聞社のうち、3社はほとんど報道しなかったのである。すべての主要な商業テレビ局も同様であった。それどころか、中共の人権迫害の事実を回避するこれらのメディアは、大見出しで「本土一豊かな省のリーダー」が台湾に来た、数十億ドルの仕入れを行い、至るところで「同郷の人を訪ね、本土民衆こぞっての台湾観光をスタートさせた」などと報じた。言葉の行間には、金銭や利益への憧れや喜びが溢れている[2]。その一方、中国本土の独裁専制や貧富の格差、汚職の横行、人倫道徳の崩壊に対しては、見て見ぬふりをするのだ。
実のところ、それらは特殊なケースではない。長期にわたり、台湾メディア、さらには自由社会のメディアさえも、中国における法輪功弾圧についての報道は極めて少ないうえ、一部の報道は往々にして事実をねじ曲げている。甚だしきに至っては、中共が海外にばらまく虚言と侮蔑の拡声器に成り下がったものもあるのだ。
メディアはなぜ法輪功の真相を報道しないのか。どうして自由社会のメディアが、自由ではなくなったのか。赤色の中国は、どのように自由社会のメディアを屈服させ、自ら制限を設けさせたのか。それによる人類社会への影響は、果たして如何なるものなのか。それを変え得る契機は、どこにあるのか。以下でまず、中共が自由社会のメディアをコントロールする方法から述べる。
2.声を封じられる自由社会メディア:中共の海外メディア四大操縦術
(1) メディア所有権を買収し、中共の代弁者にする
台湾の旺旺中時というメディアグループが典型的な例である。2008年、台湾のメディアグループ・中国時報(中時)は、熾烈なメディア競争とネットメディアの急速な発展、および自社の経営不振のため、急遽売却しようとした。そこで中国大陸から来た台湾商人である蔡衍明が、高額で同グループを買収した。
蔡氏は、もともと総合食品メーカー旺旺グループの経営者として有名であったが、後に不動産、保険、金融サービス、ホテル経営、病院などにも企業版図を拡げた。ただし、その企業全体の90%の利益は中国本土の市場から得ていた[3]。米誌フォーブスの富豪ランキングで、蔡氏はここ数年ずっと台湾トップを占めている。しかし、英紙エコノミスト2013年4月の報道によると、中国政府は補助金を出して国営企業と特定の民営企業をサポートしており、その中に旺旺グループの子会社である中國旺旺控股有限公司も含まれる。さらに、中国政府がその有限公司へ拠出した補助金は、同公司の2011年純益の11.3%にも達している。旺旺グループの獲得利益は、中共当局の支持と密接な関連があることは明らかだろう。
台湾の天下雑誌2009年2月号の特集報道は、旺旺中時の内部刊行物を引用してこう明かした。中国時報を総額204億台湾ドル(約610億円)という法外な価格で買収した蔡氏は、その1か月後、中国の対台湾政策を担当する国務院台湾事務弁公室の王毅主任の事務室に現れて、「主任、我々は中国時報を買いましたよ」と交渉の結果を報告した。そこで蔡氏は、メディアを買収したのは「メディアの力を借りて、中台両岸関係の発展を推進したいから」と述べるとともに、我々は全て「上」の指示に従っており、祖国である大陸の繁栄ぶりを念入りに報道した、とも話した。王毅はその場で「もしも将来、君のグループが助けを必要とするなら、台湾事務弁公室は必ず全力で支持する」と表明した[4]。
以上のように、中共お抱えの大企業が高値でメディアを買収する背景には、商業上の目的があるだけでなく、ビジネスに政治を結びつけるため、メディアをその道具にする狙いがある。学術界ではそれを「侍従」メディアと呼んでいる。こうしたことは台湾に限らない。香港、さらには海外における華人メディアの所有権や株も、ここ数年の間に、似たような「侍従」商人によって買収されつつある。自由民主社会のメディアは、自身の役目と働きを称して、客観的かつ中立であり、真実の報道、社会への貢献を旨とし、公益性を維持するため「第四の権力」となることだ、と強調する。しかし「侍従」メディアは、中共政権に直属はしないが、中共の政治的利益のために働き、その舌となって「祖国の繁栄」を報道することを旨としている[5]。
