【大紀元日本1月11日】インドのタタ・モーターズは10日、10万ルピー(約28万円)の世界最低価格車「ナノ」を公開した。新たに起こった市場で数百万人の低所得者層にも自動車を保有することができるようになったが、環境への懸念も起きている。ロイター通信が伝えた。
625ccエンジン搭載の4人乗りの「ナノ」の価格は、ライバルであるスズキの25年落ち中古車の約半分。
タタによると、今年中には市場に出回るという。
「当社が設計したナノは、あらゆる安全基準と海外の環境基準を満たしている」と、ラタン・タタ会長は語り、ニューデリーのオート・エキスポで「民衆の車」と言われたナノを誇らしげに公開した。
「ある意味、わたしにとって最高の瞬間だ。達成感と雪辱感がある」と語った。
コンパクトで曲線が美しいナノは、タタがフォードから買収交渉中の高級車のジャガーやランド・ローバーとは全く対照的な存在。
展示会場に詰めかけた数百人は、いすの上に立ち上がって待望のナノ公開を待ち望んでいた。ナノがステージに現れると、ポップスコンサートやオスカー賞の授賞式のように報道合戦が始まった。
これまでオートバイやスクーターに家族四人や荷物などを運んでいた数百万人のインド人が手ごろな価格で購入できる、より安全性の高い自動車を数年前に計画した。
「夢が実現しました」とデリー警察署のアショク・シン巡査は語る。「ナノを買いますよ。妻は本当に喜んでいます」。
インドでは新車が好まれる。というのも、中古車市場が組織化されいないため、中古車を買うのは面倒で時にはリスクが大きいからだ。
環境保護論者はそれほど夢中になってはいない。数百万台もの低価格車がインドの道路にあふれるのを心配しており、多くの道路はもうでにひどい交通渋滞になっているからで、アジア第3位の経済力を持っている国として排気ガスの排出レベルは非常に高くなるからだ。
僅かなマージン
原油1バレル100ドルの時代に突入し、燃料効率の良い「グリーン」カーが勢いをつけ、ノスタルジアの波の到来で、BMWのミニやフィアット500チンケチェントのようなブランドの売り上げに拍車がかかっている―ナノはこうした時代を背景に到来した。
ガソリンエンジンを後部に設置し、リッター20キロで走行。ベーシックモデルと二種類のデラックスバージョンがあり、ディーゼル燃料バージョンもある。
「論より証拠で、まず運転してみることだろう。しかし、ビジュアル的にはとてもよいできだ」とロンドン在住、自動車アナリストのアッシュビン・チョウタイ氏は、発表会に出席し、「価格が驚きだ。もう少し高いのだと思った」と述べた。
タタによると、パッケージの大きさをカットし低価格を実現した。そのことが、さらに材料の低下価格をもたらした。また、革新的な経路とシステムのおかげで、33のパテントを申請し、このことも低価格実現に役立った。
チョウタイ氏は、エアコンなどを装備したデラックスバージョンが、売り上げの大部分を占めると確信していた。タタよれば、インドの都市部だけでなく、都市郊外や、地方でも販売できると見込んでいる。
チョウタイ氏は「マージンは非常に低いだろう」と語った。
タタ・モーターズの株価は、約75億ドルの市場価値があるが、2・8ポイント下げ、749ルピーをつけ、4パーセント以上上がった後、ムンバイ市場では1・4パーセント下げで終えた。
タタ・モーターズの株取引は、予測の約17倍で、実用車のトップを飾るマヒンドラ&マヒンドラの20・2倍のケースに匹敵する。マヒンドラの株は9日、0・6パーセント下げ、803・15ルピーをつけた。
タタによると、初期生産は25万台で、最終的には年間で百万台を見込んでいる。
大手自動車メーカーは、当初タタが低価格車を生産することに懐疑的だったが、中国やインド、ロシアなどの新興マーケットにおける、コストに敏感な消費者の需要を満たそうと各社独自のバージョンを急いで開発した。
フォードは今週、2年以内にインドで小型車を製造すると発表、日産モーターとルノーは、実用本位のローガン・セダンが大当たりした。また、バジャジ・オートは3千ドル(約33万円)車の製造を計画している。
フォルクスワーゲン、トヨタ、ホンダ、フィアットも、強い経済成長が自動車所有を現実なものにする新しい市場をねらった小型車に注目している。
タタによると、アフリカや南米、東南アジアに輸出する前に、2、3年は国内市場をターゲットにするという。
インドは1000人中、8人しか車を所有していないが、バイクやスクーターなどの二輪車利用者約700万人(2006年7月現在)が自動車購入に向かう大きな可能性も有している。
タタ側は、「我々の挑戦は始まったばかりだ…今日約束したものは今届けなければならない」と語った。