政府は昨年12月、中国人向けビザの発給条件を緩和する方針を発表したが、与党議員からの反対や日中関係の悪化を背景に、この計画は停滞している。
2024年12月25日、当時の外相である岩屋毅氏は中国訪問中、中国人個人旅行者を対象に、複数回入国可能な10年有効数次ビザを発給する方針を発表した。現在、中国人は3年または5年有効の数次ビザを取得でき、団体旅行客についても日本での滞在期間が延長される予定となっている。
新たな10年ビザは、一定の高所得や資産を証明できる個人を対象に、2025年春から申請を受け付ける見通しだった。
しかし、岩屋氏の発表直後から自民党内で反対の声が上がった。反対派は、オーバーツーリズムへの懸念や、日本人が中国共産党(中共)によって拘束されている状況下で融和的な姿勢を示すことへの不安を示していた。
今年10月には高市早苗氏が首相に就任。高市首相が11月に台湾有事を巡って行った発言をきっかけに日中関係が悪化し、ビザ緩和策の先行きはさらに不透明となった。その後、中共政府は中国国民に対し日本への渡航を控えるよう呼びかけ、両国間の人的往来は停滞している。
外務省の高官は日経新聞に対し、「現在の日中関係を踏まえ、ビザ緩和がどれほどの効果をもたらすのか慎重に検討する必要がある」と語った。
現職の茂木敏充外相も12月16日、記者団に対し、「さまざまな状況を評価しながら慎重に検討している」と述べている。
ビザの発給は各国の主権に属する行為であり、既に発表された政策の実施を延期しても、国際的な約束に違反するものではない。
高市政権にとって、外国人政策は重要課題の一つとなっている。政府は観光産業の重要性を認識する一方、オーバーツーリズムが国民生活に与える影響も重視している。
日本政府観光局によると、2025年は観光客が大幅に増加しており、1〜11月の累計訪日外国人旅行者数は3907万人に達し、前年通年の3687万人という過去最多記録をすでに上回った。増加の背景には、韓国・台湾・アメリカからの訪日客の伸びがある。11月にはこれらを含む19市場で月間過去最高を記録した。
昨年発表されたビザ緩和策には、65歳以上の中国人に対して個人旅行時の就業証明の提出を不要とすることや、短期の数次ビザの対象拡大、団体旅行客の滞在可能期間を15日から30日に延長することも含まれている。また、3年ビザ取得者に対し、発給後3か月以内に一度入国しなければならないという規定も、撤廃する方針とされていた。
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