中央アジア 増え続ける中国の支配力

2010/11/25
更新: 2010/11/25

【大紀元日本11月25日】ロシアの勢力範囲である中央アジア地区で、経済が最も繁栄しているカザフスタン。その首都アルマトイ市最大のバラホルカ市場では、ジーンズから加湿器、携帯電話の充電器、新鮮な果物まで売られている。多くの商品はロシア製品ではなく、ほとんどが中国製だ。いまカザフスタンで流行っている言葉は、「もし出国したいなら英語を習いなさい。もし国にとどまるなら中国語を勉強しなさい」

中央アジアの人口は6200万人。ここで流通している中国製の商品は日常生活品にとどまらない。エネルギー需要に促されている中国は、中央アジア地区で石油天然ガスの採掘に巨額な投資を行っている。VOA放送は21日付けの記事で、「この地区での中国の影響力は拡大し続け、いずれロシアを制するのではないか」と指摘する。

国際エネルギー機関IEAの発表によれば、中国は今年度で米国を抜き世界最大のエネルギー消費国になる。今後25年間で、中国のエネルギー消費は倍増する見込みだ。

しかしながら中国の大半の石油と天然ガスの輸入は海運に頼っており、輸送リスクは高い。中国の国外でのエネルギー開発を研究している英国のノッティンガム大学のライコン教授は、VOA放送に次のように語った。「中央アジア地区は中国にとって、エネルギーを確実に確保するためにとても重要な地区だ。ここから陸地ルートで中国に石油と天然ガスが運ばれる。海運は必要ない。陸地での運送は中国にとってもっと安全である」

世界最大の石油と天然ガスの貯蔵地の一部は中央アジア地区にあるため、この地区は今、中国の投資の対象になった。最新の統計によれば、その投資額は約250億ドルに達する。

昨年、中央アジアにおいて初めて、東方地域と中国を結ぶ石油と天然ガス輸送のパイプラインが開通した。現在、北京の住宅暖房用に使われているのは、トルクメニスタンから輸送されてきた天然ガスである。貯蔵量世界第4位のトルクメニスタンの天然ガスは、瞬く間に、中国向けの輸出量がロシアへの輸出量を超えた。

一方、カザフスタンは現在、石油生産量の4分の1を中国に輸出しており、年間の生産量を世界10位の水準に引き上げようとしている。

パイプライン建設に投資するほか、中国はカザフスタンを横断する3千キロの高速道路も建設した。この現代版のアスファルトのシルクロードのおかげで、トラックは中国から西ヨーロッパに往来できるようになった。

米国の作家プラガ・カーナさんは著書『世界をどう運営するのか』(How to Run the World)で次のように記した。「まるで五本指のように、これらの新しいパイプライン、高速道路および鉄道が中国から中央アジアに伸びた。それにより、ロシアが、従来の勢力範囲である中央アジアにおいて、支配力を失いつつある」

いま、カザフスタンの首都アルマトイ市と中国の新疆ウイグル自治区のウルムチ市を結ぶ空の便は、毎日出ている。

カザフスタンの政治学者サパシェフさんは、中国語を勉強する自国の若者や、奨学金をもらって中国に留学する若者が増えていると指摘し、「ますます多くの若者が中国に渡り教育を受けている。帰国後、中国当局は彼らをうまく利用して中国の利益のために働かせる。これは経済分野に留まらず、文化や情報の領域にまで波及している。それに対し、ロシアの影響力は持続的に衰退する傾向にある」と同氏は見解を示した。

一方、中国勢力の台頭にマイナスの反響も一部からあらわれた。カザフスタン政府はこのほど、100万ヘクタールの未開拓農地を中国に貸すとの計画を中止した。

アルマトイ市のある研究機関の責任者サレーム氏は、多くのカザフスタン人は中国の台頭に不安を感じているという。「中国の人口はカザフスタンの100倍、そのことに、わが国民は憂慮している」という。

しかし現実では、中国経済の影響力はアルマトイ市のいたる所に浸透している。バラホルカ市場で買い物をしていたある顧客は、「もし中国製品を全部排除したら、ここには何もなくなってしまう」と話した。

(翻訳編集・叶子)