【大紀元日本3月9日】公開1日で1億回再生されるほど話題をさらった中国の大気汚染問題を告発するドキュメンタリー映画「穹頂之下(碧空の下)」は、当局の内部禁止令により中国国内では視聴できなくなった。仏RFIラジオが8日報じた。
それによると、共産党中央宣伝部は6日、すべての国内メディアに対し「同ドキュメンタリーの放送を禁止する」と通知し、評論記事の削除を命じた。7日、全国で注目されていた「穹頂之下」がネットサービス大手の「テンセント」や大手動画配信サイト「優酷」など各サイトから姿を消した。
宣伝部は3日にも国内メディアに電話で通達している。「機密」と記されたその内容は、画像に加工されネットに出回った。「両会をめぐる報道で、話題になっている敏感なテーマを扇情的に報道してはならない。代表委員の議論に良好な世論のムードを作り、世論をしっかりコントロールすべきだ。柴静と『蒼穹之下(原文ママ)』について報道してはならない。これを口実に政府への攻撃的な言論が起きるのをふせぐべきだ」と宣伝部は指示したという。
伝えられるところによると、同画像をネットに流出させた中国の金融経済情報専門メディア『第一財経(上海)』の記者は現在、停職処分を受け、失職する可能性もあるという。
同ドキュメンタリーは中国中央テレビ(CCTV)の元キャスターでベストセラー作家の柴静さんが自費で作成し、2月28日にインターネットの無料動画サイトで公開され、大きな話題となった。
公開前日の27日に着任した陳吉寧・新環境保護相が柴氏に「敬意を表する」とメールを送っている。28日、共産党機関紙人民日報電子版は同ドキュメンタリーの発表を報道し、柴氏の独占インタビューを直後に掲載した。映像には環境保護部門、石油部門などの関係者が登場し、意見を述べていた。
中国の国会に当たる全人代の開会前にタイミング良く発表されたことから、企画から制作、宣伝まで「政府部門の後押しがあった」との見方が浮上した。石油業界をはじめとする国有企業の汚職撲滅、改革を進めようとする習近平体制の意に沿ったドキュメンタリーとの指摘も出ている。
市民の間からも、環境問題を果敢に取り組んだ柴さんに賞賛する一方で「大気汚染の根本的原因は共産党一党体制による弊害が背景にあるが、柴さんはこれについて強く批判していない」と疑問視する声も少なくない。
風向きが政府批判に変わりつつあるのを見て、当局はすでに3億人が視聴したとするドキュメンタリーの封鎖に踏み切った可能性が高い。
動画:柴静/『穹頂之下』 中国のPM2.5問題ドキュメンタリー【日本語字幕】
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。