中印領有権紛争、中国最高指導部で対応分かれる 専門家「進退両難」

2017/08/14
更新: 2017/08/14

中印の軍隊が、中国とブータンの領土係争地のドクラム地区(Doklam、中国名:洞郎)で2カ月近く対峙し、双方とも引くに引けず緊張が続いている。ここにきて、中国最高指導部内部でこの問題への対応が大きく分かれているのが浮き彫りになった。習近平陣営がこれ以上の事態の悪化を避けたいが、一方、江沢民派武力行使を煽っているという分析が出ている。

ブータン国境で中印がにらみ合う 
領有権紛争が再燃 1962年来の緊張状態

対峙が起きてから、中国外交部はたびたび、インド軍の「国境超え」を厳しく非難してきたものの、軍事行動は示唆していない。いっぽう、政府系メディアの環球時報は「インド軍が撤退しなければ、戦争で解決する」と強硬な論調を繰り返している。中国政府の関係筋はロイター通信に対し「双方のメディアが事態を煽いでいるため、両国政府とも後に引けなくなっている」と語った。

大紀元の中国問題専門家は、環球時報の報道は、戦争を望む江沢民派の指図であるとの見方を示す。「係争地は地理的には中国に不利とみられている。習近平政権を追い詰めたい江沢民派は、敗戦を機に政権奪還を狙う」と分析した。

江沢民派の思惑を打破するためか、習近平陣営は異例の策を講じた。中国国防省はこのほど、水面下で、インドのメディアを招いて対話を行ったのだ。その席で、国防省の任国強・報道官は環球時報を名指して、国内タカ派の政府メディアの武力行使論は、最高指導部の方針を反映しないと述べた。

世界5大シンクタンクの一つ、米戦略国際問題研究所(CSIS)の政治学者サラ・ワトソン氏は、米国営放送ボイス・オブ・アメリカ(VOA)に、中印問題についての見解を示した。「中国政府系メディアの強気すぎる論調により、指導部が内外にメンツを保ちつつ事態を収拾するのが難しくなり、進退両難に陥っている」「例えインド軍が譲歩し先に撤退しても、中国軍が同係争地での道路建設を再開すれば、インド軍が戻ってくる可能性がある。道路の建設を取りやめたら、自らの領有権の主張が成立しないことを認めてしまう」といずれの状況でも習近平指導部の裁量が難しいと同氏はみている。

大紀元の政治評論家は「共産党指導部が道路の建設を『静かに』やめて、そのうえ報道規制をはかり、ピリオドを打つ可能性が高い」と予想した。

インドのメディアによると、両国の軍上層部は8月に入ってから、2回の協議を行った。双方の軍隊の同時撤退を主張するインド側に対し、中国側はインド軍の先の撤退を求めて譲らないため、事態収束に向けた進展はないもよう。

(翻訳編集・叶清)