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米サウジが稀土精錬で協力 サウジに新工場 中国依存の低減狙う

2025/11/20
更新: 2025/11/20

MPマテリアルズ(MP Materials)は11月19日、アメリカ国防総省とサウジアラビア国営鉱業会社マーデン(Maaden)と連携し、サウジアラビアにレアアース精錬工場を建設する計画を発表した。中東地域における重要鉱物の加工能力を高め、中国産レアアースへの依存度を下げることが狙いだ。

サウジのムハンマド・ビン・サルマン皇太子は現在、ワシントンを訪問中だ。ホワイトハウス訪問は2018年以来となる。今回の訪米は、両国間の経済および安全保障関係を強化することが目的だ。

ロイター通信などによると、今回の合意に基づき、MPマテリアルズと国防総省は合弁会社を通じてサウジの精錬工場の株式49%を共同保有し、マーデンが残る51%を持つ。MP側は、今回の計画は7月にアメリカ政府と結んだ数十億ドル規模の協力合意を発展させたものであり、永久磁石用材料の生産を拡大し、兵器、EV、各種電子機器に不可欠な重要素材の分野で競合国の優位を弱めることを目的としている。

MPマテリアルズは、アメリカ国内で唯一稼働しているレアアース鉱山を運営しており、7月には国防総省からの出資受け入れに合意した。これによりアメリカ政府は同社の最大株主かつ主要な資金支援者となっている。今回の発表後、同社株は19日午前の取引で4%超上昇した。

現在、世界のレアアース精錬分野では中国が圧倒的なシェアを握っており、レアアースは先端技術や軍需、再生可能エネルギーなど多くの分野の基盤となっている。過去の貿易摩擦の際に中国共産党(中共)が一部の重要鉱物の輸出を制限したことから、アメリカを含む西側諸国ではレアアース供給網の再構築が課題となってきた。

一方、サウジで急成長する鉱業分野は、サルマン皇太子が掲げる経済改革「ビジョン2030」の重要な柱とされる。石油依存からの脱却と経済の多角化を目指すなか、同国は鉱物資源の開発と加工能力の強化を戦略分野に位置づけている。

MPマテリアルズのジェームズ・リティンスキー最高経営責任者(CEO)は、「アメリカ政府から、これほどの規模と意義を持つプロジェクトへの参加を打診されたことを光栄に思う」と述べた。マーデンのボブ・ウィルトCEOも、この合弁事業は「この重要なグローバル産業の発展を後押しするうえでの重要な一歩だ」と強調した。

サウジに建設される施設では、サウジおよび他地域から供給されるレアアースを原料とし、重レアアース酸化物と軽レアアース酸化物に分離・精錬する。これらは商業用と軍事用で異なる用途を持つ素材であり、精錬された製品はアメリカとサウジの製造業や防衛産業で利用されるほか、同盟国にも販売される見通しだ。

MPマテリアルズは2020年以降、カリフォルニア州で精錬プロセスの改良に取り組んできた。従来のレアアース精錬は、環境負荷が大きく、コストも高く時間もかかるとされ、より効率的でクリーンな技術開発が課題になっている。レアアース加工では最大17種類の金属を扱う必要があり、それぞれの原子半径や原子量が近いため、特定の順序で分離しなければならないなど工程は極めて複雑だ。

レアアースは、金属ごとに決まった順番で分離していく必要があり、工程が非常に複雑。このため、サウジアラビア鉱業会社とMPマテリアルズがサウジ国内でレアアースを加工する際も、必要な元素だけを簡単に選び出すことはできない。

MPマテリアルズは、サウジ側と磁石製造での協力についても協議していることを明らかにしており、今回のプロジェクトは同社のグローバル展開を一段と押し広げるとともに、米サウジ両国の経済・安全保障面での連携を深め、より強靭なレアアース供給網の構築につながるとみられる。

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