胡耀邦総書記・元ブレーン、出版記念講演「共産中国にしてやられるアメリカ」

2007/03/24
更新: 2007/03/24

【大紀元日本3月24日】中国の民主改革派で知られた胡耀邦・総書記の元ブレーンで、後に米国に亡命し現在は台湾に帰化した阮銘氏(76)が21日午後、都内の市谷グランドヒルで、自身の新著である「共産中国にしてやられるアメリカ-民主台湾の孤立を招いた歴史の誤り(草思社)」を紹介、通訳に寥建龍氏、パネリストに在留台湾人評論家の黄文雄氏を迎え、第二次世界大戦前夜の欧州情勢を例証しつつ、「世界がまた同じ過ちを繰り返しつつある」と警鐘を鳴らし、中共反国家分裂法、台湾海峡問題、両岸関係、中国の将来などについて語った。

阮銘氏は1931年に上海で出生、燕京大学、清華大学で新民主主義青年団(のちの共産主義青年団)書記を務めたあと、『北京日報』理論部主任、中共中央宣伝部調査研究室主任などを歴任、77年から82年にかけて、中共中央党校の第二副校長に就任した胡耀邦のもとで、同党校理論研究室副主任になった。しかしその民主化思想、開明的思想のゆえに、82年に王震(1908~1993年、元中日友好協会名誉会長、国家副主席)が中央党校校長になると、「ブルジョア自由化」の廉で83年に共産党から除名され、88年10月に米国に行き、コロンビア大学、ミシガン大学、プリンストン大学などで研究を続けた。

阮銘氏は冒頭で、「現在の中国共産主義社会には、自由、民主、人権がない。従って奴隷制度と同じだ」と発言、続いてこれに対抗すべき自由主義社会がこの中共に対して譲歩したり寛容であったりしているのが問題と指摘した。阮銘氏は第二次世界大戦前夜の例を挙げ、「ドイツのファシストが台頭した時にも、周辺諸国(特に英仏)が看過したところがあって、大災難を招いた」と指摘した。

第二次世界大戦後、世界はヤルタ宣言によって多くの教訓を得たが、「今日に至っても世界はまた同じ過ちを繰り返そうとしている」と発言、中国という共産主義陣営に対し、世界の自由主義陣営はさまざまな形で譲歩し、台湾を孤立させていると指摘した。旧ソ連邦が崩壊した現在、世界最大の共産主義・奴隷制度は中国にあると指摘、旧ソ連が鉄のカーテンで外界から閉鎖した社会を形成したために閉塞状態に陥り崩壊した轍を踏むまいと、中共当局は西側の資本と技術を取り入れて経済改革を果たしこの奴隷制度を存続させようとしているが、その張本人は_deng_小平だったと述べた。

世界は、既に中国が経済大国になったかのように思っているが、実際には世界GDPの5%にしか過ぎず、自由主義陣営の約70%には遥かに及ばないと指摘、世界経済のグローバル化を利用して経済を改革し、反面では上海協力機構などを創っては西側に対抗しようとしており、西側陣営は既に「中国がいないと貿易が成り立たない」との錯覚に陥っていると指摘した。

中共は2005年3月に反国家分裂法を制定させたが、これは平和的方法・非平和的方法の双方で台湾を併合することが目的であり、実際の武力侵攻の際には、日米が介入できないような場面を作ってからとりかかると指摘、台湾が陥落したら次の目標は日本であり、最終的には米国の影響力を太平洋の極東地域から完全に取り除くのが胡錦涛政権の戦略目標だと述べた。

現在の世界は(思想的には)、自由主義陣営と共産主義陣営との二極分化であり、どちらかが勝つと負けた方が吸収合併されると指摘、第二次世界大戦前にドイツのファシストがオーストリアとチェコを併合した際、イギリスのチャーチルが警鐘を鳴らしたが、世界が手を打つ時期を逸して、看過したために東欧は大惨事に見舞われたと述べた。世界はまた同じ過ちを繰り返そうとしており、中共が侵攻しようとしている台湾はちょうどオーストリアに、日本はイギリスに相当しており、当時の情況に似ていると指摘した。

パネリストとの対談で、黄文雄氏から、「中国では100年近く民主化の努力が叫ばれているが、やればやるほど独裁専制に近づくのは何故か、現胡錦涛政権は、軍・党・政を独占しているが、果たして中国に民主化の可能性はあるのか?」と阮銘氏に質問が提出された。

これに対し、阮銘氏は、「世界が民主化に向かっているのだから、当然中国にも可能性はある」と前置きしたうえで、現在の中共にはその可能性は無く、それはむしろ中国の民衆から起きるもので、民衆が中共を国外に追い出して、世界の自由主義と手を結べば実現しうるとの認識を示し、「中国の民衆は現在、現中共政権の圧制に苦しみもがいて、年に7~8万件、日に300件近い暴動を起こしている」と説明した。

また、自由主義陣営が、中共政権を利用して、安い労働力を活かして金儲けをしており、世界が中共を信じている限りは、中国の民主化は遠のくのであり、これに対しては、(資本を投下して中国を世界の工場と認識している)「日本を含めた世界に責任がある」と強調した。

左から、通訳者の寥建龍氏、中央に基調講演者の阮銘氏、右にパネリストの黄文雄氏