日本政府発表によると、2025年12月15日から19日にかけて、国際原子力機関(IAEA:International Atomic Energy Agency)の職員および国際専門家からなるタスクフォースが訪日し、東京電力福島第一原子力発電所におけるALPS処理水の海洋放出に関する安全性および規制面のレビューを行った。これは放出開始後、第5回目となるレビューである。
ALPS処理水とIAEAによるレビューの枠組み
ALPS処理水とは、福島第一原子力発電所内の放射性物質を含む水を、多核種除去設備(ALPS)等で浄化し、トリチウム以外の放射性物質の濃度を規制基準値以下にした水のことである。海洋放出に際しては、トリチウムについても基準値を十分に満たすよう、海水で大幅に希釈される。
日本政府は、この処理水の取り扱いの安全性を確保するため、2021年7月にIAEAとの間で安全性レビューに関する付託事項(TOR)を署名した。これに基づき、原子力分野の国際的権威であるIAEAによる独立したレビューが継続的に実施されている。タスクフォースには、IAEA職員のほか、アルゼンチン、英国、オーストラリア、カナダ、韓国、中国、フランス、米国、ベトナム、マーシャル諸島、ロシアの11カ国から選ばれた国際専門家が、独立した立場で参加している。
今回のレビュー結果
今回の訪日調査において、IAEAタスクフォースは日本政府および東京電力から以下の点について情報提供を受け、議論を行った。
- 放出実績とモニタリング: 2024年12月から2025年12月までの海洋放出実績、および放出開始以降の海域モニタリングの結果。
- 安全性の確認: 国際安全基準に則った日本の取り組み状況について議論が行われた結果、ALPS処理水の海洋放出が安全に行われていることが改めて確認された。
- 現地調査: 12月17日にはタスクフォースが福島第一原子力発電所を直接訪問し、放出設備や、処理水の測定・分析を行う施設を実際に確認した。
日本政府は、ALPS処理水の安全性や取り扱いについて国内外の理解を醸成する上で、IAEAによる独立したレビューを極めて重要であると位置づけている。
今後も以下の取り組みが継続されると考えられる。
- 継続的なモニタリングとレビュー: 放出開始前からのプロセスと同様に、今後も定期的な安全性レビューが継続される見通しである。
- 透明性の維持: 中立性を堅持するIAEAとの緊密な連携を維持し、科学的根拠に基づいた情報を発信し続けることで、信頼性と透明性を確保する取り組みが続く。
- 国際的な理解の促進: 専門家チームに近隣諸国を含む多国籍なメンバーが含まれていることから、これらの独立した知見を通じて、国際社会へのさらなる説明が尽くされていくことが期待される,。
このように、厳格な国際的監視体制の下で放出プロセスを進めることにより、安全性に関する客観的な評価が今後も積み重ねられることが期待される。
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