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直感の謎:「勘」はいったいどこから来るのか

私たちは皆、何らかの形で直感を経験したことがあるでしょう。理由も分からず直感的にわかること、意識が追いつく前に何かが正しい、あるいはひどく間違っていると感じること。あるいは、見知らぬ人について何かがおかしいという単純な本能。

直感は迷信を超え、主に意識下で機能する洗練された形の知性として機能します。

この現象は、科学者、哲学者、そして日常の意思決定者を魅了する疑問を提起します。直感はいったいどこから来るのでしょうか?
 

方法を知らずに知る

研究によると、チェスのグランドマスターにある局面を評価する時間をたった5秒だけ与えても、意識的に分析する時間がないにもかかわらず、正確な予測ができることがわかっています。

何千時間もの経験を積んでいるため、彼らの脳は熟考を必要とせず、パターン認識によって素早く判断できるのです。こうした経験は、医師、軍人、消防士など、さまざまな分野の専門家にも同様に見られ、直感が豊かな過去の経験の土台から生まれ得る可能性を示しています。

スタンフォード大学 CCARE(思いやりと利他心の研究教育センター)の科学ディレクターで心理学者のエマ・セパラ氏は、こうした場面での直感について、エポックタイムズの取材に対し「意識的な思考とは別に働く、速く本能的な知性の形です」と語っています。

しかし、このような直感的で迅速な処理は、専門的スキルに限られるものではありません。自分の人生における複雑な状況でも、「勘に従う」ことが当てはまる場合があるのです。研究では、家を選ぶことや大きな人生の決断など、複雑な意思決定に直面したとき、細部まで丹念に分析するよりも、自分の感情に意識を向けた人のほうがより良い決定を下す傾向があり、さらに重要な点として、その結果により満足しやすいことが示されています。

ポズナン経済・ビジネス大学で経営判断における直感について教えるカミラ・マレフスカ教授は、直感は、複数の選択肢があり、明確な基準がなく、情報が不十分で、前例のない独自の問題に直面する状況において、非常に価値のあるものだと考えています。
 

腸の「直感」を生む生物学

私たちは「虫の知らせ」や「直感」といった感覚をよく口にしますが、近年の研究により、この表現には比喩的な意味だけでなく、生物学的にも根拠があることが示されています。

腸には、科学者が「第二の脳」と呼ぶ仕組みがあり、2億個以上のニューロンで構成されています。これらのニューロンは迷走神経を通じて脳と信号を送り合い、「腸―脳軸(ガット・ブレイン・アクシス)」を形成しています。このシステムはフィードバックループを生み出し、私たちの身体的・感情的な感じ方に影響を与えます。

さらに、約38兆個の細菌からなる腸内細菌叢の健康状態も、切迫感や感情、さらには記憶にまで影響を及ぼす可能性があります。腸内細菌叢が脳に作用する化学物質を作り出すためです。マウス実験では、腸内細菌叢のバランスを変えると脳の神経化学が変化し、マウスが大胆になったり不安になったりすることが示されています。注目すべき点として、人間では、気分や意思決定に影響する重要な神経伝達物質であるセロトニンのおよそ90%が腸で作られています。これは、感情状態や直感的な感覚が腸―脳軸の影響を受けうることを示しています。

このつながり自体は新しいものではありません。迷走神経は、私たちの祖先が腸に基づく直感的な信号を通じて食べ物を見つけ、危険を避けるのを助けていた可能性があります。現代でも腸―脳システムは機能しており、ただし働き方は当時とは異なっています。大きな決断の前にお腹がそわそわしたり、何かがおかしいと感じたときに胃が沈むような感覚がしたりするなら、それはこの古くからのコミュニケーションシステムが働いている体験なのかもしれません。
 

