中国の米ドル資産売却発言、背景に中共上層の内部抗争か

2007/08/13
更新: 2007/08/13

【大紀元日本8月13日】中国の権威的な経済学者が最近相次ぎ、中国がドルや米国債を売ってドルの下落を招く発言を発したため、国際金融業界に不安をもたらしている。米専門家らは、中国当局が大規模なドル売りで米国の人民元値上げ要求に報復する行為は、共倒れを招くと指摘し、米政府も、この言論は胡錦濤勢力の立場を代表しているかどうか疑問を呈している。

英国紙デーリー・テレグラフ先週の報道によると、中国国務院発展研究中心金融研究所の夏斌・所長は最近メディアに、中国が保有する1兆3300億ドルの外貨準備高を「政治武器」に変身させ、米国議会による人民元値上げの圧力に対応すると表明したという。

また、中国社会科学院の経済学者・何帆も最近、政府機関紙の「チャイナ・ディリ-」に対して、中国は米ドル資産売却でドルを崩す能力があると発言した。「中国は巨額な米ドルを保有している。一旦、人民元が大幅に値上げすれば、中央銀行が米ドル売りをせざるを得ない。そうすると、米ドルの大幅下落を招くだろう」と何帆氏が言う。

現時点において、中国の外貨準備高では、9千億ドルを占めている。其の大半は米国国債。アナリストは、大規模なドル売りは、ドルの為替相場を強く影響、場合によっては、国際金融市場で連鎖反応を起こすと分析している。

米国議会が中国の人民元操縦問題に関する立法を議論する最中に、中国経済学者らのこのような発言は、米国をけん制する策略と受け止められている。一方、このような策略は、米国の経済成長を妨げる一方、中国もドルの大幅値下げで、経済損失を背負う共倒れ行為であり、中国側の真意に関する疑問視する見方も高い。

米国の反応

ブッシュ大統領はフォックス・ニュース・チャンネルの取材で、中国はもし、本当にこのように実行すれば、後先を顧みない『無鉄砲で、軽率な行為』になると述べ、両経済学者の発言は胡錦濤政権の意向を代表しているのかと質疑した。

米財務省のポールソン長官はCNBCテレビで、このようなやり方は、でたらめだと示唆した。

米国議会上院金融委員会の委員長、共和党のChuck Grassley議員は、中国駐米国大使・周文重に書簡を送り、前述の見解は中国当局の公式立場を反映するかと回答を求めた。

米シンクタンク、ピーターソン国際経済研究所(ワシントン)のベテラン研究員、前米国財務省副部長のトルーマン氏は、「国際社会で、まともな政府であればこの問題で虚勢を張ることはしないだろう」と、当発言は中国当局側の政策ではないとの見方を示した。

米国の多くの金融専門家は、米議会が検討中の立法議案は、中国にここまで迫る程度にはなっておらず、ひいては議案が通ったとしても、米中間に交渉の余地が多くある。中国当局がこのようにする可能性が極めて低いとみている。

17全人代前、中共上層の内部抗争

一方、当発言の真意を巡って、中共17回全人代を前に、中国共産党政権最高指導部の激しい内部闘争の表れである一説も中国問題専門家により示されている。

情報筋によると、中共17回全人代を前に、胡錦濤派と江沢民派の権力闘争が日増しに激化している。胡錦濤・主席が来週にキルギスタンを訪問、上海協力機構のサミットに出席、ロシアでの共同軍事演習を検閲するなどの「重大な外交活動」(中国外交部)を行う前に、今回のような発言が出されたことは、これまでと同様に、政権内部の反胡錦濤勢力が胡氏に恥じをかかせるために仕組んだ差し金ではないかという。

同情報筋の分析によると、中国上層部リーダーが重要な海外訪問を行う前に、国際社会に政治犯釈放か、友好を見せる外交政策発表などは一般的だが、胡(錦濤)温(家宝)政権以来、両氏は海外訪問の際、これまでの外交友好姿勢が見当たらなく、反胡錦濤派は必ず訪問国でトラブルを扇動し、国際社会の前で胡温に恥をかかせるよう企てるという。

昨年9月、温家宝が欧州訪問中、中共メディアが海外メディアを規制する論調を強調し、最高法院もメディア規制を強める条例を出した。今年4月、温家宝が日本訪問前、曾慶紅が操縦したスパイ機関は突然、監禁中の高智晟前弁護士の情報を海外に漏洩し、温氏が日本訪問中、高弁護士の釈放を求める抗議活動を起こさせた。また、先月、香港返還10周年記念活動のため胡錦濤が香港を訪問した際、曾慶紅が香港政府に画策し、千名近い法輪功メンバーを暴力的に強制送還させる事件を起こさせた。

今年10月の17回全人代を前に、中共上層部の内部抗争はすでに白熱化している。胡錦濤は反腐敗を理由に江沢民勢力を打撃しつつ、軍内部でも一連の準備をし、江勢力を一掃しようとしている。それを背景に、今回の米ドル資産売却の言動もこれまでと同様に、胡錦濤が海外訪問中、国際社会から批判を受けるよう、江勢力が胡氏を打撃する狙いであるという。

関連特集: 日本経済