ロシアのシリア空爆 欧米は「アサド政権支援」を懸念

2015/10/07
更新: 2015/10/07

 シリア空爆を続けるロシアは、過激派組織IS(イスラミックステート)の拠点50カ所以上を破壊したと成果をアピールし、今後、空爆を強化する方針を示した。一方、米英諸国は、ロシアの空爆はISの壊滅ではなく、アサド政権の支援が目的と批判。ロシアの介入により、シリアの情勢がさらに複雑化するとの懸念を示している。

 シリアでは2011年からアサド政権と反政府勢力の間で内戦が続いている。さらに2014年、シリア・イラクでIS勢力を急拡大させ、三つ巴の争いとなった。今年は欧州への難民や移民が急増した。EUは今月、今後2年間で各国に16万人を割り当てる案を発表した。

 ロシア軍参謀本部高官は3日の記者会見で、9月30日から行った空爆について「空軍機が計60回以上発進し、ISの50以上の施設を破壊した」とし、ISの戦闘員約600人が撤退したと発表した。また、空爆を続けることを強調した。

 一方、欧米諸国は、ロシアの軍事行動はアサド政権支援の傾向が強く、対立をさらに激化させているとの懸念を示した。

 ファロン英国防大臣は英大衆紙サン(The Sun)の取材に対し、「ISの拠点を標的としたロシア軍の空爆は、わずか5%で、殺害された人の大半は市民や反政府勢力の戦闘員だ」と述べた。ハモンド英外務・英連邦大臣は3日、「ロシアはアサド政権を支援するため、一般市民を大量に殺している」と批判し、ロシアの介入でシリア問題が「より複雑化した」と指摘した。

 オバマ米大統領は2日ホワイトハウスの記者会見で、ロシアの空爆は「(情勢を)泥沼化し、逆効果だ」と強く非難した。アサド政権退陣へ向けた政権移行が「内戦を解決する唯一の方法」と述べた。カーター米国防長官は「ロシアの行動は火に油を注いでいる」と一蹴した。

 対するアサド大統領は4日に放送されたイラン国営テレビのインタビューで、昨年9月からシリア領内で対IS空爆を続ける米国主導の有志連合は「1年経過しても成果を出せない」と批判したうえ、ロシアとシリア、イラン、イラクが結束する「テロとの戦い」は成果を得られるとし、ロシアの軍事介入を歓迎する姿勢を示した。

(翻訳編集・叶子)

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