【大紀元日本12月10日】最近のインターネットによる情報によると、武漢市紡織大学の三年生の女子大生が求職活動中に殺害され、腎臓が摘出された。警察当局は声明文で、殺人事件は事実だが腎臓摘出はなかったと公表した。中国の警察当局の声明は事実であろう。臓器摘出には、受け入れ側と提供側の相性が関わる。殺害後に腎臓を摘出して成り立つ商売ではない。しかし、中国では臓器売買が氾濫しており、現在の中国は世界最大の臓器提供市場であるという、中国政府にとって注目されたくない現実が、この事件により再び水面に浮上した。
中国の極めて汚い二つの産業:人身売買と人体の臓器売買。
人身売買の歴史は長い。中国では、社会のおちこぼれ層の集団犯罪だった。近年では政府幹部も乳児の売買に加担しているという情報が流れている。例えば、湖南省邵陽市での「隆回県邵氏孤児案」は有名だ。湖南省邵陽市隆回県で、『一人っ子政策』の執行機関が長年にわたり、農民が不法な手段で手に入れた乳児という理由で、計20人近くの乳児を親元から強制に取り上げた。実際のところ、大半の乳児は被害農民の実子で、第一子も含まれていた。被害者の親たちが、長年にわたり挫けずにわが子の行方を捜し続けたため、事件はようやく明るみに出た。その後、乳児たちは皆、国内外で養子として引取られていたことが判明した。里親たちは皆高い料金を払っていた。
一方、もう一つの産業である人体の臓器売買は、提供者や一連の医療技術が要されるため、当初から監獄と医療機関が提携する「経済活動」だった。私はこれまで、この業界は残酷すぎるため避けて通っていた。しかし、中国の低層社会の生きる空間が狭まり続ける中で、なぜ中国が移植用臓器の供給大国になったかという問題を分析する必要性を痛感し始めた。
中国の臓器供給の産業化を分析する前に、まず、中国が臓器供給大国になった詳しい経緯を明確に説明しなければならない。臓器移植は世界の医療技術の頂点だが、中国における研究と成長の道のりは、国際医学の倫理に背反している。臓器の提供者たちは自由な意思判断が剥奪された囚人であるためだ。この悪知恵は、中国政府によるものだった。囚人の臓器を摘出して移植に使う。改革開放の後に始まった話ではなく、文化大革命の時点からすでにスタートしていた。言論と思想が災いとなり、反革命分子と定められた江西省の李九蓮さんは、殺害されてから腎臓が摘出された。某高官の子弟が腎臓病を患っており、移植が必要だったからだ。また、死刑と処された政治犯で『出身論』を著述した遇羅克さんの臓器も、北京在住の共産党の英雄に移植された。妹の遇羅錦さんが証言している。
改革開廟xun_ネ来、中国では各種の臓器移植手術の事例が増え始めた。死後の臓器提供を呼びかけても、ドナーになる人は極めて少ない。移植を必要とする受け入れ側に比べて、提供側のドナーの数は少な過ぎる。各種ルートで得た情報によれば、囚人は依然として臓器の主要供給源である。これは公然の秘密である上、中国では、監獄外の人間にも人権がないため、このような異類な者の人権はなおさら、誰も気にかけない。
2005年あたりになると、中国は世界最大の臓器提供国だという事実は隠し通せなくなった。その原因の一つは、(中国政府に集団弾圧されている)法輪功の学習者が惨い死を遂げた同修のため、絶えず国際社会で呼びかけているためだ。この法輪功に関しては、2006年年初、病院関係者から複数の内部告発があった。中国の監獄と病院が結託して、監禁中の大勢の法輪功学習者を殺して、その臓器を摘出・売買し、暴利を貪っているという証言だった。後にカナダの人権派弁護士と元外交官が独立調査団として52種類の証拠を調査収集し、法輪功学習者を対象とする臓器狩りは紛れもない事実であるという結論を出した。国際社会の圧力の中で、中国政府は自国の臓器提供は確かに灰色の領域であると逃げ隠れしながら認めるしかなかった。
