26日、上野厚生労働大臣は定例記者会見で、令和7年11月分の雇用統計を公表した。同月の有効求人倍率(季節調整値)は1.18倍となり、前月と同水準を維持した。また、完全失業率についても2.6%と前月から横ばいで推移している。
統計の詳細と背景:産業ごとの明暗
今回の発表によると、求職者1人に対して何件の求人があるかを示す有効求人倍率は下げ止まっており、求人が引き続き求職を上回る状況が続いている。一方で、より詳細な指標をみると、正社員有効求人倍率は0.98倍と前月を0.01ポイント下回った。
産業別の新規求人(原数値)は、前年同月と比較して10.4%の減少となっており、特に以下の産業で大幅に減少した。
- 生活関連サービス業、娯楽業(19.9%減)
- 卸売業、小売業(17.2%減)
- 宿泊業、飲食サービス業(14.1%減)
- 製造業(12.1%減)
- 運輸業、郵便業(8.7%減)
地域別では、就業地別の有効求人倍率で福井県が1.82倍と最高値を記録する一方、福岡県が0.98倍と最も低い数値となった。受理地別では、東京都が1.73倍と高く、神奈川県が0.81倍と低水準に留まっている。
今後の予測と留意点
上野大臣は、現在の雇用情勢について「有効求人倍率は横ばいで、緩やかに持ち直している」との認識を示した。しかし、今後の動向については楽観視できない要素も含まれている。大臣は、特に物価上昇等が雇用に与える影響に留意する必要があると言及した。
新規求人倍率が2.14倍と前月比で0.02ポイント上昇している点は、企業の採用意欲の兆しとも捉えられるが、実態としては産業間での格差や、物価高騰によるコスト増が企業の採用計画にブレーキをかける可能性も残されている。政府としては、これらの経済的要因が労働市場に及ぼす影響を慎重に見極めていく方針だ。
現在の雇用情勢は、いわば「座りたい人(求職者)よりも、用意されている椅子(求人)の方が少しだけ多い椅子取りゲーム」の状態にあるといえる。ただし、その椅子はどの部屋(業界)にも均等にあるわけではない。一部の部屋(サービス業や小売業など)では椅子が急速に片付けられており、一方で特定の地域や職種にはまだ余裕があるという、業界ごとのばらつきが生じている状態だ。
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