中国臓器移植新条例公布、臓器出所の問題解決にならず

2007/04/12
更新: 2007/04/12

【大紀元日本4月12日】4月6日、中国当局は、いかなる団体または個人が人体臓器売買およびそれに関連する活動を禁止する「人体臓器移植条例」を公布し、同条例は5月1日より実行することを発表した。これに対し、新条例は中国国内における人体臓器の出所の問題は解決できないと指摘する声が、人権団体などから上がっている。

新条例は、総則、人体臓器の提供、人体臓器の移植、法律と責任、附則の5章32条からなる。主な内容は次の通り。

・人体の細胞や角膜、骨髄などの組織移植には、条例は適用されない。条例が定める人体臓器移植とは、特定機能を持つ人体の心臓、肺、肝臓、腎臓、すい臓などの臓器の全部または一部を提供者から摘出し、被提供者の損傷臓器と取り替えて移植する過程をいう。

・臓器の提供は、提供者の自由意志、無償の原則に従うものとする。18歳未満の公民の生体臓器を移植に用いてはならない。

・国務院の衛生主管部門が全国の人体臓器移植への監督・管理活動を担当し、地方人民政府(県クラス以上)の当該部門がその行政区域内における監督・管理活動を担当する。

・人体臓器またはそれに関連する活動を行う者に対し、衛生主管部門はその活動により違法に得た所得を没収し、取引額の8倍以上、10倍以下の罰金を科す。

・人体臓器売買活動に関与した医療機関は、その責任主管者および直接活動に携わった者に対し法律に則り処罰し、当該医療機関は3年間、人体臓器移植の診療科目登録は申請できない。

・人体臓器売買活動に関与した医療関係者は、免許証を発行した部門より同関与者の免許証を取り消し、また、それに関連する活動に関与した国家機関関係者に対し、法律に則り懲戒免職の処分を科す。

新華社は中国衛生部・黄潔副部長の話を引用し「人体臓器移植規定の公布は中央政府にとって初めてのことで、臓器移植の歴史における一里塚である」と報道した。

*死刑囚の臓器売買問題は未解決

一方、AP通信社は、一部の人権団体および人権活動家たちは、中国当局の新しい条例には多くの欠点が存在し、もっとも問題視されているのは、死刑囚からの臓器摘出問題は解決できていないことを指摘した。

*移植に使用される臓器は死刑囚に由来

米国労改基金会(Laogai Research Foundation)の呉宏達・執行主任は、ここ数年間、中国で移植に使用された臓器は主に死刑囚のものであるとし、中国政府に対して、これらの情報公開を促した。これに対して、中国当局は昨年にようやく認めた。昨年、黄潔夫・衛生部副部長は自ら、中国が世界第2位の臓器移植大国になったとは、死刑囚の臓器提供ができたからだと認めた。呉主任は1979年より臓器移植に使用された臓器はすべて死刑囚のものだとし、すなわち、90~95%、強いては98%の臓器が死刑囚のものと指摘した。

呉主任は、2000年より中国の貧富の格差が激しくなり、一部貧困層は自らの腎臓を販売する人が現れたため、人体臓器売買が増加したと分析した。しかし、増加した数は臓器移植総数の10%しか占めていないという。

一方、呉主任は自分が94年に大陸入りし臓器移植の調査を行ったときに、すでに医師から「臓器の出所は教えないが、良質臓器を保証する」状況が現れていたという。

*完全透明化すべき

「人体臓器移植条例」では、臓器提供者は自ら無償で提供しなければならないと定められている。これに対して呉主任は、中国は1984年に死刑囚の臓器を使用する場合、本人または家族の同意が必要と定められているが、死刑囚は人身の自由を失っている状況下に出した承諾の信憑性は疑わざるを得ないと指摘した。

ニューヨークに本拠を置く国際人権観察団体は、中国の死刑囚より臓器摘出問題において、中国当局に対して、完全透明化を呼びかけた。同団体の中国区研究員・ニコラス・ベクリン氏は国際社会が中国の臓器売買問題に対して圧力をかけても、中国側は依然としてグレーゾーンを残していると指摘した。

ベクリン氏は処刑される前に多くの圧力を受けている死刑囚は臓器の提供に同意し、署名してしまうため、自らの意思であるドナーとしてみなしてはいけないとの見解を示した。