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ギリギリの圧力と条件付き接触 米中の対北朝鮮「アメとムチ」政策

2017/09/10
更新: 2017/09/10

北朝鮮政策は強硬路線に切り替えているとみられる習政権。中朝を結ぶ貿易の重要ルートである橋を閉鎖するとの制裁を検討しながらも、中国主導の「一帯一路」経済サミットには、北朝鮮代表団を招いた。一見、矛盾しているように見えるが、実はトランプ大統領がここ最近で行ってきた一連の外交手法と共通点がある。

中国と北朝鮮貿易の最重要ルートを閉鎖

中国外交部の消息筋はラジオ・フリー・アジア(RFA)の取材に対し、北朝鮮に対する中国の経済制裁の一環として、中国側が両国を結ぶ中朝友誼橋(鴨緑江大橋)を閉鎖する可能性があることを吐露した。

習政権は北朝鮮への金融制裁や貿易制裁を強めている。今年2月にも、北朝鮮からの石炭輸入禁止措置を取った。中国外交機関の別の関係者も、次に打つ手はこの橋の閉鎖だと語っている。「これは、北朝鮮の核実験準備に対して発した警告であり、北朝鮮が国営メディアで中国を非難したことに対する回答でもある」とこの人物はRFAに述べた。

この橋は、中国と北朝鮮を結ぶ物流のパイプラインとして、友好関係を示す数少ないシンボルの一つ。韓国の聯合ニュースによると、2国間の貿易の半分は、この橋を通過する国際列車やトラックによって行われているという。

RFAの取材に答えた丹東市の消息筋によると、北京当局は現在、北朝鮮向けのすべての貨物に全面的な審査制度を行っているほか、北朝鮮の貿易関係者の人員を削減するよう、北朝鮮に圧力をかけている。もしこの橋が閉鎖されれば、北朝鮮経済にとって致命的なダメージになりうると報じている。

北朝鮮を「一帯一路」サミットに招待

こうした強硬姿勢を示しながらも、北京当局は5月14日から始まった「一帯一路」経済サミットに北朝鮮代表団を招待し、経済関連のプロジェクトへの一層の参与を求めた。中国側が招待したのは北朝鮮をふくむ28国。北朝鮮からは、金英才(キム・ヨンジェ)対外経済相が参加した。

「一帯一路」構想とは、中国が数十億ドルを投資して行う、アジアと欧州やアフリカまでを結ぶ一大経済圏構想。14日のサミット開幕式には、習近平国家主席は、政府系ファンド「シルクロード基金」に新たに1000億元(約1兆6000億円)を増資すると表明した。

最高指導層人事入れ替えの党19大前、北朝鮮に「アメとムチ」を行う習政権の狙い

中国主導の経済サミット「一帯一路」が北京で5月15日、16日に開かれた。円卓会議の様子(Getty Images)
 

あるアナリストは、北朝鮮に対する習政権の方針が、強硬姿勢一点張りでなく「アメとムチ」政策を取っているようだと指摘している。米国の対北朝鮮政策に歩調をそろえる一方で、今年の秋に予定されている19大の前に波風を立てたくないという思惑があるからだとも分析している。

ニューヨーク在住の政治評論家・朱明氏も、習主席は今秋の19大で最高指導層の人事入れ替えに直面し、内政、特に腐敗官僚の処理に集中するため、今の時期は国際関係を穏便に保ちたいと考えているのではないかと分析する。

また、北朝鮮という「ならず者国家」に対しては、アメとムチの政策以外、効果的な術がないと指摘する声もある。

米国は条件付きで北朝鮮との対話の可能性を表明

習政権のこうした手腕は、米国が北朝鮮に対し示してきた戦略と相通じるものがある。

米国と北朝鮮特使は5月8日、ノルウェーで会談を行い、半年間の断絶状態に終止符が打たれた。日本メディアは、緊迫する朝鮮半島情勢から現状を打開するため、中国側が密かに米朝双方の意向を伝える仲介役を担ったのではないかと報じた。

共同通信社は5月9日、複数の外交筋の話として、北朝鮮が核・弾道ミサイル開発を放棄すれば、トランプ政権は金正恩総書記の訪米を招請し、首脳会談を行う用意があると伝えた。米国は北朝鮮の体制維持と、38度線停戦ラインを超えて北朝鮮を攻撃しないことを保証し、朝鮮半島の統一も急がないと表明している。トランプ政権はすでにこのことを北京側に伝えている。

同記事では、トランプ政権がこうした発言を行ったのは、北朝鮮側の態度を軟化させ、朝鮮半島の緊張を緩和する狙いがあるからだと指摘している。米国のこうした硬軟とりまぜた戦略について、東アジアで戦闘が起きることを懸念する日本政府も支持を表明している。

トランプ政権の対北朝鮮の手法は「ギリギリの圧力」と「条件付き接触」であり、米国と北朝鮮を再度交渉のテーブルにつかせるよう、北京側も密かに根回しに動くだろうと指摘する分析もある。

(翻訳編集・島津彰浩)

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。
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