詩に云う。人の気配もない奥山に、さっと降った雨が、いま上がった。そんな澄みきった夕暮れの天気は、ますます秋らしい。松の枝を通して照らす月明り。清らかに湧く泉は、石の上をさらさらと流れる。竹林の向こうに声がするのは、洗い物をする娘たちが帰っていくところ。水面の蓮が動くのは、漁民の小舟が下ってゆくから。そんな山住まいの秋の趣きの前にあっては、比べものにならぬ春の芳しい花など、枯れ散ってしまえ。もっとも、春の花が枯れても帰らなかったという、あの王孫なら、ここに留まるだろうけどね。
2019/09/19