初の深海レアアース試験採取 専門家が指摘する二つの狙い

2026/01/14
更新: 2026/01/14

1月12日、日本は南鳥島周辺海域で、世界初となる深海レアアースの試験採取を開始した。水深6千メートルの海底から、レアアースを含む海泥を回収する試みで、中国共産党(中共)がレアアースを経済的圧力の手段として利用している中、日本が対中依存からの脱却を進める契機になると専門家はみている。

地球深部探査船「ちきゅう」出港 水深6千メートルでレアアース試験採取

掘削装置を搭載した地球深部探査船「ちきゅう」は1月12日、静岡県清水港を出港し、東京の南東約1900キロに位置する南鳥島沖へ向かった。約1か月にわたり、深海に管を下ろしてレアアースを含む海底泥を船上に汲み上げる。水深6千メートルでのパイプ方式による採取は世界初となる。

このプロジェクトは、日本政府の「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」の主導で進められ、日本海洋研究開発機構(JAMSTEC・ジャムステック)が実施している。プロジェクト責任者の石井正一氏は「7年にわたり準備を重ねてきた。6千メートルの深海からレアアースを回収できれば、技術的に大きな成果となるだけでなく、日本のレアアース供給の多様化にとっても極めて重要だ」と語った。

調査によると、南鳥島周辺には1600万トンを超えるレアアースが埋蔵しており、世界第3位規模とされる。EV用高性能磁石に使われるジスプロシウムは日本の需要を約730年分、レーザーや医療機器に用いられるイットリウム(釔)は約780年分を賄えると試算されている。

これらの深海レアアース泥は、陸上鉱床に比べて放射性元素の含有量が低く、廃棄物処理の面でも環境負荷が小さい。

政府は今回の試験が順調に進めば、2027年により大規模な採取試験を実施する計画だ。小野田紀美・経済安保相は2025年12月のSIP成果報告会で「特定国に依存しない安定した国産レアアースの供給体制の実現を目指す本課題は、我が国の経済安全保障上、極めて重要」と強調した。

専門家「2年以内に対中依存脱却も」

台湾国防安全研究院戦略資源研究所の蘇紫雲所長は「日本の今回の取り組みは、中国へのレアアース依存を減らすうえで重要な一歩だ」と指摘する。

2012年以降、各国が対策を進めてきたが、日本はとりわけ積極的で、海水や海底からの抽出、製品設計段階での使用量削減という二つの技術路線を進めてきたという。

蘇氏は「中国のレアアースが国際市場で支持されてきたのは、価格の安さと、20~30年に及ぶ投資による精錬技術の蓄積があるためだ」としたうえで、「中国がレアアースを武器化すれば、民主主義国は依存低下を加速させ、長期的な戦略リスクをより強く認識することになる」と述べた。対中依存は「2年ほどで解消できる」との見方を示している。

同研究院の王繡雯・助手研究員は採掘から精錬、製品化までには時間がかかるが、欧米諸国が中国のレアアース圧力から脱却する決意を示したと評価。「代替供給源が確立されれば、中国の威圧は次第に効力を失い、市場占有率も低下する」と指摘した。

また、南鳥島が第2列島線の起点で日本最東端に位置することから、「レアアース開発には、中共艦艇の活動を監視・抑止する軍事的な意味合いもある」との見方を示した。

日本の対中依存度はすでに低下

今回の試験は、緊張が続く日中関係の中で行われた。2025年11月、高市早苗首相は台湾をめぐり、中国が武力を行使すれば日本の存立に対する脅威になり得ると発言。中国が撤回を要求しても応じなかったことから、2026年1月6日、中国は軍民両用物資の対日輸出禁止を発表し、日本は正式に抗議している。

レアアースは電気自動車やスマートフォン、風力発電設備、軍事装備に不可欠な材料で、2010年にも中国が対日輸出を停止した経緯がある。日本はその後、海外投資やリサイクル、使用量削減技術を進め、対中依存度を約90%から60%まで引き下げた。

G7が連携 代替供給網構築へ

中国は世界のレアアース供給の約7割を掌握しており、地政学的圧力の手段としてきた。ベッセント米財務長官は1月12日、G7会合を主導し、各国に対し脱中国依存を加速するよう呼びかけた。

片山財務相は1月9日に日経アジアのインタビューで、米欧と協力してレアアースの供給網・市場を構築することを目指し、中国(中共)が稀土を「武器化」するのを防ぐべきだと語った。

アメリカは2025年10月、オーストラリアと重要鉱物分野での協力協定を締結。オーストラリアはその後、ヨーロッパ、日本、韓国、シンガポールから協力打診を受けている。

蘇氏は、オーストラリア、グリーンランド、ウクライナなども有望な供給地だとし、王氏も「民主主義国が連携して多元的な供給体制を構築すれば、中共のレアアース支配は徐々に効力を失う」と分析する。

ベッセント氏は、中共が輸出停止を脅すことは「大きな誤りだ」と述べ、中国の優位は「1~2年しか持たない」との見通しを示した。

李淨
駱亜
中国語大紀元の記者、編集者。