直訴者逮捕、1人につき20万元罰金 中国政府の必殺技

2012/03/07
更新: 2012/03/07

【大紀元日本3月7日】 中国では中央政府の主要会議の会期中に、全国各地からは大勢の人が北京に押し寄せて、直訴を試みるのが慣例だ。一方、社会の安定を脅かすなどの理由で、このような直訴者は往々にして地元に強制送還される。今年は、その取締が一層強化された。内部情報筋によると、逮捕した1人につき、その居住地の地方政府は北京市警察当局に20万元の罰金を払わなければならない。

3月は「両会」、10月には「十八大」という最高指導部の主要会議が開催される。それを受けて、2月末、北京市では社会安定を維持するための緊急会議が召集された。市共産党委員会の副書記長・王安順氏はその席で、社会安定の維持は最重要の政治任務であると通達した。

インターネット情報によると、今回の「両会」の期間中に、警備にあたる人数は計70万人、「両会」の参加者を多めに予測して5千人と想定した場合、平均1人の参加者は140人の警護を受けることになる。

北京市政府機関に勤めるある幹部は大紀元時報の取材に対して、その一部を証言した。

それによると、今回、直訴者を逮捕したら、警察当局はこれまでのように監禁するのではなく、直接地方政府の北京駐在局に身柄を引き渡す。そして、1人の直訴者につき、地方政府は20万元(約260万円)の金を上納する。その狙いは、警察当局の取締強化を刺激するほか、各地方政府に陳情者を地元に封じ込めさせる。まさに一石二鳥の策である。

この幹部曰く、去年年初中東やアフリカで発生した民主活動・ジャスミン革命が北京で勃発するのを防ぐためだという。

「重慶市の副市長・王立軍が成都市の米国領事館に逃げ込み、政治庇護を求めたこと、そして、王立軍の身柄を取り戻すため、その上司、同市の共産党委員会の薄煕来・書記長は70台のパトカーを動員して、同米国領事館を包囲したこと。このような大事件すら、最高指導部は会期中の安定維持のため、隠し通そうとしている」と同幹部は分析した。

河北省在住の直訴者・李鳳華さんは大紀元時報の電話取材で実体験を証言した。

それによると、直訴を受付ける中央機関「国家信訪弁公室」では3月1日、各地方政府の関係者が溢れ出していた。その風景はまるで警察と競って、陳情者を奪い合っていた。2月28日、彼女は北京南駅で警察官らが直訴者を逮捕する現場を目の当たりにした。大勢の警官が人間の壁を作って直訴者らしき人物を包囲し、現場から強制連行していた。現場を写真撮影することすら出来なかった。

「多くの直訴者は強制送還されてから、監禁施設に投獄されたり、自宅で監視されたりしている」と李さんは話した。

ボイス・オブ・アメリカ(VOA)の関連報道は、遼寧省在住の直訴者・馮偉さんの遭遇した状況を伝えた。それによると、馮偉さんは北京に到着した当日、「国家信訪弁公室」に訪れてから、旅館に戻った直後、警官数10人が旅館に押し寄せ、彼女を地元に送り返して投獄した。

取締の対象は直訴者だけではない。全国各地の民主・人権活動家たちも、「重点な警戒対象」として厳しい監視を受けている。VOAによると、山東大学の元教授の孫文広氏は例年通り「特別な世話」を受けている。警察チームは4交代で24時間の監視体制を敷き、このような状況は「両会」が終了するまで続く見込み。

人身の自由が制限されるのを避けるため、一部の政権異議者は自ら北京を離れた。また、公で不謹慎な発言を自粛するという誓約書に署名を強要された人も少なくない。ウェプサイトでは、一部の有名人権・民主活動家のIDが使えなくなったという。

中国政府がこのほど公表した2011年の統計によると、社会安定を維持する経費ははじめて軍事費用を超え、6240億人民元(約8.1兆円)に達した。

 (記者・唐銘、翻訳編集・叶子)

※タイトルと一部文章を修正しました。(3月9日10時)