日本政府は昆虫食の普及や産業化を見据え、科学的根拠に基づく安全性確保に向けた取り組みを進めており、科学的根拠に基づいた食品安全行政の推進や技術向上のための研究を支援することを目的に消費者庁は25日、国内の大学、民間企業、公的研究機関、公益法人等に所属する研究者を対象に、実験備品や人件費、旅費、業務請負費等の「直接経費」に加え、研究環境の向上に充てる「間接経費」を合わせた補助金の交付の要項を発表した。
昆虫は、どこにでも存在する「遍在性」や、少ない飼料で効率的に成長する「飼料変換率」の高さといった特性を持ち、持続可能な食品としての潜在力を有するとされる。日本では古くからイナゴやハチノコを食する文化がある一方、近年はこれまで食用とされてこなかった昆虫の流通や、大規模な養殖による産業化が検討されるようになっている。
こうした変化の中で課題となっているのが、食品衛生上のリスク管理である。従来の食習慣とは異なる形態での流通や生産が進むことで、有害化学物質や微生物、アレルゲン性物質などのリスクを科学的に検証する必要性が高まっている。
消費者庁は、令和8年度の「食品衛生基準科学研究費補助金」において「『昆虫食』における大規模生産等産業化に伴う安全性確保のための研究」を公募課題(ZA-2)として設定した。研究では、有害化学物質やアレルゲン、微生物などによる食品衛生上のリスクの検証に加え、養殖の大規模化に伴い、飼料などを通じて有害成分が混入する可能性についても検討することが求められている。また、養殖の産業化が進んでいる昆虫種や、天然で流通量の多い種に重点を置いた調査を行うことが想定されている。
研究は一時的な調査にとどまらず、行政施策に活用可能な科学的エビデンスの構築を目的とする。予算規模は1課題あたり年間800万円から1千万円程度とされ、間接経費を含めた形で配分される。実施期間は令和8年度から令和9年度までの最長2年間で、採択にあたっては昆虫食の安全性評価に精通した専門家が参画していることや、国内外の最新研究を踏まえていることが条件となる。
消費者庁が進める食品安全科学研究事業は、フードテックなど新技術を用いた食品について、先行的に調査・検討を行い、安全性を確保することを目的としている。得られた研究成果は、食品衛生法に基づく規格基準の策定や、消費者への情報提供に活用される予定だとされる。
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