無意識のゲシュタルト

腸―脳軸以外にも、神経科学者たちは直感を説明しうる別の脳のプロセスを見いだしています。直感を理解する一つの方法は、記憶がどのように形成されるかを調べることです。

意識と記憶を研究する神経科学者のドン・タッカー氏は、記憶は意識にのぼる前に形成されると言います。

「記憶は、一般的な意味がまだ十分に明確化されていない暗黙(インプリシット)なレベルから、意識的にアクセスできる形へと組織化されていきます。しかし、その段階でも情報の要点を感じ取らせる力は非常に強いのです」と、タッカー氏はエポック・タイムズに語りました。

つまり、私たちが何かを意識的に思い出したり、気づいたりする前に、脳、特に辺縁系が経験を素早く整理し、重要な要素を拾い上げ、全体としての理解を与えているということです。

このプロセスは「ゲシュタルト」と呼ばれる別の心理学概念とも関係しています。ゲシュタルトとは、脳が個々の部分ではなくパターンとして捉えようとする傾向、そして不完全な情報を意味のあるものとして理解するために“穴埋め”して完結させようとする働きのことです。

たとえば、ある管理職が、一見完璧に見える応募者を面接している場面を考えてみてください。履歴書は非の打ちどころがなく、受け答えも申し分ありません。それでも、なぜか「何かがおかしい」と感じるのです。後になってその管理職は、応募者の話に潜む微妙な矛盾、前職の話題になったときの視線の変化、言葉と非言語的な表情・しぐさの不一致に気づきます。面接中はその合図を意識していなかったかもしれませんが、脳はそれらを組み合わせて直感的な警告を作り出していたのです。これが「無意識のゲシュタルト」です。

神経科学はこうした考え方を裏づけています。脳の右半球は、私たちが意識していなくても、パターンを見つけたり、合わない点に気づいたりするのが得意です。海馬は、いま目にしているものを過去の経験と照合し、眼窩前頭皮質は情動的な記憶を現在の感覚入力と統合します。その結果は「考え」ではなく「感覚」として現れるように見えます。

無意識のものが意識へと上がってくる過程は、「予測処理(predictive processing)」と呼ばれる仕組みによって動かされます。

刺激を受け取ってから反応するのではなく、予測処理理論では、脳は経験にもとづいて「何が知覚されるはずか」を能動的に予測していると考えます。そして、その予測と合わないズレ――期待されたパターンに当てはまらない何か――が検出されると、それは直感的な不安や「なぜか分かる」という感覚として現れます。

タッカー氏によれば、意識はこの原始的で直感的なレベルから、明確化のプロセスを通じて発達していきます。「いや、これはやめたほうがいい」という漠然とした感覚が、なぜそう感じたのかを脳が理解しようとするにつれて、徐々により意識的で明確なものになっていくのです。

では、直感は別のところからも来るのでしょうか。

もしかすると、直感は単に現在に反応しているだけではなく、未来を垣間見せてくれるものなのかもしれません。
 

未来からの記憶

1990年代半ば、ネバダ大学ラスベガス校のディーン・ラディン(Dean Radin)氏は、意識が時間を超えるかどうかを検証する実験を設計しました。参加者を脳波計(EEG)につなぎ、コンピュータ画面の前に座らせます。コンピュータは短い間隔の後、ランダムに心地よい、または不快な画像を表示します。

ラディン氏は、人々の脳が、不快な画像を見る直前にだけ活動が高まることに気づきました。逆に、ポジティブな画像の前にはそのような変化は見られませんでした。まるで脳が数秒先に悪いことが起こるのを察知しているかのようでした。この効果は「予感(presentiment)」と呼ばれました。

結果は統計的に有意であり、コーネル大学のダリル・ベムなど、他の研究者も自身の実験で同様の効果を見いだしました。

2012年には、30年にわたる26件の研究を対象にしたメタ分析が行われ、ラディン氏やベム氏の実験から、人間の生理機能が「1〜10秒後に起こる、ランダムに提示される情動的刺激」と「中性的刺激」を区別しうることを示唆すると結論づけました。