(2) 報道体制を掌握 人事、編集取材および内容の転向
所有権を掌握した後、次の一手はメディアの編集や取材、および人事を掌握することだ。ピューリッツァー賞を受賞した米国の著名な記者アンドリュー・ヒギンズ氏は2012年2月、旺旺グループの蔡衍明を取材した。ヒギンズ氏は、旺旺メディアグループが中共の立場に迎合して人事を動かし、取材および編集する内容をコントロールしていることを暴露した。
旺旺中時の主要な報道は、蔡氏の「六四」事件と中国民主についての発言が、中共の立場と一致することを指摘している。例えば、「本当に多くの人が(六四事件で)死んだとは思っていない」「中国の多くのところは、すでにかなり民主化された」「好むか好まないかにかかわらず、中台統一は早晩の事だ」「本当に、それ(統一)が見られたらと望む」などだ。
さらに蔡氏は、当時、中国時報の編集長を更迭した理由について、「あいつは私を怒らせた。大陸人だけでなく、この私も傷つけたからだ」と認めた。蔡氏はまた「記者は批判の自由があるが、書く前に熟慮しなければならない」とも語った[6]。
これに対して、台湾の多くの知識人は大いに怒り、次から次へと抗議活動を始めた。彼らは、「六四」の事実に対する自由社会の認識に反するとして、蔡氏の言論を批判するとともに、旺旺グループ内の異議者を排除していること、人事へのコントロール、および報道の自主権への侵害にも疑問を呈した。当時解雇されて間もない中国時報の編集長は、ある報道専門の座談会に出席した時、「六四事件、法輪功、92コンセンサス、ダライラマなどのテーマは、中国時報では全てタブーだった」と述べた。また、中国時報の記者が自主的に制限を設けるようになったとして、「心の中にひとたび警察本部ができてしまえば、編集者は自ら内容を選別したり、避けたりするものだ」と語った[7]。
実際のところ、「侍従」メディアは報道の専門性を無視するだけでなく、甚だしきは、明らかに違法なこともやる。本文の冒頭で触れた、台湾法輪功関連団体に刑事告発された広東省長・黄華華が2010年に訪台した期間に、旺旺グループのメディアを含む多数の台湾主流メディアは、法輪功団体が告発した事実を報道しなかっただけではない。それどころか、黄華華がいかに台湾を「熱愛」し「祖国」からの情義を振りまいたか、この訪台がどれほど実り多いものだったか、さらには広東省がどれほど急速に発展しており、投資に値する場所であるかなどを大量に報道した。その中に、広東省のマイナス面について、例えばひどい環境汚染、投資で被害を受けた台湾商人が抗議したこと、 汚職や人権迫害などに言及した報道はなかった。もはや報道は、完全に、一方的な宣伝と投資の誘致に成り下がったのである。これらの「報道」は、本質的に言えば「有料広告」、あるいは「プロダクト・プレイスメント」という広告手法である。
2011年11月の、台湾監察院の調査によると、そうしたメディアは1社にとどまらないという。同調査のレポートは、このようなプロダクト・プレイスメントについて、報道を売り、その専門性を破壊して読者を騙すばかりか、国の安全も損なう行為だと非難した[8]。(訳注:台湾では、中国本土の広告、プロダクト・プレイスメントは禁止されている)
以上の説明でわかるように、中共による、言論の自由へのコントロールは中国本土だけでなく、台湾を含む国際メディアにも浸透している。所有権の買収から人事の操作、独自取材や編集を制限して報道を操縦する。甚だしきは、報道を買うなどして、自由社会の報道が有する専門性を著しく堕落させた。記者が真偽をわきまえ、弱者のために声を上げる良知が抑えられることで、報道は、広告と嘘言に成り下がった。台湾の旺旺中時のケースは、その典型的な例にすぎない。
(3) 広告と市場利益を制御し、メディアを脅迫
