英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は17日、中国の台湾政策を担当する国務院台湾事務弁公室(以下、国台弁)が、台湾衛星放送局の「中天電視」と新聞紙「中国時報」の報道および編集に介入していると報じた。これを受けて、台湾では大きな波紋を呼んだ。国内メディアを管轄する政府機関、国家伝媒通訊委員会(NCC)は18日、同件に関して調査を行うと発表した。
FTは報道で、国台弁の幹部が「中天電視」と「中国時報」の記者や編集幹部を支配しており、「毎日、両メディアの報道について電話で指示していた」とした。両メディアと国台弁は、FTの指摘を否定し、「フェイクニュースだ」と反発した。
NCC担当責任者の陳書銘氏は18日米ラジオ・フリー・アジア(RFA)に対して、「すでに中天電視と中国時報の関係者を呼び出し、事情を聴いた。これに基づき、今後調査を進めていく方針だ。もし、台湾の関係法令に違反があった場合、処分を行う方針だ」
行政院(内閣)の谷拉斯・報道官は同日、台湾は言論と報道の自由を尊重する国家であると強調したうえで、渦中の中天電視に対して国民に説明責任を果たすようにと呼び掛けた。報道官は今後、法令に従い立件捜査するとの意向を示した。
台湾の立法院(国会)は6月、国家安全法改正案を可決したばかり。改正案は、国家の社会安定に危害を与えることを目的に、中国当局のために資金提供をし、組織を発展させる台湾国民には、7年以上の懲役と最高1億台湾ドル(約3億4600万円)の罰金を科すなどとした。
大紀元の取材に応じた台湾大学新聞(報道)研究所の張錦華教授は19日、中国当局は「企業買収、広告掲載などの方法で、台湾メディアへの影響力を高めてきた」と指摘した。
親中企業と知られている台湾食品会社、旺旺集団の蔡衍明氏は2008年、204億香港ドルの個人資産を投じ、「中国時報」「工商時報」「中天電視」などを傘下に置くメディア企業の「中時集団」を買収した。当時、台湾の世論はこの買収案をめぐって強い関心を寄せた。
在米中国人経済学者、何清漣氏は同著書『紅色滲透:被中国買下的台湾新聞(紅い浸透:中国に買収された台湾の報道業界)』において、「2008年12月5日、中時集団を買収した蔡衍明氏は、国台弁のトップである王毅氏と会談し、買収の詳細を説明した。蔡氏は中時集団を買収した理由について、『メディアの力を借りて、台湾と中国本土の関係をさらに発展させていきたい』と話した」と記述した。
一方、RFAによると、台湾新聞記者協会の陳益能・事務局長は、国台弁が親中メディアをコントロールし、さらに資金を提供したことによって、台湾の報道の自由が深刻に侵害され、不公平な報道が頻繁に行われるようになったとの見方を示した。
NCCは17日、今年5月に台湾の11のテレビ局がゴールデン・タイムで放送するニュース番組を観測し調査した結果を発表した。各テレビ局が最も長く報道した政治家トップ5人は、韓国瑜・高雄市長(国民党)、柯文哲・台北市長(無所属)、鴻海(ホンハイ)精密工業創業者の郭台銘氏、蔡英文総統、賴清徳・前行政院長(首相)の順となった。
各テレビ局別でみると、台湾電視公司が最も長く報道している人は柯文哲氏で、中華電視公司は賴清徳氏、他の9つのテレビ局はすべて韓国瑜氏に集中している。
近年、一部の台湾メディアが中国当局のためにプロパガンダを行い、蔡英文政権を批判する報道が相次いでいる。
国台弁傘下のプロパガンダサイト、「中国台湾網」は今月9日に評論記事を掲載し、中国当局寄りの国民党の肩を持ち、来年の台湾総統選挙で民進党の蔡英文総統が再任することはないとの見方を示した。
台湾紙「蘋果日報」によると、「民生新聞網」「華民通訊社」など23の台湾ネットメディアが9日、直ちに「中国台湾網」の評論記事を編集せずにそのまま転載した。しかし、蘋果日報は、台湾市民はこの23のネットメディアを聞いたことがなく、中国当局の代理人である可能性が高いと指摘した。
蔡英文政権は、中国共産党政権の影響力を食い止めるため、「外国代理人登記制度」の早期成立を目指している。
台湾市民は6月23日、台北市で「赤色」メディアの浸透に抗議するデモを行った。主催者側によれば、数万人の市民が参加した。
(翻訳編集・張哲)
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