林保華:日中関係の火と氷

2007/04/04
更新: 2007/04/04

【大紀元日本4月4日】北京「両会」(全国人民代表大会と政治協商会議)が終了し、春の暖かさの中で開花が始まる頃、中国の指導者らはあちこちを駆け回って外遊、外交活動を行っている。3月下旬、胡錦濤はロシアを訪問し、また4月下旬には、温家宝が日本を訪問し、春の桜を見るための最終便に間に合わせるようである。

温家宝は、両会の記者会見において、今回の訪問を「氷を融かす旅(融氷之旅)」にしたいと語った。用いた表現が「融氷」で、「破氷(氷を砕く)」ではなかったことから、彼にとって、日中関係がそれほど悪いわけではなく、「氷凍三尺、非一日之寒(厚さ3尺の氷は1日で出来たものではない=悪い結果はその原因が長期に渡って積み重なった結果であるとの意)」ではないことは明らかである。まして、昨年10月には、日本の安倍首相が中国を訪問してもいる。しかし、日中関係に「氷」が存在しており、あまり順調とはいえないため、温家宝が日本に行ってこれを「温」め、更に融かしていくことが必要なことも確かである。

少し前に、温家宝の訪日期間を5日から3日に短縮するとの報道があり、その後、中国外交部が短縮はしないと述べたことがあったが、この背後で一連の争いがあったことが伺える。想像できることとして、安倍が慰安婦は強制でないと語ったことが中国側の不満を惹起したということである。中国が慰安婦に同情しているということは決してない。なぜなら、中共自身が、婚姻、軍婚(解放軍軍人との結婚)を組織的に手配したり、“旧中国”の踊り子、妓女を辺境の中共軍人に宛がったりしたが、これも、ある程度「慰安」的性質を帯びているからである。もちろん、日程短縮という中国側の脅し、あるいは何らかの利益取引によって、日本も何らかのコミットをし、当初の日程を回復させたのは当然のことであろう。

利益について、日本の報道によると、中国は大きな贈り物をし、川崎重工、日立、JR東日本の3社からなる財団が注文を取り、中国に対してハルピン-大連間の全長950キロの高速鉄道技術を提供することになるという。

中国の憤青(憤った青年)らはこの点について特に敏感である。少し前に、中国の各大メディアが喜び一杯に、「中国自主研究開発による弾丸列車」CRH2(China Railway High-Speed2)の上海、杭州、寧波線が今年1月28 日に正式に開通したことを報じ、CRHが中国鉄道部の関係部門の開発によるもので、中国がCRHの知的財産権を保有していることを強調した。

しかし、日本の一部メディアやネットユーザは、CRH2が明らかに日本の新幹線の技術であり、日本人が伝えたものであり、これがなぜ中国が自主的に研究開発した成果であるのかとの疑問を呈した。しかし、日本官員は、中国政府の状況を理解していると述べ、お金儲けさえできれば、中国政府の喉・舌であるメディアの嘘を暴露したり、中国と知的財産権を争ったりことはないとしている。中国のネットユーザもまた熱烈な討論を展開し、憤青らもまた、こうした国辱的な事件に対して当然に憤慨の意を示しているが、それでもなす術はなく、ただ、「夷狄の長所を師として夷狄を制する」のだと自分を慰めるしかない。しかし、このために、温家宝は特に注意を払い、災いを誘発することを避けなければならない。

中国が日本に多くの不満を持っているにもかかわらず、なぜ日本に贈り物をする必要があるのか。温家宝は、なぜ憤青に罵倒されるリスクを冒してまで日本を訪問するのか。胡錦濤のロシア訪問、温家宝の日本訪問から見えてくることは、彼らの目的は、訪米以外の最も重要な外事活動であり、その目的は、この2大国を篭絡して米国に対抗することであり、だからこそ領土をも進んで割譲しようとするのである。まして、一定の経済利益の提供はなおさらのことである。

しかし、中国の篭絡に日本は引っかかるのか。日本が不断に「トラブルを作り」、不断に「中国脅威論」を発出していることから見て、こうしたわずかな経済的利益をもって日本が中国を信用することはないであろう。少なくとも、日本人は米国人よりも中国を理解している。それゆえに、今年2月末、自民党政調会長である中川昭一は、名古屋における講演で、中国の軍備拡大の深刻さを強調した際、「今後15年のうちに台湾で問題が発生し、20年のうちに、日本はおそらく中国の省の1つになるだろう」と語った。また、彼は、「中国の毎年の軍事費の伸びが15%~18%であり、ここには研究開発費用、輸入兵器に係る費用が含まれておらず、全てを加算すると実にとてつもないことになる」と語っている。

また、中国は常に歴史問題を持ち出して日本を煩わせているが、日本の関心は未来の問題である。また、中国の関心は文言の是非であり、これが氷点を形成しているが、日本の関心は、中国が戦火をもたらさないかということである。したがって、中国がいかに日本を罵り、いかに篭絡しようとも、日本は憲法を改正して現状を変えようとする決心は変わらないのである。今年初め、日本防衛庁は既に防衛省に昇格しており、また、自衛隊の平和維持活動における武器使用の条件を緩和しようとしている。

日本と中国は、ともに、歴史上軍備を拡大して他国を侵略した歴史があり、今後軍事衝突が起こる可能性は排除できない。この点について、中国は独裁国家であり、日本は民主国家であることから、衝突が起こる場合、先に手を出すのは、おそらく中国であろう。中国は、土地が広大で人口が多いほか、朱成虎将軍のケースに見られるように、常に火種となる言論を発表していることから見てもなおさらのことである。

したがって、中国と日本が真に関係を改善しようとする場合、中国がなすべきは、「破兵之旅」である。こうすることによってはじめて、「中国脅威論」は除去され、日本だけでなく、アジア、全世界が安心するのである。

(RFAより転載)