【大紀元日本3月28日】ロシアのプーチン大統領は22日、中国訪問を終え帰国した。今回の訪問に先立ち、中国政府のメディアは大々的に報道し、友好ムードを宣揚していたのと対照的に、ロシアの主要メディアは双方の分岐を指摘した。
ロシア「共青団真理新聞」は3月20日、「東に向いて歩んでいる我々の誤った選択」と題した文章の中で、「中国と協力して米国に対抗するという考え方は、最近の傾向の一つであるが、忘れてはいけないのは、私たちは中国との軋轢が西側諸国とのそれより、遥かに多いことである」と指摘した。
中国移民に対する警戒
最近、ロシアの極東地区には中国人の移民が急増している。調査資料によると、2050年には、ロシアの中国移民は少なくとも1千万人に達し、ロシアにおいて二番目に多い民族になるという。現在、サンクトペテルブルグで中華街を建設する計画があるという情報が流れており、さらにモスクワにも建設するという。大量の中国移民の存在は、北京がモスクワを左右する上で、有利な条件にもなりうるだろうと同報道は指摘している。
この問題についてロシア移民局長は3月15日に「中国人がロシア極東地域へ大規模移民する現象はとても憂慮すべきことである。2006年6月以前、ロシア移民局は極東地区で専門会議を開き、この問題について討論した。情勢の正常化を図り、中国からの非合法の移民に対し対策を講ずることを考えている」と述べている。
貿易の不均衡に不満の声
モスクワと北京の双方間の経済貿易はとても不均衡である。中国人がロシアで商売をするのにいかなる制限もないが、ロシア人が中国で商売をするには様々な共産党による制限がある。また、中ロ貿易に関して、ロシアが中国へ輸出するのはほとんどが天然資源などの原材料であることにロシアの世論が不満の声をあげている。プーチン大統領は今回の中国訪問で、中国への大型機械設備の輸出契約を盛り込んでいることから、世論の不満の声に配慮したことがうかがえる。
国際関係の明暗
最近のイランの核問題に関しては、モスクワと北京は足並みを揃えた。しかし、イランの石油を緊急に必要としている中国にとっては都合が良いが、ロシアにとっては何の利益もなく、むしろイランの核兵器はロシアにとって極めて大きな脅威である。北京との協力でロシアはいったい何を得たかを考えるべき時になってきた。
モスクワと北京は同盟国であり、高度に友好関係を発展させてきたと称しているが、実際、裏側では双方の間にまったく信頼はない。中国はロシアが超大国になることを望んでおらず、ロシアも中国が強大になるのを望んでいない。これが、双方のエネルギー協力関係の進展を妨げているとロシアの世論は指摘している。
エネルギー協力の不調
3月6日、ロシアの各主要メディアは、中国国家発展と改革委員会の副主任・張国宝の記者会見での言葉を引用し、中国はロシアのエネルギー協力体制に不満を抱いていると報じた。
ロシアの代表的な政治評論ウェブサイトは「中国石油企業はロシアとの協議において、悲観視している」と報道した。この報道によると、中ロ間の天然ガスと石油供給において不調であり、ロシアの対中エネルギー供給価格が高すぎ、これが既に中ロ両国のこの領域での共同開発を妨げている。さらに、十数年来中国が期待してきた東シベリア石油パイプラインの接続が本当に実現できるかどうかは、断定できないと中国側は不満を漏らしている。
2004年12月31日、ロシア政府は、「東シベリア石油パイプライン建設」に関して極東ルートを求める日本が提案した「太平洋ルート」の着工を正式決定したと発表したが、ロシアの首相・フラトコフの中国側を優先するという発言もあり、中国への輸出が優先されるかのようにみえた。本年3月21日には、プーチン大統領が訪中し、胡錦涛主席との会談でパイプライン建設では、中国への「支線」敷設に向けた調査実施を盛り込んだ協定書に署名するも支線の敷設は明言しておらず、ロシアは従来通り、日本と中国をてんびんにかけている。さらに、鉄路運輸で中国に輸出している石油量もかなり縮減したようである。
天然ガスと電力の領域でも同じである。ロシアは口頭で中国に天然ガスを供給する用意があると示したが、実際にその計画は、現在に至るまで少しも進展していない。また、中国の電力不足は非常に深刻だが、電力に余裕のあるロシアとの協力は、未だ合意に至っていない。
軍事協力の思惑
ロシアはインドに空母、原子力潜水艦、長距離爆撃機などを輸出しているが、中国に対しては10-15年程度技術の遅れた常軌兵器しか輸出していない。
中ロの合同軍事演習について、中国のマスメディアは大々的に宣伝し、まるでロシアが台湾海峡に出兵する可能性があるかのような報道ぶりだが、ロシア方面はこの軍事演習を毎年行なっている多国間合同演習のひとつに過ぎないと見ている。
実際、プーチンが中国訪問する直前、ロシアの太平洋艦隊は、米ロ合同軍事演習のために既に予定の海域へ向かっていた。