中国武術「少林拳」の総本山として世界的に知られ、中国国内でも屈指の名声を誇る少林寺。その元住職である釈永信が、11月16日、資金横領や資金流用、収賄の疑いで逮捕された。
釈永信(しゃく・えいしん/俗名 劉応成)は、少林寺の商業化を推し進めて大きな利益を生み出し、「少林CEO」と呼ばれるほどの影響力を持っていた人物である。
今年7月には、寺の資金を私的に流用した疑いに加え、複数の女性との不適切な関係が明らかになり、僧侶としての資格はすでに取り消されていた。
問題が浮上したのは今回が初めてではない。2015年には弟子たちが「寺の財産の私物化」や「女性問題」を実名で告発したが、当時の中共当局はすべてを否定し、処分は行われなかった。
長年、釈永信は政界とのつながりが強い人物として知られ、その後も少林寺の商業活動を広げながら地位を保ち続けた。
今年になって状況は一変した。寺に関係する企業の責任者や親族が次々と調査対象となり、地元政府の関係者が少林寺に常駐するなど、寺は厳しい監督下に置かれている。
一部の報道やネット上では、今回の動きの背景に「釈の後ろ盾がなし崩れた」とする見方が広がっている。支えが続いていれば、釈の扱いは違っていたとの声もある。
いまの中国の寺院は、共産党の管理下で「信仰の場」よりも「利益や人間関係」が優先されると言われてきた。
こうした構造がすぐに変わる気配は、今のところ見えていない。


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