これは予知——未来を視る超能力——とは異なります。参加者が意識的に予測しているわけではないのです。むしろ、自律神経系――心拍数、皮膚コンダクタンス(皮膚電気反応)、脳活動――が、情動的に重要な刺激に遭遇する前から測定可能な興奮反応を示します。2012年のメタ分析によれば、効果量は小さい可能性があります。それでも、複数の研究室と研究者にまたがって統計的に有意であり、偶然である確率は「1兆分の1」と推定されました。これは、コイン投げで40回連続して表が出るのと同程度だということです。

メタ分析を主導したノースウェスタン大学のジュリア・モスブリッジ氏は研究発表時にこう述べました。「この現象は異常だと一部の科学者は主張します。なぜなら、現在の生物学の理解では説明できないからです」

それでも、直感的な予感は研究が進み、認知も広がりつつあります。

セパラ氏は、直感という「認知能力」を発達させることには実利があると言います。兵士が「勘」だけで生き延びた事例が、その証拠だとされています。軍はその結果、「第六感」あるいは米国海軍研究所が呼ぶ「スパイディセンス」の開発・理解に多大な資源を投入しました。1995年にはCIAでさえ、予知に関する研究を機密解除しました。

予知を探求する研究者エリック・ワーゴ氏はエポックタイムズに対し、直感は生物が環境に反応する仕組みの根本的特徴を表しているのであり、「第六感」と呼ぶべきではなく、むしろ「第一感」と呼ぶべきだと言います。彼は、この能力が脳の微小管に根ざしている可能性があり、量子プロセスを通じて、情報が過去から未来へだけでなく、未来から過去へも移動しうるのではないかと示唆しました。

「予知とは、別の名前で呼ばれた直感だと私は考えています」とワーゴ氏は述べ、それが「最も単純な生物における最初期の誘導システム(危険回避のセンサー)の一つ」になりうるとも語りました。

「現在の神経科学では説明できない、何かが起きているのです」と彼は言います。
 

より直感的になる

直感が脳から来るのか、腸から来るのか、あるいはもっと神秘的な何かに由来するのかは別として、研究者たちはいくつかの実践的な点について概ね一致しています。

第一に、直感は鍛えることができます。「直感は、教育で軽視されてきた別の認知形態と考えられます」とセパラ氏は言います。「私たちは直感や革新性、創造性よりも合理性を優先してきました。しかし今、論理や合理性ほどにはこれらの技能が育まれていないために、若者の間で創造性の危機が起きているのが見えてきています。直感は認知能力の一つなのですから、訓練できるものなのです」

ワーゴ氏は、直感を育てることは注意を払うことから始まり、マインドフルネスの実践で発達させられると述べています。「現代人は環境とのつながりを失ってしまいました」と彼は言います。「自然環境だけでなく、いま自分がどこにいて、何者で、誰で、何をしているのかに注意を向けることも含めてです」

第二に、直感には識別が必要です——本物の直感を、恐れや偏見、願望思考から区別することです。そのためには自己認識が求められます。「そうでなければ、自分を導いているのが恐れなのか直感なのか分からなくなってしまいます」とセパラ氏は言います。

第三に、直感と合理的思考の両方を統合することです。

直感は絶対に正しいわけではありません「直感は検証が容易ではないため、間違っていることもあります」とタッカー氏は言います。また、直感は知識獲得の初期段階でもあります。だからこそ、合理的な分析が必要です。

マレフスカ氏の研究もこのバランスを反映しています。このバランスを裏づけています。購買担当マネージャーは、合理的分析と直感を組み合わせたときに最良の結果を得ました。

最も効果的な意思決定は、直感だけでも純粋な論理だけでもなく、その二つの意識的な相互作用から生まれるのです。

(翻訳編集 日比野真吾)

生物医学科学の理学士号と人文科学の修士号を持つ健康分野のライター。メリーランド大学で生物医学研究に従事し、NASAのデータ分析プロジェクトに参加したほか、ハーバード大学ギリシャ研究センターの客員研究員も務める。健康ジャーナリズムでは、綿密な調査をもとにした洞察を提供することを目指している。