最近、なにかと話題となっている「働き方改革」、生産性をあげるべく長時間労働の解消をめざし残業や休日出勤を減らしているものの、めざましい結果をあげる企業がある一方、なかなか進まず成果をあげるのが難しいと感じている企業も少なくないようです。
『ITエンジニアの「海外進出」読本』(幻冬舎)では、2名の現役ITエンジニアの二人が、海外プロジェクトを進める際のポイントを紹介する中で海外の働き方について提言をしています。
休暇が確保されてはじめて仕事が動く
「外国人は仕事よりもバカンス優先」――国によって違いはありますが、海外で働く日本人の多くが納得するところでしょう。ITエンジニアとして海外で働くことの多い私たちも、慣習の違いを身をもって実感しています。
例えば、ベトナムやフィリピン、韓国などの国々は、日本の働き方に比較的近いようです。しかし、大まかにいって、残業や休日出勤はしないというのがグローバルの常識と思っておくのがよいでしょう。
そのなかでも国が厳しく労働時間制限をしているのが、ブラジルです。日本でも昨今「働き方改革」が話題で、政府や自治体は残業や休日出勤を減らそうと一生懸命になっていますが、ブラジルの現在の制度を知ったら、「改革」という言葉を使うのが恥ずかしくなるかもしれません。
ブラジルでは、管理職も含めて、1年のうちに連続30日のバケーション休暇(しかも有給)を与えなければいけないという決まりがあります。また、1週間の労働時間は44時間までと厳しく制限されています。残業は1日2時間までで、残業代として50%割り増しの給料を支払わなければなりません。
欧米諸国も進んでおり、ドイツでは6カ月継続勤務した人に、最低24日の有給休暇を取得する権利が与えられます。フランスでは年間5週間の法定最低休暇があり、スウェーデンでは1日6時間労働の試みが始まりました。オランダは週4日勤務が当たり前になりつつあります。
バケーションの分だけ納期も遅くなる
日本は「電車が時刻表どおりに来る」という世界でも珍しい国で、プロジェクトの納期遅れなどにも敏感です。しかし、バケーションをしっかりとる国では、納期遅れをあまり気にしない(気にしてくれない)こともしばしば……。
ITエンジニアである我々の場合、コンサルタント、システムエンジニア、業務ユーザー、マネージャー、経営者などと一緒に仕事をしますが、業種、役職にかかわらず全員が休暇についてのルールに従います。そして、バケーションについても、本人が取ると決めている日をあとから調整するのは事実上不可能です。日本のように残業や休日出勤で遅れをカバーするということはあり得ませんから、プロジェクトで動くときには、チーム員のバケーションに合わせた進行計画を立てなければ、バケーションの長さだけ納期が遅れていくことになってしまいます。
そうした国は多いのですが、なかでもブラジルでは特に、大きめのバッファーを取った余裕あるスケジュールを立てる必要があります。そのバッファーの大きさたるや、ふだん日本で仕事をしている人には想像もつかないものだと言っておきましょう。そして、そのバッファーはたいてい使い果たされます。
一長一短があるにせよ、私たちも海外の「働き方」を参考にしてみてもいいのかもしれません。
(出典 株式会社 幻冬舎)
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