実は、メディア所有権の移動がなくても、中共が広告と市場利益でメディアを誘惑あるいは脅迫する現象は決して少なくなく、時には慣例にもなってしまう。例えば、台湾の三立テレビ局のトークショーの、ある有名な司会者は敏感なことによく触れるので、視聴率もかなり高かったが、中共からの圧力で降板させられたという。原因は、テレビ局が、人気のあるアイドルのドラマを中国本土の市場に売り込もうとしたため、やむをえず自主規制したことにある。
反共と香港の民主化支持で知られる香港紙・蘋果日報(アップルデイリー)は、相次いで「親中」企業から広告を取り下げられた。なかには不動産会社や香港および海外の主要銀行の広告も含まれ、それ以外の類似する広告も影響を受けた。現在同紙は、その損失によりページ数を2割減らしたため、収益は激減し、言論分野での挑戦が困難になっている。
そのほか、比較的穏健な立場とされる、無料の香港紙『am730』[9]も香港政府を批判したことで、少なくとも3社の中国資本系銀行が広告掲載を中止または減らしたため、同紙は重大な経済的打撃を受けた。
広告でメディアや反対者の声を抑圧する手法は、早くから存在した。しかし昨今は、明らかにひどくなっており、影響を受けるのは前面に立つメディアだけでなく、冬の蝉のような萎縮効果により、ほとんどのメディアも影響を受ける。生存利益を目の前にしたメディアは自主規制し、良知と正義の声が消えた。これはメディアの悲哀であるだけでなく、自由社会の悲哀でもある。
(4) 暴力による威嚇
コントロールできない自由社会のメディアや批判者に対し、驚くべきことに中共は、中国国内の反対者に向けるような暴力を、そのまま持ち出したのである。2014年の香港自由年報は「記者への暴力襲撃による報道自由の阻害」を第一章に挙げ、ここ2年来、香港のジャーナリストへの襲撃事件が急増しているとともに、暴力の激しさも増し、明らかに批判記事を出すメディアやその責任者にターゲットを絞っていると伝えた。その中で最もひどかったのは、明報の元編集長・劉進図が白昼に、暴漢に刺されて重傷を負った事件である。事件は国際社会に衝撃を与え、数十の人権組織が声明を出すなど重大な関心を表明した。それによると、「凶悪の徒による犯行は、もはやマスコミ界の事件にとどまらず、全香港の治安と法治への挑戦」であり、さらに「香港の報道と言論の自由への挑発である」という[10]。
その他にも、昨今の香港において、一部のメディアへの暴力事件は頻繁に起こっている。壱伝媒集団(ネクストメディア)の黎智英オーナーの自宅の表門に車が突っ込む事件があっ た。2013年6月には、蘋果日報(アップルデイリー)の新聞数万部が奪われて燃やされている。明報に爆弾入りの郵便小包が届けられた。星島日報と東方日報の小売店が壊された。香港晨報メディアグループの幹部が街頭で襲われた。日光事務の社長が雑誌社の付近で、覆面をした二人の暴漢に棍棒で襲撃された。新聞・大紀元時報のオフィスと従業員も複数回にわたり暴力を受け、妨害されている。しかし、こうしたメディアへの暴力事件はほとんど解決されていない[11]。
目に見える身体的暴力のほかに、ネットワークの普及に乗じた攻撃もある。報道によると、中共はすでに10万人以上のサイバー部隊をつくり、外国の大企業や政府機構のウェブサイトにサイバー攻撃をかけ、ウェブサイトを使用不能にしたり、内部資料を盗み出したりしている。ここ数年来、このようなハイテク犯罪はさらにエスカレートした。2014年6月中旬、「真の普通選挙」を求めて、民主派団体が主催する香港住民投票とデモ行進が始まる前に、住民投票への支持を表明した壱伝媒というウェブサイトは、毎秒4,000万回もの「対国家級」ハッカー攻撃に遭っている[12]。
それとともに、侵入攻撃による内部資料の窃盗は、個人と企業の情報セキュリティを大きく脅かしている。実際のところ、法輪功学習者の作ったニュースウェブサイトは、だいぶ以前からこの類の攻撃を受け続けてきた。異議者を威嚇し迫害する、このようなネットワーク暴力に、米国を含む多くの国は警戒を強めている。
