【大紀元日本3月9日】ジャスミンが中国の大地にも微かに薫り出すこの頃、中国は、主権争いのある周辺諸国と頻繁に海上衝突している。日本との間では、2日に中国軍機2機が尖閣諸島に接近しており、さらに5日と9日には、尖閣諸島の久場島附近の水域を中国の漁業監視船が航行していることが確認されている。8日付のラジオ・フランス・インターナショナル(RFI)は専門家の見解として、中国当局は領土問題を利用することで、国民の民族主義を助長し、国内外の「中国ジャスミン革命」への関心をかわそうとしていると分析した。
頻繁に起きる衝突
日本との尖閣諸島周辺での衝突に加え、中国はこの頃、韓国やベトナムなどとの間でも争いを繰り返している。
3日、中国漁船が韓国の排他的経済水域(EEZ)に入って違法操業を行い、さらに韓国警察の取り締まりに対し、乗組員が斧とハンマーで激しく抵抗したため、韓国警察は初めて実弾を発砲した。
また、フィリピン政府によると、南シナ海のスプラトリー(南沙)諸島リード礁で2日、石油資源探査中の比エネルギー省の船舶が、中国軍艦2隻に妨害され衝突されそうになった。ベトナム外務省も2日、中国海軍が先月24日に同諸島で行った対海賊演習は、ベトナムの主権を侵害するものとして抗議した。
「理解しがたい」動き
8日付のRFIは、これらの一連の中国当局の動きは「理解しがたい」とコメントしている。中国とベトナムとの争いは今までも頻繁に見受けられたが、フィリピンの探査船を中国軍艦が威嚇するケースは稀だと指摘。また、中国漁船の違法操業も今までは韓国海上警察による駆逐で終わっていたが、今回は乗組員の激しい抵抗で韓国警察が発砲する事態にまで発展した。
日本との間のいざこざはさらに「理解しがたい」とRFIは指摘する。北京で開会中の全人代にあわせて7日に行われた記者会見で、楊潔チ外相は「今年は中日関係を改善・推進するカギを握る年になる」と改善への意欲を表明した。また、「中日関係は両国どちらにとっても、もっとも重要な外交関係の1つであり、良好な中日関係を築き上げることは双方にとって賢明な選択である」と述べている。
この発言に先立ち、先月28日には、外務省次官級の戦略対話が東京で開かれ、中国漁船衝突事件で冷え込んだ両国関係の修復に向けて積極的に取り組む考えで双方は一致したという。
しかし、この次官級対話の2日後に、中国の哨戒機と情報収集機が尖閣諸島付近に現れた。防衛省によると、中国軍機が日中の境界線を大きく越えて尖閣諸島に接近したのは初めてという。また、5日には、尖閣諸島の久場島付近の水域を中国の漁業監視船「漁政202」が航行した。海上保安本部の「領海に入らないように」との警告に対し、監視船は「中国の海域をパトロールしている」と答えていたという。さらに、楊外相の7日の記者会見の言葉がまだ鮮明な9日早朝、「漁政202」が、いやがらせをするかのように尖閣諸島の久場島付近を航行している。
尖閣諸島でジャスミンを制する狙いか
これらの言行不一致の不可解な行動について、香港浸会大学国際関係研究所の高敬文教授はRFIの取材に対し、「中共当局はこれらの行動で国内外の関心を分散させることを目論んでいる可能性がある」と指摘した。
「中国国内の緊迫した情勢と、周辺諸国との間で頻発する衝突との関連性を裏付ける証拠は今のところないが、これまで中国政府は、国内の社会問題が拡張すると、国民の民族主義の感情を煽り、国民の注目をそらすことで、政府への批判をかわしてきたのが常であった」と高氏は分析する。
高氏はさらに、中国の多くの官僚は、対外関係や外国からの見方ではなく、自らの政権を維持するために社会の緊張を少しでも減らすことを重視すると述べた。そのためには、たとえ周辺諸国との関係を損ねても、躊躇なく「民族主義」というガス抜きのための有効手段を使うことになると指摘した。
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