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米政府 ウェスチングハウス社に800億ドル 新型原発建設 日本・AI電力連携強化

2025/10/29
更新: 2025/10/29

アメリカ政府とウェスチングハウス社が新型原発建設で800億ドル協定。日本の資金とAI電力需要を背景に、日米連携が新局面へ。

アメリカ政府は10月28日、ウェスチングハウス・エレクトリック社(Westinghouse Electric)と、総額800億ドル(約12兆円)に達する新型原子力発電所建設に向けた協定を締結した。この協定は過去数十年で最も大規模かつ野心的な原発プロジェクトとされ、「エネルギー重視の政策」を掲げるトランプ大統領にとって新たな一歩となる。

米加連携 核エネルギー再興へ

協定は、ウェスチングハウス社のカナダ系株主であるウラン大手カメコ(Cameco)およびブルックフィールド・アセット・マネジメント(Brookfield Asset Management)を含めて締結された。米政府は資金調達や許認可の簡素化を支援し、ウェスチングハウス社は新型原発の建設に着手する見通しである。

アメリカ側は、ウェスチングハウス社の累計利益が175億ドル(約2兆6千億円)に達した段階で、最大20%の利益分配を受け、希望すれば株式取得の権利を得ることができる。また、2029年までにウェスチングハウス社の企業価値が300億ドル(約4兆5千億円)を超えた場合、アメリカ政府が株式公開を要請する権利を有する。発表後、カメコの株価は25%以上急騰した。

日米エネルギー提携とAI基盤強化

同日に来日中のトランプ大統領は東京で、日本政府および民間によるインフラ投資を通じ、アメリカに最大80兆円規模の資金を提供する方針を表明した。その中にはウェスチングハウス社の原発プロジェクトも含まれる。

両国が発表した共同投資リストによると、日本の三菱重工、東芝、IHIなどが総額1千億ドル(約15兆円)規模の原発関連案件に関与する見通しを示した。

さらに人工知能(AI)や電力インフラ分野での協力拡大も確認された。日立製作所、パナソニック、村田製作所、TDKなどの日本企業が、アメリカのAI向けデータセンターに対し、高圧直流送電設備、冷却装置、蓄電システム、電子部品の供給などを含む総額100億ドル(約1兆5千億円)超の投資を行う計画である。

AI時代の電力需要、原発再注目

AIやクラウド基盤の急拡大により、アメリカ国内の電力需要は20年ぶりに供給が逼迫する兆しを見せている。これを受け、原子力発電は安定的な電力源として再評価が進んでいる。

グーグル、マイクロソフト、アマゾンなどのIT大手は、最新世代の原子炉技術導入に向け、既に複数のエネルギー企業と契約を締結。小型モジュール炉(SMR)や核融合技術の調達が進展している。最近では、グーグル親会社アルファベットとNextEraエナジーが、アイオワ州の休止原発再稼働を発表。マイクロソフトもペンシルベニア州スリーマイル島原発の一部再開計画で、コンステレーション・エナジー社と提携した。

課題と見通し

今回の大規模協定の実現に対しては、計画の実行可能性を疑問視する声もある。ウェスチングハウス社は過去にジョージア州ヴォグトル原発の建設を7年遅延し、最終費用は350億ドル(約5兆2500億円)を超えて当初予算の倍以上に膨らみ、2017年には経営破綻を経験した。現在はブルックフィールド社が51%、カメコ社が49%を保有している。

また、放射性廃棄物の最終処分については依然として解決しておらず、各原発敷地内の冷却プールや乾式貯蔵施設による暫定的な貯蔵措置が続いている。

アメリカ原子力規制委員会(NRC)は今年5月、トランプ大統領の大統領令に基づき、許認可審査期間を従来の数年から18カ月へ短縮する改革を開始。2030年までに大型原子炉10基の着工を目指す方針を打ち出した。

アメリカエネルギー省のクリス・ライト長官は、「本協力はアメリカの技術革新を全面的に促進し、AI競争においても勝利するための原動力となる。原子力の復興というトランプ大統領の約束が、ついに現実となりつつある」とコメントした。

王君宜
王君宜