3.結論:報道の抑圧から人間性の迫害へ
中共は、政治上および経済上の利益を通じて、あるいは中共寄りの商人を駆使して、言わば「政商の利益を以って言論を封じる」ことをする。そのためならば、暴力で恐怖を作りだすこともいとわない。その影響は、大部分の自由社会のメディアに及んだ。例えば、矢面に立つ香港メディアは、その報道の自由度が「陥落寸前」のところまで落ちている。そのひどい状況は、国際機関による香港の報道自由度に対する評価にも反映された。国際NGOフリーダム・ハウス発表の「報道自由度ランキング」によると、香港は毎年後退し、2014年では197の国または地域のうち74位で、「部分的に自由」のランクに落ちた。2002年の時点で香港は18位にランクし、アジアで最も自由な地域の一つであった。それ以降、中国返還後の中共の介入が深くなるにつれて年々ランクを下げ、ついに50位以上も落ちたのである。
一方、中国大陸と「両岸の交流」を続けてきた台湾も、報道自由度が毎年下降している。フリーダム・ハウスによる2014年の「報道自由度ランキング」は47位であり、香港に比べて少し良く、とりあえず「自由な国」の範疇に入る。しかし、2007年のランクが32位であったのに比べれば、15位も後退したことになる。前述の台湾商人によるメディア買収が、台湾の報道の自由に影響したことは明らかだろう。
歴史学の泰斗である台湾中央研究院の余英時教授は、関係者に書いた書簡の中でこう綴った。「台湾で、権力と財力をもつ、一部の政治家や実業家は、絶対的に己に利せんとする動機から中共の意向に迎合し、あらゆる隙をねらって台湾に浸透することをすでに決心した。公共メディアの買収はその一環にすぎない」[13]。余教授は、2012年~2013年のメディア買収合併の背後にある、中共の統一戦線工作と言論コントロールが及ぼすマイナス影響を、公然と指摘したのである。
以上の実例から分かるように、中共の赤色専制政権は国内で自由と良知を抑圧すると同時に、そのやり方を海外にも持ち出し、すでに自由社会における専門報道の価値を深刻に侵食している。メディアの使命は真相を掘り起こし、真実を報道し、権力を監督し、公共の利益を守ることにある。それは民衆が生きていくために必要な情報なのだ。衣食住から旅行者の安全、公民の政治権利の維持まで、いずれも報道の伝える情報が真実で自由かつ完全であり、滞りのないルートおよび多元的な声であることにかかっている。また、自由な情報は民主社会を運営する基礎でもあるため、自由で多元的な報道があってこそ、権力の監督を行使し、汚職や職権乱用を暴いて民衆の権益を守り、制度の健全性を促進することができる。自由で真実な情報はまた国際社会の秩序と平和にも関わっている。現在、中共による為替レートの操縦、軍拡、植民地式の外交および鉱物資源の略奪、さらには奴隷的な労働を強いる海外工場の運営、溢れる不法なコピー商品、有毒食品と毒性玩具の輸出等の問題が、国際社会によって指摘されている。多くの中国の民衆は、健康や生命という高額な代価を払ったが、中共の情報封鎖と聞こえの良い宣伝のため、大多数の中国人は真実を知らないでいる。
四川省汶川で起きた地震では、おから工事(粗悪な手抜き工事)の建物が倒壊して、数えきれないほどの児童が亡くなった。有毒粉ミルクが乳幼児の健康と生命を奪った。汚染された土地、空気、水、有毒食品が、人々の健康に危害を及ぼした。そして残忍きわまる権力乱用により、法輪功学習者や各種の信仰をもつ人々、異論者などが迫害を受けている。甚だしきに至っては、良知と医学倫理を踏みにじる「臓器狩り」、つまり生きている人から臓器を奪い、死体は焼却、その臓器を売って暴利を貪っているのだ。様々な災害と暴行の背後には、独裁で、でたらめな制度、職権濫用と腐敗官吏が隠れている。彼らは司法と結託し、メディアをコントロールし、様々な問題を起こしている。ところが、真実の報道を封じられてからは、親も教師も子供を守れず、国民は環境と社会の安全を維持できないので、次世代の生存と福利など到底話にならない。中共の舌となったメディアは、党と国家が「偉、光、正」であるという洗脳の内容を歌い上げる。ついには、外の情報と接触できない民衆を国と党の宣伝に同調させることで、善良であることを侮蔑させ、人権迫害の共犯者に仕立ててしまう。
