ベッセント氏「私が胴元」 円支援を強調 日銀利上げで円キャリー取引に転機か

2026/09/11
更新: 2026/09/11

ベッセント米財務長官は、円相場を支える姿勢を改めて鮮明にした。一方、日銀の追加利上げがほぼ確実視されるなか、巨額に積み上がった「円キャリー取引」の行方にも市場の関心が集まっている。

英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)が9日に報じたところによると、ベッセント氏は、円高を支える自身の決意を試すなと市場をけん制し、「今や私が胴元だ」と語った。

ベッセント氏は「われわれが円相場に介入するとき、私は日本政府、日銀、日本の政策当局が何をしようとしているのかを把握している。私と反対の方向に賭けるなら、やってみればいい」と述べた。

さらに、「財務長官がまたリスクを取っていると言われるたびに、まさにそれが私の狙いだと思う。私の方が多くの情報を持っている」と語った。

FTは、投資家から疑問の声が上がるなかでも、ベッセント氏が円安阻止に向けて異例の対応に乗り出しており、今回の発言はその姿勢を最も率直に示したものだと伝えた。

ベッセント氏はウォール街でヘッジファンドを率いた経験を持つ。最近、米政府による約30年ぶりの円買い介入を主導した。また、上昇する長期国債利回りを抑えるため、米国債の買い戻し規模を拡大する方針を示した。

10日の外国為替市場では円高が進み、一時1ドル=153円16銭まで上昇した。約7か月ぶりの円高・ドル安水準となった。

パインブリッジ・インベストメンツの債券運用部長、松川忠氏は、ベッセント氏の発言は市場にとって重みがあるとしたうえで、数か月に一度という従来の利上げペースは、もはや通用しないとの見方を示した。

ベッセント氏は先に、G20財務相・中央銀行総裁会議に合わせて行われたCNBCのインタビューで、「私は市場がまだ持っていない情報を持っている」と述べていた。

同氏は片山さつき財務相と為替介入をめぐって協議するとともに、日銀に利上げを促す発言もしている。

市場では、日銀が9月18日の金融政策決定会合で政策金利を0.25%引き上げ、1.25%とするとの見方がほぼ織り込まれている。さらに、利上げの到達点をめぐる予想も上方修正され始めている。

野村証券は最終的な政策金利を1.75~2%、第一生命経済研究所は2.25~2.5%まで上昇する可能性があると予想している。元日銀審議委員の足立英之氏は、来年1月にも追加利上げに踏み切る可能性があるとの見方を示した。

ロイターが先月実施した調査では、エコノミスト35人のうち、多くが日銀は来年3月末までに政策金利を少なくとも1.5%まで引き上げると予想した。約6割は2027年第3四半期までに少なくとも1.75%に達するとみている。

最終的な政策金利を1.75%と予想する割合は前月の19%から50%に上昇し、2%以上との予想も23%から36%に増えた。市場では、1.25%で利上げが打ち止めになるとは限らないとの見方が強まっている。

円キャリー取引の行方に注目

こうしたなか、長年にわたり世界の金融市場を支えてきた「円キャリー取引」が転機を迎えるのかにも注目が集まっている。

キャリー取引とは、円など金利の低い通貨を借り、その資金をドルや新興国通貨などに換え、債券など利回りの高い資産に投資する手法だ。取引を終える際には、運用資金を円に戻して借入金を返済し、金利差から利益を得る。運用期間中に円安が進めば、為替差益も期待できる。

円は長年、キャリー取引で最も利用される調達通貨の一つとなってきた。

現在、ドルと円の金利差を利用したキャリー取引の年間収益率はおおむね2.5~3.5%で、2024年の5~6%から低下している。

米商品先物取引委員会のデータによると、9月1日までの週の円の売り越しは9万2227枚となり、3週連続で増加した。ただ、7月1日までの週につけた約2年ぶりの高水準である16万3412枚は下回っている。

キャリー取引ではレバレッジを利用することが多いため、実際の持ち高は先物統計が示す規模を大きく上回る可能性がある。

ロイターは9日の分析記事で、日銀の追加利上げが近づき、その後も金融引き締めを続ける可能性があるため、市場参加者にはポジションを調整する時間があると指摘した。

今回の円高も今のところ急激な動きにはなっておらず、株式市場も利上げ観測をおおむね織り込んでいる。このため、円キャリー取引は2024年のように一気に巻き戻されるのではなく、徐々に縮小していく可能性がある。

任義