【大紀元日本3月2日】情報統制の一環として中共が設けている厳重なファイヤー・ウォールは、中国国内にいるネット・ユーザーにとって頭痛の種だ。中共に都合の悪いウェブサイトはブロックされており、それに関する情報が流れないようにネット警察が目を光らせている。中国国内の人たちは、民主や人権、法輪功など「政治的に敏感な」ウェブサイトを閲覧することができず、従って外の正確な情報が得られないのだ。そんな中、中国人に本当の情報を知ってもらいたいとビル・夏(Bill Xia)氏が立ち上がった。彼が設立した会社、ダイナミック・インターネット・テクノロジー社 (DIT社) が提供するソフトは、利用者がネット上で訪れるウェブサイトを偽装することができ、従ってネット警察の目をすり抜けながら、外の情報を得ることができる。喉から手が出るほど真の情報がほしい中国国内の人々にとって、この上ない朗報だ。米ビジネスウィーク誌が伝えた。
90年代に米国へ渡った夏氏は、アメリカ社会が開放されていること、そして中国で育った自分の知識が捻じ曲げられたものだったことを知った。「私はプロパガンダを信じていた。しかし、インターネットを見て、今まで私が信じ、受け入れていたものが全部崩れていった。」それと同時に、当局による法輪功弾圧が始まる。夏氏は言論の自由を深刻に侵害する当局のやり方に怒りを覚え、2001年にDIT社を立ち上げた。1年後には、中共がブロックしているVOA、ヒューマン・ライツ・イン・チャイナ(HRIC)、ラジオ自由アジアなどのサイトを顧客に持つようになっていた。
DIT社は、「フリー・ゲート」(FreeGate)というソフトを顧客に提供している。そのソフトを利用すると、利用者は閲覧するウェブサイトを偽装させることができ、ネット検閲をすり抜けて自由にウェブサイトを見ることができる。更に、VOAなどの顧客が、中国国内に伝えたいメッセージがあるときは中国国内のネット・ユーザーにEメールを大量発信することができる。このEメールには中共が閲覧を禁じている敏感な内容のウェブサイトや、その他のサイトへのリンクが貼り付けられている。カリフォルニア大学バークリー校でジャーナリズムを教えるシャオ・チャン氏(Xiao Qiang)は、「このソフトを利用する人の多くは記者、執筆家、オピニオン・リーダーなので、社会に大きな影響を与えることができる」と語った。
中国で弾圧されている気功団体「法輪功」愛好者の夏氏は、中国国内に残る家族が当局から迫害される事を恐れ、顔と年齢、出身地などの情報を伏せている。「時々、ホームシックになる」という夏氏は、7年間、家族と会っていない。「でも、このプロジェクトは多くの人を助けることができる。」彼は、DIT社が中国国内へ情報を流すのに重要な役割を担っており、最終的には中国社会をもっと自由にする一助になると自負している。
DIT社やウルトラ・リーチ(UltraReach)などのサービスを利用する人は、推定1億1千万といわれる中国ネット・ユーザーの1%にも満たない。しかし、海外の情報が得られない中国国民にとっては、同社のサービスは魅力的なはずだ。
夏氏の会社は少人数のスタッフで、予算は百万ドルのみ。運営は多くのボランティアスタッフに支えられているような状況だが、技術の方は最高だ、と顧客からの評判は高い。同社のスタッフは毎日、彼らが送る何千通ものEメールが相手に届いているかどうかをチェックしている。もし送ったメールが跳ね返ってきた場合、文章中のどの文字に問題があったのか、詳しく調べる必要がある。例えば、「VOA」という文字を含むメールは跳ね返ってくるが、真中の文字の「O」を数字の「0」に置き換えると、検閲をすり抜けるのだ。
グーグルなどの大手企業が相継いで当局のネット検閲に協力する中で、DIT社はHRICなどのウェブサイトが中国のファイヤー・ウォールをすり抜けるのに多大な貢献をしている。グーグルの検索エンジンが開設された1月以前、同社の検索エンジンで検索すると、HRICは上記三つの中に入っていた。グーグルの検索エンジンからHRICのサイトへアクセスするのは非常に困難だったが、少なくともそのようなサイトがあることはネット・ユーザーに明らかだった。現在、そのサイトを中国で見ることはできない。しかし、DIT社のおかげでこのサイトにアクセスする人は16万人にのぼり、過去18ヶ月で6倍に増えた。
夏氏によると、中国で何か大きな事件が起きると、より多くの人がこのソフトを利用するという。2003年、SARS蔓延がピークに達していた中国で、当局は正確な情報の公開をためらっていた。そんな中、DIT社利用者は50%の割合で増え、広東省の武装警察による農民虐殺事件の後には利用者の数が倍になったという。
いまだ当局による締め付けが厳しい中国で、このソフトの需要は確実に広がっている。