専制政権のより深層的な問題は、各種利益の誘惑と威嚇を手段として、人々に良知を捨てさせ、邪悪に屈服させることである。それは自身を守るためであるが、甚だしきは、自ら進んで暴力の共犯者になってしまうのだ。米ワシントンの集団殺害(ジェノサイド)博物館のテーマの一つは、「傍観者も、迫害者の一部だ」を人々に考えさせることである。嘘と暴力の脅かしの下、もともとは親友であり、良き隣人、同級生であったものが、迫害の共犯者になる。天使が悪魔に変わる。したがって、それは報道への迫害というだけでなく、人間性をねじ曲げる邪悪の最たるものなのだ。
法輪功の人権問題は典型的な例である。中共による威嚇や利益の誘惑の下で、メディアは中共の官製メディアに合わせて踊らされるか、沈黙させられる。先述の広東省長が告発された重大ニュースについて、彼らは沈黙することを選んだ。さらにでたらめなのは、一部のメディアは法律に反してニュースを売り、報道の価値を踏みにじり、人道に反する罪を犯した容疑者を「民に親しみ、民を愛する良い官吏」に作り上げたことである。一般の民衆には見分けにくいため、迫害の加害者を支持してしまうだろう。このような虚偽報道の道を選択したメディアやジャーナリストは、彼らのプロとしての良知に背いただけでなく、すでに迫害する側の共犯者に成り果てた。真相が伝えられなければ、自由もなく、良識ある判断もできなくなる。したがって、中共専制政権による報道へのコントロールと抑圧の被害者は、報道の当事者だけでは決してなく、広く全ての人々なのだ。
中共がまき散らす「素因」は、各種の利益交換を通じて、報道の専門性と民主社会の基盤に悪影響を与えている。しかし、自由社会にはやはり真相を知る人も少なからずおり、自由と良知を大切にするがゆえに奮起し、暴露し、これに抵抗を示した。例えば、台湾の中時と、大陸の旺旺との買収合併のケースでは、教育界の教師、学生、公民団体が大量に立ち上がったばかりか、ネットで隅々まで発信され、多くの民衆が自発的に街頭に出てアピールするなど、壮大なメディア改革運動を形成した。これに喚起された中華民国政府は、メディアの多元化環境と合併案の審査を重視するようになり、厳しい条件つきで旺中合併案を認可した。また、立法院は反メディア独占法を改正することに着手した。一方、壱伝媒の買収合併案は、結局民間の強い反対により、買収側の業者が自ら撤回した[14]。これらは、自由世界の民衆の善良な力による勝利の第一歩と言えるだろう。
10数年にわたり、法輪功学習者が絶えず世の人々に真相を伝える過程を目の当たりにして、私たちは、良知と正義の力の偉大さ、貴さを確かに見た。一回また一回と、真相を伝える資料の配布がなされ、私たちは街頭、国会、法廷、あるいはメディア上など、どこでも真相を知ることができる。そうして世の人々は、是非を見極められるようになるのだ。法輪功学習者が、一つ一つ積み上げた被害者救援活動によって人々は真相を知り、身を挺して勇敢に立ち上がる。それは他者を助ける行動となり、世界を変えていくのである。
世論に詳しい著名な学者のウォルター・リップマン氏は、「事実がなければ、自由もない」と語ったことがある。冒頭にも述べたが、米国のリンカーン大統領も「人民に事実を知らせることが、国家を安全にする」と語った。専制政権が、いかに自由と真実を抑圧しても、いかにメディアをコントロールし、威嚇しても、そうした邪悪を抑制する方法は、実は簡単なのだ。皆が少しだけ努力をして、善良で勇敢な人々から手渡された資料から、真相を知れば良い。そうすれば、真相が完全に封鎖されることはなく、真実と正義の力は拡大していく。邪悪は必ず、その根を失って崩壊するだろう。
