【大紀元日本10月20日】ドイツ在住のノンフィクション作家で、拓殖大学客員教授のクライン孝子氏が6日、(社)隊友会の招きにより、新宿損保ジャパンビル本社講堂において「情報敗戦国日本と勝利国ドイツ」という演題で講演を行い、特に欧州における国際諜報戦の厳しい現実と日本の今後における問題点についてその認識を語った。
ドイツはかつて、国際情報戦において旧西ドイツはCIA、旧東ドイツはKG Bの影響傘下にあったが、1990年になって統一が実現し情報が一本化した。それに引換え日本は現在、JCIA(日本情報省)のような構想も提案されているが、現実の国際情報戦では、三重スパイ、四重スパイなども見られ、長期において諜報活動から離れている日本がこれに対応できるのか、すぐには難しいとの認識を示した。
ドイツでは統一後、旧東西の政府要人、政府職員、一般市民にも二重スパイが露見したが、一般に「あれは体制が悪かった」と開き直る者が多く、またドイツ社会も「敗戦国の傷跡」として寛大な気持ちで容赦してきたという。
日本では、「横田めぐみさん」の拉致案件が問題となっているが、旧西ドイツでも失踪誘拐事件がかつてあり、東ドイツで抵抗した西ドイツ市民は、シベリア送致となり凍死していたという。当時西ドイツ政府は、失踪した西の市民が東のどこの収容所に所在していたか、全てリストアップしていたという。その情報源は、東からの亡命者と、特筆すべきはバチカンの存在であった。バチカンは世界中に神父を送っていたため、特に共産圏東独の情報においても非常に精通していたという。
政治的な面では、現ドイツ首相のメルケル氏は東独出身で牧師の娘であったために、絶えず周囲からスパイの嫌疑をかけられてきた。そのため政治には興味があったが、これらから離れるために大学では「物理学」を専攻し、ベルリンの壁崩壊後、その高いロシア語能力を買われてボンに招聘され、プーチン・ロシア大統領との天然ガス交渉で能力を発揮したという。ドイツはシュローダー政権時に、米国のイラク侵攻に反対したが、その国家的エネルギー政策においては、原発の外に供給源を中東、ロシア、北欧に分散させており、そのリスクを小さくしているという。
ドイツは、米国によるイラク開戦時、これに反対したが、現在はアフガンに部隊を派遣している。しかしながら、同じ白人でも過去にこういった経緯があったために、ドイツ人は現地で拉致誘拐される件数が少なく、また数日して帰ってくるケースがほとんどだという。
また首相レベルの国際外交において、日本の指導者は頻繁に交代するのに加え、晩餐会などでは語学力の欠如からコミュニケーションに乏しく、対してロシアのプーチン大統領はドイツ語に堪能で、この点などでも点数を稼いでいるという。このため、日本の指導者は(公式な会談を除き)将来的には外国語でコミュニケーションが多少なりともできる人物でないと、欧州では「金を無心されるのが落ち」との見解を示した。
ドイツは、政治、経済、軍事、宗教ひいては一般市民レベルまでその情報網を充実させ、情報戦の術・駆け引きを心得ているが、それは厳しい欧州を生き抜いてきたドイツの「したたかさ」であり、日本にも情報機関が必要であり立ち上げても当初は国際情報戦についていけないだろうが、「是非頑張って欲しい」との期待を述べた。
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。