中国 日本にも影響が?

「民族団結進歩促進法」が7月1日から施行 中共政府の真の目的は

2026/06/22
更新: 2026/06/22

中国で「民族団結進歩促進法」が7月1日から施行される。同法について中国共産党(中共)政府は、「中華民族共同体意識」を強固にし、各民族の合法的権利を守るための法律だと説明している。

一方、ウイグルや南モンゴルなど、弾圧の対象となってきた少数民族側は、同法を民族団結のための制度ではなく、これまで進められてきた同化政策や民族弾圧を合法化し、さらに強化するものだと受け止めている。中共政府の言い分と少数民族側の見解は大きく対立している。

中共政府は同法を「中華民族共同体意識」を強固にし、各民族の合法的権利を守るための制度整備と位置付けている。その一方で、当事者や専門家からは、少数民族への同化政策を法制化し、特に海外に暮らす活動家らへの越境弾圧につながるとの懸念が出ている。

越境弾圧とは、中共政府が国境を越えて海外在住者を監視、脅迫し、沈黙を強いる行為を指す。対象は香港の民主活動家、ウイグルやチベットなどの少数民族、外国人研究者にまで及び、日本に住む人々も例外ではないとされる。

特に中国の越境弾圧については一橋大学の市原麻衣子教授は「世界最大規模であり、対象者の数も手段の範囲も圧倒的だ」と述べ「カンボジアやインドから日本在住者が弾圧を受けた例もあり、実際の被害者はさらに多い可能性が高い」と指摘している。市原氏は「域外適用は日本の主権侵害そのものだ」と強調した。

香港国家安全維持法(2020年)では香港外での活動も処罰対象とされ、日本でSNS投稿をした香港人学生が一時帰国時に拘束された事例もある。

「民族団結進歩促進法」では、あらゆる民族への差別や圧迫を禁じるとしている。一方で、標準語である「普通話」教育の定着を各民族に求めている。この点について、少数民族側からは、民族固有の言語や文化を弱める同化政策につながるとの見方が示されている。

ウイグルや南モンゴルなどの当事者たちは、この法律がこれまでの民族弾圧と同化政策を合法化・強化するものだとして、強い危機感を表明している。

産経新聞によると、世界ウイグル会議のトゥルグンジャン・アラウドゥン総裁は、同法について「ウイグルジェノサイドを合法的な扱いにしてしまう」と懸念を示した。また、法律が「民族の団結」といった前向きな表現を用いていることについても、実態は「漢人以外の民族のアイデンティティーを全面否定する内容だ。『中国共産党のロボットになれ』に過ぎない」と批判している。

南モンゴルクリルタイ、すなわち世界南モンゴル会議も、同法が少数民族に対する同化政策を法制度として固定化し、民族の言語や文化、宗教的アイデンティティに深刻な影響を及ぼすとしている。南モンゴルでは2020年以降、モンゴル語教育が事実上廃止され、文化継承の基盤が破壊されてきたとされ、同会議は、同法がこうした同化政策をさらに制度化するものだと非難している。

トゥルグンジャン・アラウドゥン総裁は、これまでは精神的な脅しを受けていたが、今後は人の命を狙うなど、より具体的な弾圧に移していく口実になりかねないと指摘している。南モンゴル側も、同法の域外的影響が海外に暮らす少数民族コミュニティや人権活動家に及ぶ可能性があると警告している。

中国の政治動向に詳しい専門家の袁紅氷氏は、同法について「台湾有事を見据えた国家ぐるみの戦争準備という深刻な意味合いを持つ」との見解を示している。袁氏は、中共政府が表向きに掲げる「民族の団結」は、実際には台湾有事などの緊急事態に向けて、国内の統制を一層強化し、戦争に備えるための布石であると分析している。

中共政府は同法を民族団結と権利保護のための法律と説明しているが、少数民族側や専門家の見方では、その実態は言語、文化、宗教的アイデンティティを抑え込み、国内外の反対意見を封じ込める制度的枠組みである。民族団結進歩促進法は、中国国内の少数民族政策にとどまらず、海外に暮らす当事者や人権活動家にも影響を及ぼす可能性がある法律として注視されている。

大道修
社会からライフ記事まで幅広く扱っています。