2005年11月7日~9日、マニラでの世界保健機関(WHO)の会議の席で、「中国の臓器移植において、生体提供者は5%にも及ばず、95%以上は死者からの提供であり、ほぼ100%が死刑囚だ」という内容を中国政府の高官が初めて認めた。中国衛生部の黄潔夫・副部長はこの会議で、「21世紀の医学の頂点」とされている臓器移植の技術は、中国では1970年代半ばに臨床実験が始まっていたと示唆した。しかし、これに関する科学研究の論文は、権威ある国際学術誌には発表できなかった。その直接的な原因は、中国医学界が臓器の提供源を説明できないことにあった。情報が不透明である上に、臓器提供の倫理問題を避けているからだ。
このWHO会議では中国に二つの成果があった。一つは、中国誌「財経」がようやく、メディアの立ち入りを遮る重厚な門を開いたことだ。「臓器移植:規制を急ぐ地帯」と題する報道(2005年第24期)は、中国メディア史において、記念すべき記事だ。もう一つの成果は、新たな産業を誕生させたこと。つまり臓器供給産業である。国際医学界に認めてもらいたいという切望から、中国医学界は「中国のお国柄に適合しながら、国際社会に広く認められる臓器供給源」を早急に確立しようとしていた。中華医学会臓器移植学会の陳忠華・副主任委員によると、2003年から2009年5月にかけて、死後の臓器提供のケースは中国国内で130人しかいない。一方、毎年、臓器移植を必要する患者数は150万人に達する。このような状況において、「頭のてっぺんから足の裏まで、全身の毛穴から血が流れ出ている」ことに目をつけた汚い産業ー臓器売買が誕生した。
中国は決して資源豊かな国ではないが、一つだけ豊富な資源がある。それは人間である。このため、人間を売買の対象とする産業がいくつも生まれた。一つ目は人身売買、二つ目は肉体売買(売春産業)、三つ目が臓器売買。いまでは、前者二つの産業は供給が多すぎるため、値段が下落する一方だ。政府NGOの調査報告書「中国誘拐婦女の現状」の公表データによると、成人女性は1人につき6000元~2万元(7万2千円~24万円 1元=約12円)の売値である。男の乳児の売値は1人2万元~4万元(24万円~48万円)で、女の乳児は1人8000元~2万元(9万6千円~24万円)。売春産業では処女も300元~数千元(3600円~数万円)に留まるが、臓器売買だけは暴利を得られる新産業となった。中国では臓器提供の志願者を募る産業である臓器売買の仲介業が誕生した。中国医学会は、合法的に提供源を得ることとなり、臨床研究の成果も国際学術誌で発表できるようになるかもしれない。一方、臓器提供者の大半は貧困で身寄りのない人たちである。臓器を売った金もほとんど仲介業者に取られてしまう。例えば、15万元(180万円)で売られた肝臓の提供者は2.5万元(30万円)しかもらえない。暴露された資料によれば、提供者全員が志願者というわけではない。仲介業者に騙された末、強制的に臓器を取られた人も少なくない。総じて言うと、この地下産業チェーンは、無限に罪悪を生み出している。
冒頭の女子大生が腎臓を取られて殺されたというデマ情報について、なぜ多くの中国人が信じてしまったのか。その理由は明確だ。臓器移植に様々な医学技術が不要であれば、中国という無法の限りを尽くす社会では、人を殺して臓器を得ようとする悪者が現れることは間違いない。いま、この種の臓器売買はすでに提供者の生存をまったく考慮していない。例えば、術後の看護、薬物治療、長期にわたる健康状況の調査、回復治療などは一切ない。あるとしても、提供者がもらった僅かな金から、その費用を払えるはずがない。
人間を畜生のように扱う臓器市場は、中国の恥だ。
注:何清漣
ニューヨーク在住の中国人経済学者・ジャーナリスト。54歳、女性。中国湖南省生まれ。混迷を深める現代中国の動向を語るうえで欠かすことのできないキーパーソンのひとりである。中国では大学教師や、深セン市共産党委員会の幹部、メディア記者などを務めていた。中国当局の問題点を鋭く指摘する言論を貫き、知識人層から圧倒的な支持を得たが、常に諜報機関による常時の監視、尾行、家宅侵入などを受けていたため、2001年には中国を脱出して米国に渡った。1998年に出版した著書『現代化的陥穽』は、政治経済学の視点から中国社会の構造的病弊と腐敗の根源を探る一冊。邦題は『中国現代化の落とし穴』。
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