<赤龍解体記>(19)北京の中央攻撃は胡錦涛の意図か

2011/06/20
更新: 2011/06/20

北京日報」は6月13日、「党政官員は公民社会の発展を激励、支持すべき」という文を掲載し、注目されている。注目される理由は三つ。一つは本文の作者は胡錦涛のブレーンと言われる人物。二つはこの文章の矛先が中共中央政法委員会に向いていること。三つは地方紙で中央を批判するという異常である。

 ■「公民社会」は西側からの落とし穴

 5月16日、中共中央政法委員会の周本順秘書長が、中共中央機関誌「求是」に「中国的特色のある社会管理の新しい道を歩もう」という文章を発表した。

 文章の中で、周氏は現代社会の基本概念「公民社会」を「ある西側の国」からわが国に「仕掛けられている落とし穴」であるとし、それを盲信せずに誤った情報を伝えないようにすべきであり、さもなければこの「落とし穴に落ちてしまう」としている。

 現代社会の常識を無視した周氏の論調に対し、中国の民間や学界から多大な反響、反発が起きている。

 しかし、この理論は彼個人の独創ではない。先般、中共宣伝部は各メディアに通達を出し、「公民社会」という概念を使用しないよう禁止令を出した。これを受けて、あるメディアはやむをえず、「公民社会」のかわりに「民間社会」などのような呼称を以って代用している。

 周の文章は、NPOのような社会組織に対し、警戒と敵視をもち、規範と指導を強化し、それらを「党と政府が主導する」社会管理システムに納めなければならないと強調している。そして、事前に「安全弁」を設け、「下心のある」社会組織の繁殖を防止すべきとしている。

 ■胡錦涛のブレーンからの異論

 上記の論調に対し、胡錦涛のブレーンで中共中央編訳局副局長の兪可平氏が、「北京日報」で「党政官員は公民社会の発展を激励、支持すべき」との文章を掲載し、周本順の「公民社会は西側からの落とし穴」という論に対立し、真正面から反論している。

 兪氏は、「中国における公民社会の制度と環境は、全体的に言えば、激励より制約の方が大きく、重要な法律法規もなお完備されていない」として、中国の公民社会の現状を厳しく見ている。

 公民社会に対する認識をより正確にし、ある人々の公民社会への誤解を変え、公民社会のへの態度を切り替えるべきだと主張している。とりわけ、各階級の党政官員は公民社会を育成し発展させる戦略的意義を深く認識しなければならず、よって「積極的に激励し、支持し、協力する態度」をとるのであるという。

 「健全な公民社会がなければ、真の調和社会はありない」、現在「些かの偏見が依然として存在し、とりわけ(深刻なのは)社会の組織などを政府の生まれつきの敵対とする」ことである。したがって、彼は中国の官員に「公民社会を激励し、支持するように」と、周の論調を否定しつつ呼びかけ、また次のように指摘する。

 「法に則って社会組織を管理し、社会組織への管制緩和を速め、かわりに育成と扶助をより多く与え、社会組織を幅広く受け入れ、公共政策の策定に参与するようになすべきである。とりわけ、社会組織が社会管理などにおける重要な役割を発揮し、それぞれの社会組織がより多くの公共的奉仕を担うことを励ますべきである」

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 しばしば先鋭的観点で注目される兪氏の文章は、彼の観点というより胡錦涛の弁を代言したもの、すなわち胡錦涛の意図により作成されたものと言われている。

 つまり、周氏の文は公民社会が西側の国から中国にしかけている落とし穴としたうえ、中国における公民社会に死刑を下したため、国内で強烈な反発を受けるほか、国際社会でも中国のイメージが素早くダウンしている。圧力を背負っている胡錦涛は、その責任を中央政法委員会になすりつけて、自分はこの「公民社会の落とし穴」論と無関係だと弁ずるものという。

 十八大の開会を控えている今、このような事態が従来の権力闘争をより一層激化させ、中共のさらなる分裂をもたらすにちがいない。
 

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