福島レベル7への見解=中国人放射線防護専門家

2011/04/15
更新: 2011/04/15

【大紀元日本4月15日】経産省原子力安全・保安院が12日、福島第一原発事故のレベルを最高の7に引き上げた。25年前に発生した史上最悪のチェルノブイリ事故と同じレベルとなったことに対して、日本のみならず海外からも不安の声が上がった。なぜ今頃になって評価のレベルを上げたのか、チェルノブイリ事故とどう違うのかなどについて、在日の中国人放射線防護専門家であり、元中国環境保護部・核&放射線安全センター研究員の李旭彤博士に見解を聞いた。以下は李氏の語った内容である。

深刻だがチェルノブイリほどではない

日本原子力安全委員会の推定により、事故発生の3月11日から4月5日までの期間、福島第一原子力発電所から放出された放射性物質は、放射性核種をヨウ素に換算して、630PBq(ペタベクレル)(注:ペタは1000兆)に達した。この数字は福島第一原発の全放射能のおよそ10%を占めるという報道がある。保安院によると、福島事故において、発電所外への放出量はチェルノブイリ事故の約十分の一と見ている。また、イギリスの「ニューサイエンティスト」誌オンラインの3月24日付け報道によると、オーストリアの研究者が「包括的核実験禁止条約」(CTBT)に基づいてグローバルネットワークを利用して空気のサンプリングを行った結果、福島原発からの一日当たりのヨウ素131の放出量とセシウム137の放出量は、それぞれチェルノブイリ原発事故の73%、60%に相当するという。

核事故の国際評価尺度(INES)の基準によると、事故後放出された放射性物質が数十PBqのヨウ素当量に相当した場合を、レベル7と定めている。このレベルの事故の特徴としては、放出量が炉内核燃料貯存量のかなりの割合を占め、短寿命と長寿命の放射性核種を同時に放出し、大量の放射線物質が大気へ送出されること。さらに、広い領域で国民の健康に影響を及ぼし、長期的な放射線対策の安全プログラムの計画と実施を必要とするなどである。福島原発の事故はそれらの特徴を備えている。 

レベルを上げた原因

今保安院が事故のレベルを上げることを宣言したのは、少なくとも東電と日本政府当局が、事故のプロセスと概況に対して比較的明確な認識を持ち、しかも最も不利な局面に対してもおおよその見当がついたことを表している。

事故のレベルを上げることでもたらされる重要な影響として、レベル7には「原子力事故早期通報に関する条約」が適用されることが挙げられる。この条約では締約国に以下のことを求めている。(a)直ちに直接あるいは国際原子力機関(以下機関と略)を通して、原子力事故とその性質、発生時間、適切な状況で正確な場所を、実際に影響を受けるか受ける可能性のある国家と機関に知らせること。(b)迅速に直接あるいは機関を通じて(a)で言及された国家と機関に対して、できるだけ放射能の影響を減らすよう情報を提供すること。

異なるレベルの事故には、異なる応急計画がある。数日前に日本が海洋に直接低レベルの放射性廃水を排出する前に、周辺国家に通達を出していなかった。レベル5の事故について、既定の応急計画で定められていないからと考えられる。排水の排出は、周辺国家の不満を招いた。事故のレベルを上げる主な原因ではないかと考えられる。事故のレベルを今回引き上げたのは、事故の突然の悪化を示すものではなく、むしろ管理上の原因からではないだろうか。

最大の課題

福島原発事故が現在直面する最大の課題は、数万トンの高濃度放射性廃水だ。しかもその量が絶えず増えている。これらの廃水は海水と地下水に浸透する可能性もある。この問題を解決できれば、事故の収束のめども立つだろう。

(金本)