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[1] 鐘元〈法輪功當面要求高檢緊急拘提黃華華〉(法輪功学習者が直接台湾高等検察院に黄華華の拘束を求める)、(2010-08-17)
http://www.epochtimes.com.tw/10/8/17/145680.htm
[2] 張錦華〈一個台灣 兩個世界:從黃華華的報導談起〉(一つの台湾、二つの
世界:黄華華に関する報道から)、(2010-08-31)
http://www.epochtimes.com.tw/10/8/31/146676.htm
[3] 立法院〈第7屆第8會期交通委員會第9次全體委員會議紀錄〉(第7回第8会期交通委員会第9次全体委員会会議記録)、《立法院公報》、第100卷第74期、(2011-10-31)
[4] 林幸妃〈報告主任,我們買了《中時》〉(主任に報告、私達は「中時」を買
いました)、《天下雜誌》、第416期、(2009-02-25)
[5] 戴瑜慧〈中共“文化走出去”政策的新推手:中國私營資本家與海外媒體
收購〉(中共の文化を広げる新政策の新しい推進者:中国の私営資本家と
海外メディアの買収)、《中華傳播學刊》、(24),3-41、(2013)
[6] 張錦華〈比較美國2003年反鬆綁媒改運動和台灣2012年反媒體壟斷運動的異同〉(米国の2003年メディア規制緩和反対運動と台湾の2012年メディア独占反対運動の異同を比較)、《傳播研究與實踐》、3(2),1-37、(2013)
[7] 徐佩君〈學者轟旺中“言論自由即報老闆的自由”〉(旺中の「言論の自由は
即ち新聞社オーナーの自由」を学者が批判)、Apple Daily、(2012-05-07)
[8] 張錦華〈從van Dijk操控論述觀點分析中國大陸省市採購團的新聞置入及報導框架:以台灣四家報紙為例〉(van Dijkのコミュニケーション操縦理論から、中国本土グループの訪台に関する四つの台湾新聞紙のプロダクト・プレイスメントと報道を分析)、《中華傳播學刊》、(20),65-93、(2012)
[9] 李真〈名嘴遭調職 港言論空間被限縮〉(名キャスター離職 香港の言論再度抑圧される)、(2013-11-22)
http://www.epochtimes.com.tw/n76215.html
[10] 庫斯克〈他們斬的不只是劉進圖,而是所有香港人〉(彼らが切ったのは劉進図だけでなく、すべての香港人)、(2014-02-26)
http://www.storm.mg/article/22522
[11] 草魚禾〈免於恐懼的自由——香港新聞自由的嚴冬〉(恐怖からのがれる自由―香港報道自由の後退)、(2014-08-04)
[12] 葉一堅〈台灣人,你們也很了不起〉(台湾人、あなた達もすごい)、Apple Daily、(2014-06-23)
[13] 劉力仁〈余英時籲台灣人:不要有恐共症〉(余英時、台湾人に呼びかける:共産党恐怖症を無くそう)、《自由時報》、(2012-05-05)
[14] 張錦華〈比較美國2003年反鬆綁媒改運動和台灣2012年反媒體壟斷運動的異同〉(米国の2003年メディア規制緩和反対運動と台湾の2012年メディア独占反対運動の異同を比較)、《傳播研究與實踐》、3(2),1-37、(2013)
執筆者:張錦華(ちょう きんか)
米国オハイオ州立大学ジャーナリズム学博士、台湾大学新聞研究所教授、優秀報道賞基金会理事、NCC衛星ラジオ・テレビ事業審査委員、元台湾大学新聞研究所所長、台湾大学人口と性別研究センター主任、衛星放送組合自律諮問委員会召集人、中華ジャーナリズム学会理事長、2009年に教育部20年勤務優秀教師賞を受賞。
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