2025年12月18日、高市早苗首相は自身のSNS(X)を更新し、「日韓基本関係条約」の発効から60周年を迎えたことについてメッセージを発信した。 投稿では、これまでの歩みを振り返るとともに、今後の両国関係の発展に向けた強い意欲が示されている。
高市首相は、この60年間で積み重ねられてきた日韓間の多様な交流と協力を高く評価した。特に、「国民間の交流」が現在の良好な二国間関係を支える基盤となっているとの認識を示している。
また、首相自身の外交成果として、APEC首脳会議やG20サミットの際に行われた李在明(イ・ジェミョン)大統領との首脳会談に言及した。両首脳は、1965年の国交正常化以来築かれてきた基盤の上に立ち、日韓関係を「未来志向」で安定的に発展させていくことで一致している。
投稿には、両首脳の個人的な信頼関係を物語るエピソードも盛り込まれた。高市首相は、「総理就任会見時の発言をお聞きになったのか、李在明大統領からは素晴らしい化粧品をいただき、大変喜んでいます」と述べ、李大統領から贈られた韓国ブランドの化粧品に対して感謝の意を表すとともに、好物の「韓国のり」を日本の友人からもプレゼントされる機会が増えたといった身近な話題を交え、親密なムードを演出している。
厳しい戦略環境と連携の必然性
高市首相が今回の投稿で強調したのは、単なる祝辞にとどまらない。その背景には、「現下の厳しい戦略環境」という認識がある。
現在、地域および国際社会が直面している様々な課題に対し、日韓が連携して臨むことは、安全保障や経済の観点から極めて重要であると首相は指摘している。60年という節目は、これまでの伝統的な友好関係を再確認するだけでなく、共通の課題に対処するための戦略的パートナーシップを再定義する機会となっている。
シャトル外交の深化と多角的な連携
今後の日韓関係について、投稿内容からは以下の2点が予測される。
- 「シャトル外交」の更なる活性化 高市首相は、首脳が頻繁に往来する「シャトル外交」を通じて関係をさらに深めていくことに期待を寄せている。これにより、懸案事項の迅速な解決や、新たな協力分野の開拓が加速する可能性が高い。
- 国際課題における連携の強化 「地域・国際社会の様々な課題」に日韓が連携して臨むという方針に基づき、安全保障、経済安全保障、エネルギー問題といった広範な分野での共同歩調がより明確になることが予想される。
儀礼を超えた国旗への黙礼
高市首相に対する韓国国内の視線は、就任前から極めて厳しいものだった。靖国神社参拝への姿勢や歴史認識を巡る過去の発言から、韓国メディアは「右派指導者の再来」と警戒を強め、SNS上では「強硬な対韓政策が始まるのではないか」という不安の声が渦巻いていた。警戒ムードが拭えない中、2025年10月30日、韓国・慶州で開催されたAPEC首脳会議の傍らで行われた日韓首脳会談に臨んだ高市首相に突きつけられていたのは、かつてないほどの逆風だった。
事態が動いたのは、メディアが注目する中、李在明大統領との会談場に入場した際のことだ。
写真撮影を終えた高市首相は、着席する直前、不意に足を止めた。そして、会場に掲げられた韓国の国旗「太極旗」に対し、深く、そして静かに一礼を捧げたのである。その後、自国の日の丸に対しても同様の敬意を払ったその姿は、政治的な計算を超えた「相手国への純粋な敬意」としてカメラに収められた。

外交プロトコル上、こうした会談場内の国旗にお辞儀をすることは義務付けられていない。それゆえに、この「想定外」の振る舞いは、中継を見守っていた韓国国民に強い印象を残した。
「反日」から「好感」へ、一変した世論
この映像がSNSやテレビニュースで拡散されると、韓国のネット上では驚きの声が広がった。
保守系の朝鮮日報は「異例の黙礼に込められた敬意」を大きく報じ、現地のSNSでも「言葉よりも強い誠実さを感じた」といった好意的な反応が相次いだ。左派系の媒体も高市首相の外交手腕を評価し始めた。
歴史問題や安全保障など、日韓間には依然として高い障壁が横たわっている。しかし、高市首相が見せたあの一礼は、言葉による何千回の説明よりも雄弁に、隣国への敬意を伝えた。
「信念は曲げない、しかし敬意は忘れない」。この慶州での一幕は、強硬な保守派というレッテルを「礼節あるパートナー」へと書き換え、日韓外交における新たな対話の地平を切り拓いた瞬間として、記憶されることになるだろう。
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